前週末16日の米国株式相場はまちまち。ダウ平均は112.11ドル高の28606.31ドル、ナスダックは42.31ポイント安の11671.56ポイントで取引を終了した。9月小売売上高や10月ミシガン大消費者信頼感指数速報値の予想以上の改善に加え、新型ウイルスワクチン開発の一段の前進を好感し上昇して寄り付いた。しかし、9月鉱工業生産が予想外のマイナスに落ち込んだほか高値からはハイテク株中心に利益確定売りも目立ち、引けにかけて上げ幅を縮小。
ダウ平均が4日ぶりに反発したことを受け、今日の東京株式市場は買いが先行した。
米国景気の先行き警戒感の後退に加え、国内の追加経済対策に対する期待感も株価支援要因となった。また、朝方の外為市場で1ドル=105円40銭台と先週末16日15時頃に比べ20銭ほど円安・ドル高に振れていることも安心感となった。
個別では、「鬼滅の刃」アイテムを手掛けるジンズメイト<7448>、SKジャパン<7608>がストップ高買い気配となり、売上回復や収益性改善などを見込み国内証券が評価を引き上げたSFP<3198>が10%を超す大幅高となったほか、同業のアクロHDを持分法適用会社化すると発表したSIG<4386>、21年3月期上半期(中間期)業績見込みを上方修正したラサ商事<3023>、KOA<6999>、21年3月期利益予想を上方修正したキムラユニティー<9368>、「鬼滅の刃」初日興行収入が10億円超などと伝わった東宝<9602>、量子暗号通信システム事業を開始すると発表した東芝<6502>が上げた。
一方、過熱警戒感からの利食い売りが優勢にになったサイバーリンクス<3683>、21年3月期上半期(中間期)業績見込みを下方修正した戸田建設<1860>が下げ、また、21年3月期業績予想を上方修正したが材料出尽くし感が台頭した富士通ゼネラル<6755>が軟調だった。
セクターでは、全業種が値上がり。海運業、ゴム製品、繊維製品、非鉄金属、金属製品などが値上がり率上位だった。東証1部の値上がり銘柄は全体の83%、対して値下がり銘柄は13%となっている。
先週、新型コロナウイルスのワクチンや治療薬に関するネガティブなニュースが相次いだ。少し拾ってみる。12日、米ジョンソン・エンド・ジョンソン(J&J)が新型コロナワクチンの最終段階の治験を停止すると発表した。13日には米イーライリリーが抗体治療薬臨床試験の被験者登録を停止したと報じられた。14日にはアンジェス<4563>が開発中のワクチンについて大量生産が可能になるのは2022年の後半になるとの報道があった。さらに15日には世界保健機関(WHO)が抗ウイルス薬「レムデシビル」についてコロナ患者の死亡率低下に効果がないとの調査結果を発表した。
こうしたニュースは関連銘柄の株価を大きく揺さぶるが、株式市場全体への影響はこれまでのところ限定的なようだ。なぜだろう。以前、当欄でしつこく書いた「株価=景気/金利」という式を思い返してみる。ワクチンや治療薬の開発、普及は新型コロナの収束をもたらし、これまで「期待」先行だった景気回復が「現実」のものとなり、分子の景気を押し上げる。これは株式市場にとって歓迎すべきことのようにも思われるが、本当にそうだろうか。
ワクチンや治療薬の開発、普及によるコロナ収束で景気回復が期待から現実のものとなった後は、「この景気拡大はいつまで続くのか」「金融引き締めはいつなのか」などが市場の関心事となり、株価の上値を抑える。言い方を変えれば、ワクチンや治療薬が開発され普及するまでは、景気回復は実現しないものの、景気回復への「期待」は継続し、株価上昇の原動力であり続ける。逆説的ではあるが、ワクチンや治療薬の開発、普及が遅れるほど、株価上昇が長く続くということになるのかもしれない。新型コロナワクチンや治療薬に関するネガティブなニュースは、株価上昇という一点に絞ってみれば、あながち逆風とばかりは言えないのかもしれない。この件に関しては、次の機会にもう少し考えてみる。
さて、後場の東京株式市場で日経平均はもみ合いとなりそうだ。先週末の日経平均が23400円どころに位置する25日移動平均線近辺で下げ止まったことで、相場の地合いは強いとの指摘があった。一方、欧米での新型コロナ感染拡大への懸念が継続していることに加え、22日に米大統領選候補者のテレビ討論会を控えていることから積極的な買いは手控えられ、やや様子見ムードが強まる可能性もある。
(小山 眞一)
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