さくらさくプラス、保育サービスの質向上に向けた施策をグループで展開 利用者や行政のニーズに幅広く対応
会社概要
西尾義隆氏(以下、西尾):みなさま、こんにちは。株式会社さくらさくプラス代表の西尾と申します。本日はさくらさくプラスのご紹介と、当社グループの現状と今後についてお話ししたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
まずは会社概要についてご案内します。当社グループは2020年に東京証券取引所グロース市場へ上場しています。2009年に前身の会社を設立して、事業を展開してきました。
スライド右側の写真にもあるように、「よろこびやうれしさをともに」を掲げて、保育所を運営してきた会社です。特に東京都を中心として事業を行っており、今は子ども・子育て支援事業のマーケットをターゲットに、事業の展開を図っているところです。
スライド下部には関連子会社を記載していますが、これらの状況については、次のページ以降でご説明します。
グループ概要
西尾:「さくらさくみらい」は保育所名でもありますが、現在88ヶ所の認可保育所を運営している会社です。ご利用者数は2023年4月末時点で4,623名です。
当社は今まで保育事業をドライブに成長を続けてきた会社です。待機児童の話題も出てきていますが、それが一服する状況も前提として、ノウハウに基づいたさまざまな事業の展開に並行して取り組んでいる会社です。基本的には子ども・子育て支援ということで、子どもたちを産みやすく育てやすい社会環境を作っていくことを大きなテーマとして、事業を組み立てています。
現在は証券や株式のマーケットでも、子育て分野について、政府の発表とともに上下している部分がたくさんあります。当社は子どもの支援、子育ての支援について、今後も徹底的に続けていく会社でありたいと考えています。
いくつか関連会社があります。例えば、みんなのみらいという会社では食育サービスとして食べることについての事業や、みらいパレットでは当社も長らく注力しているDXの分野について展開しています。
先日、M&Aで新たにグループ会社となった保育のデザイン研究所は、保育の研修企画・実施やコンサルティングをしている会社です。当社ではリスキリングと位置付けていますが、保育所の中でもスキルアップの必要性が生じています。
また、昨今報道されている虐待をはじめ、子育てに関する問題がたくさん出ている状況です。当社としても非常に力を入れているところであり、これまでも取り組んできましたが、保育の現場では学びの機会が非常に少ないため、そのようなところに注力した会社を子会社化したという流れになります。
自己紹介で少しお伝えしそびれましたが、私は創業するまでの間は不動産会社に勤めていました。2008年のリーマンショックが起こった際に、勤めていた不動産の会社が急降下して非常に大変な思いをしたことがあります。
もともとは不動産会社の出身ですので、保育事業者としてはまったくのゼロからスタートしましたが、当時から保育所は絶対に必要になってくるだろうと考えていました。当社では不動産開発のノウハウを有して事業を展開してきましたので、さくらさくパワーズという不動産関連の会社も作り、今後の展開を図っていきたいと思っています。
保育所を作るにあたっても、さまざまな不動産のノウハウを最大限活用して展開を図ってきました。それについても後ほど少しお話ししたいと思います。
加えて、進学塾の運営を行うVAMOSを2年ほど前に子会社化しています。今は中学受験のマーケットが非常に活況になっています。私たちは乳幼児の保育に取り組みながら、利用者のその後の新しい未来を作っていくということで、進学塾の展開も図っていきます。
当社としては、さくらさくみらいという会社を中核に、ノウハウを最大限に活用しながら、子ども・子育て支援事業の展開を図っていきたいと考えています。
不動産の「情報力」「企画力」「開発力」 を活かす
西尾:今まで、当社は保育所開発を進めることで展開を図ってきました。先ほどもお話ししたとおり、不動産の「開発力」を最大限に活用してきたことが当社の特徴です。単に保育所を作っただけではなく、スライド右側の円グラフに示したとおり、特に場所・立地の選定に注意して施設の開発を進めてきました。
