1. 2019年3月期の業績概要
当会計年度(2018年4月1日−2019年3月31日)における金融市場は、緩やかな景気拡大と低金利環境下で株高が進む「適温相場」が転換点を迎え、リスク資産は下半期に乱高下する展開となった。
株式市場は、米国株に主導された形で、上半期は堅調に推移したが、米中貿易戦争の激化や米欧の金融政策正常化と長期金利の上昇等が嫌気され、10月−12月には世界的に下落した。年明け以降、米欧中央銀行の金融政策スタンスがハト派色を強め、主要国の長期金利が低下に向かったことから投資家のリスク選好が回復し、年度末にかけて世界的に急反発した。
債券市場は堅調に推移した。世界経済が拡大基調をたどり、米欧の金融政策正常化が進んだことから、上半期は世界的に債券利回りが上昇した(債券価格は低下)。11月以降は、世界同時株安を受けた「質への逃避」や、世界的な景況感の悪化から債券利回りは低下基調をたどった。年明け以降は、米欧中央銀行の金融政策スタンスの緩和への転換を受けて、債券利回りは一段と低下した。
商品市場は総じて軟調な動きとなった。原油価格は期首より堅調に推移したが、供給過剰懸念や世界的な株安から年末にかけて大幅に下落した。しかし、年明け以降はOPEC等による協調減産効果等から反騰した。金価格は、米ドル高が進行した上半期は軟調に推移したが、年末にかけての世界的な株安局面で反発、年明け以降も米国の利上げ打ち止め観測等から続伸した。大豆価格は、豊作見通しと中国の対米報復関税を受けて下落したが、9月以降は底堅く推移した。銅、ニッケル等の非鉄金属価格は、米中貿易摩擦の激化や中国景気減速懸念から6月以降軟調に推移し、その後も上値の重い展開が続いた。
再生可能エネルギーを取り巻く環境については、2018年度の太陽光発電のFIT(固定価格買取制度)価格が18円(税抜)、2019年度については14円(税抜)となり、500kw以上は入札により調達価格を決定するものとなった。また、国民負担の抑制に向けた対応の一環として、2012年度から2014年度にIDを取得した事業用太陽光発電案件のうち、運転開始期限が設定されていない未稼働案件に対する運転開始期限設定を義務化する新たな仕組みも定められた。
わが国の電力市場においては、2016年4月の電力小売全面自由化以降、小売電力事業者の事業者数及び切替件数ともに、右肩上がりの順調な増加が継続している。一方、電力価格については、日本卸電力取引所(JEPX)で取引されるスポット市場価格で、2018年夏及び冬に発電状況や天候によって一時的に通常の数倍の価格が出現する等、小売電力事業者の経営においても電力市場価格の「リスク管理」の重要性が認識されており、電力取引のヘッジニーズが高まってきている。
このような市場環境等のもと、同社グループの当年度の営業収益は11,120百万円(前期比79.8%増)、営業利益は160百万円(同3.5%減)、経常利益は130百万円(前期は1百万円の経常損失)、親会社株主に帰属する当期純利益は168百万円(同3.5%増)となった。
主として電力取引関連事業において、電力の販売と仕入れが増加したことにより営業収益と営業費用が大幅に増加した。また、再生可能エネルギー関連事業において前期末に行った融資の借換により支払利息等が減少したこと等により、経常利益は大幅に改善した。また、同事業において、2018年12月に大分県中津市の太陽光発電所を譲渡したことによる譲渡益132百万円は特別利益に計上されている。一方、複数の農業関連企業への出資の評価損等により68百万円の特別損失(前期比28百万円増)が発生したが、繰延税金資産が積み増されたことにより法人税等調整額が大幅に減少し、親会社株主に帰属する当期純利益はおおむね前期並みとなった。
高水準の自己資本比率を維持
2. 財務状況と経営指標
当年度における総資産は、製品(売却目的で取得した太陽光発電設備)の増加(1,415百万円)及び太陽光発電事業と地熱発電事業の推進に伴う建設仮勘定の増加(228百万円)等により、13,167百万円(前期比1,089百万円増)となった。負債は、太陽光発電事業の推進に伴う短期借入金の増加(662百万円)及び電力取引関連事業における営業未払金の増加(590百万円)等により、7,173百万円(同1,039百万円増)となった。純資産は、非支配株主持分の増加(26百万円)及び利益剰余金の増加(23百万円)等により、5,993百万円(同50百万円増)となった。
以上から、自己資本比率は41.3%と高水準を維持し、高い安全性を確保している。一方、ROE(自己資本当期純利益率)は3.1%、ROA(総資産経常利益率)も1.0%にとどまっている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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