―株価変動にはクセも存在、銘柄分析力を発揮して運用・売買収益の拡大を狙え―
世の中には、さまざまな投資アイデアが存在し、高配当利回り銘柄への投資もその一つといえる。高配当株をトレード対象とする場合であっても、株主還元方針や業績の進捗率などに配慮し、個別の事情を把握しながら売買のタイミングを計る必要がある。更に、権利付き最終売買日を挟んだ株価変動の傾向は銘柄によって異なる。業績や財務状況、株価チャートや株式需給に着目し、分析力を発揮すれば、インカムゲイン(運用益)だけでなくキャピタルゲイン(売買差益)の拡大を図ることが可能となる。
●基本的な投資スタンス
配当利回りとは、株価に対する配当の割合(=配当/株価)を指し、高配当利回り銘柄とは、現状の債券利回りよりも高い、もしくは市場平均の配当利回りよりも高い配当利回りの銘柄のことである。新NISAの開始を機に投資対象としての関心を一段と集める形となり、東証には高配当利回り銘柄への投資に関連する上場投資信託(ETF)や上場投資証券(ETN)が数多く上場する。
一般的に高配当利回り銘柄は、権利付き最終売買日に向かって物色人気化する傾向がある。配当を得るには権利付き最終売買日までに投資しておかねばならないためだ。そのため、株価は権利付き最終売買日の数週間前にピークを迎えることが多い。そして、権利付き最終売買日の翌日である権利落ち日には配当分だけ理論株価は下落する。ただし権利落ち日が株価のボトムになることは少なく、権利落ち日の数日後にボトムを打つケースが目立つ。そうであれば高配当利回り銘柄への投資スタンスは「権利落ち日の数日後に買い、権利付き最終売買日の数週間前に売る」のが基本となるといえるだろう。
もちろん、「権利付き最終売買日の前に売り、権利落ち日の数日後に買い戻す」という方法も考えられる。そこで注意しておきたいのは品貸料率(いわゆる逆日歩)だ。売りから入る場合、信用取引を利用することになるが、貸株による売り株数が融資による買い株数を上回った場合、貸株の調達に伴う手数料が発生する。同じ投資スタンスの投資家が多ければ多いほど、逆日歩は高くなる。
●商船三井とメイテックGの「クセ」
前述の高配当利回り銘柄の売買タイミングは、あくまでも「基本スタンス」であって、それぞれの銘柄の特性や個別の事情によって大きく変わってくる。そもそも、配当利回りが高水準にある銘柄のなかには、一時的な利益の還元に迫られた企業もある。期間限定の還元策が終了した際には、株価への下押し圧力が高まることとなるだろう。
まず注視すべきは、銘柄ごとの株価変動の「クセ」である。一例を挙げると、海運大手の商船三井 <9104> [東証P]の株価は権利付き最終売買日の1カ月前あたりでピークアウトし、権利落ち後は数日でボトムアウトする傾向がある。配当利回りは足もとで5.8%台。経常利益は23年3月期の過去最高益をピークに24年3月期は減益を余儀なくされたが、トップラインの伸びは継続し、25年3月期の経常利益は4割増を見込む。26年3月期までの連結配当性向は30%とする方針。中間期時点の経常利益の通期計画に対する進捗率は68%とあって、業績の上振れに伴う配当予想の引き上げも期待できそうだ。
メイテックグループホールディングス <9744> [東証P]は機械設計・ソフト開発などの技術者派遣事業を展開する。株価の動きとしては典型的なものではあるが、権利付き最終売買日の直前で株価はピークアウトし、権利落ち日の数週間後にボトムアウトするという傾向がある。配当利回りは6.3%。25年3月期の営業・経常利益は過去最高益の更新を計画する。同社は、資金残高が一定の水準(連結売上高の月商3カ月分)を上回る場合に総還元性向を「100%以内」とし、還元方法については配当を基本としつつ、PBR(株価純資産倍率)が3倍を下回るときに自己株式の取得を検討する、という方針を掲げている。24年11月下旬以降の株価は回復基調を示している。
●テーマや自社株取得枠、チャート形状も注目
テーマ性も目を離せない要素となる。道路舗装大手の世紀東急工業 <1898> [東証P]は配当利回りが5.8%台。23年5月に公表した株主還元方針において、配当性向100%、DOE(株主資本配当率)8%を目標に掲げた。しかし24年5月に公表した27年3月期までの中期経営計画では、指標をDOEに一本化し、25年3月期については暫定措置としてDOE8%の目標を維持しつつも、来期以降は目標水準を6%に見直すことを明らかにしている。変化の背景として、アクティビストのストラテジックキャピタル(東京都渋谷区)による保有株の売却が関与しているとの見方がある。DOE目標は切り下がることとなるが、いずれにせよ高水準であることには変わりがない。国土強靱化や防災対策強化による地方創生というテーマ性を持つ同社は公共建設投資が業績を下支えする要因となると期待されており、株価調整時に押し目買いを集めるシナリオも想定できそうだ。
ホンダ <7267> [東証P]を主要取引先として自動車用クラッチを供給するエフ・シー・シー <7296> [東証P]は22年3月期以降、増配を続けており、配当利回りは6.5%台。26年3月期までの中期経営計画で総還元性向40%以上とする方針を掲げている。なお、25年3月期の年間配当予想は202円で、このうち上場20周年記念配当が126円を占めており、今期の総還元性向は100%の水準となるようだ。それでもPBRは足もとで0.8倍台と1倍を下回っている。来期に記念配当をそのまま落とした際、PBRが水準を一段と切り下げる公算が大きい。権利付き最終売買日を前にして、株安を見込んだ投資家の空売りの対象となる可能性があるものの、品貸料率が高水準となったなかで低PBRの状況に着目した資金が流入すれば、ショートカバーを巻き込んで株価が反騰に向かうこととなるだろう。ホンダと日産自動車 <7201> [東証P]の経営統合に向けた検討が進むなか、自動車部品業界においても再編の機運が高まっており、この点でも注目を一段と集める余地がある。
自社株買いに絡むところでは、高吸水性樹脂で世界トップの日本触媒 <4114> [東証P]の配当利回りが5.7%台。9月中間期決算発表時に今期の業績予想を見直し、最終利益の見通しを150億円から165億円(前期比49.9%増)に引き上げた。あわせて年間配当予想を70円から108円(前期は1対4の株式分割考慮後ベースで45円)に増額修正した。同社は28年3月期までの間、株主資本比率を60%近辺まで引き下げることを目的に、配当性向100%またはDOE2.0%のいずれか大きい金額を還元する方針。更に、政策保有株式の縮減で得た余剰資金を活用し、28年3月期までに約200億円の自己株式取得を実施する計画を示している。昨年5月からの自社株取得額は約50億円。すなわち約150億円の買い需要が存在する状況だ。
チャートの観点では合同製鐵 <5410> [東証P]をマークしたい。日本製鉄 <5401> [東証P]系の電炉会社で、需要環境の低迷に伴い25年3月期第2四半期累計(4~9月)の最終利益は前年同期比38%減となったが、通期の見通しは据え置いている。同社は業績連動利益配分の指標として、連結配当性向の目安を30%程度としている。株価は13週移動平均線を上回ってきており、業績回復の期待が出始めているもよう。配当利回りは6.0%近辺だ。
株探ニュース
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