保育所を利用いただく方は男女ともに会社にお勤めの方が大半ですので、生活の利便性において、保育所をどのように活かしていくかがポイントとなります。当社は駅からの距離が非常に重要な要素だと考えており、このような展開を行ってきました。
特に、全88施設のうち、81施設が東京都の23区内にあります。全国でも非常にニーズが高い施設を作ってきたことが当社グループの特徴となっています。不動産の「企画力」と自社のオペレーションをうまく活用することで、行政から認可を受けて拡大し続けてきました。
坂本慎太郎氏(以下、坂本):東京の月島など、私が住む近くにも御社の保育所があるのですが、都心に保育所をたくさん開発されている理由についてもう少し教えてください。
西尾:月島などは本当に良い例です。非常に狭い範囲の土地に大型マンションがたくさん作られているため、人口密度が高いのです。その中でどのように保育所を作っていくかが非常に難しい課題ですが、当社は今まで培ってきたノウハウを最大限に活用して、そのようなエリアに保育所を作ってきました。ニーズは多いですが、需要に対応しにくいエリアではないかと感じています。
不動産開発力事例
坂本:御社の開発力の中には、やはり情報収集力があると思いますが、提案力といったものもあるのでしょうか? そちらについても教えてください。
西尾:スライド7ページをご覧ください。不動産開発力事例をいくつかお示ししています。例えば、左上に記載しているビルは豊洲駅前から1分のところにあります。
豊洲は月島と同じように人口密度が高いエリアとなっています。単純に土地から不動産を見つけようと思うと非常に難しく、賃料が合わなかったり、運営できる数字に乗らなかったりすることが多いです。しかし、こちらのケースでは1階から3階までが保育所で、さらにその上階がサービスオフィスとなっています。
企画の段階からその土地を最大限に活用できるかたちになるように取り組み、実現できた施設です。保育所だけではなかなか開発が難しかったところを、当社グループの関連会社によって進めてきたところです。
東京都の場合は賃料が高いため、その賃料をどうするのかについて知恵を絞りながら取り組んでおり、その事例についてスライド7ページに記載しています。スペースを有効活用したり、倉庫を保育所に転用したりするなど、さまざまなかたちで工夫しながら事業を拡張してきました。
坂本:自治体によって異なると思いますが、保育所の開所は、「土地があります、ここに作りましょう」といきなり進めることは難しいと思います。ある程度のニーズが行政にあり、御社が開拓して「保育所に使えますよ」と提案するパターンが多いですか?
西尾:そうですね。例えば、先ほどの月島エリアだと「月島1丁目から4丁目までの間に施設がほしい」ということでした。当社はそのエリアで施設を探してきて、提案まで持っていくかたちになります。
坂本:それが開発力であり、強みということですね。
運営施設数及び職員数・園児数の推移
西尾:スライド8ページは、運営施設数及び職員数・園児数の推移を示しています。運営施設数のグラフは9施設からスタートして、2023年7月期で88施設となっています。
特に、2020年前後は施設の開所を推し進めており、過去3年間で60施設から74施設、そして85施設と、多くの開所へ向けて注力してきた状況です。それに伴い、園児数と職員数も増えてきています。当社は7月期が決算期ですが、本進行年度中に3案件が開所して、88施設となりました。
売上・売上原価の構成と開所から収益最大化までのイメージ
我々の保育所はストック型のビジネスで、施設を作っていくごとに収益が上がっていくイメージです。スライド右側のグラフをご覧いただければわかるのですが、1年目から5年目まで、5年間かけて満員になっていく流れです。0歳、1歳、2歳が比較的埋まりやすく、そこから子どもたちが持ち上がっていくことで、5年かけて増えていきます。
当社の立ち位置としては、先ほど少しお伝えしたとおり、この数年で作った施設が非常に多いため、まだ100パーセント稼働していないというのが当社の立ち位置です。今後、88施設の稼働率が全体でどんどん上がっていくものとご認識ください。
坂本:0歳、1歳、2歳のほうが補助金が多く、利益が出るのでしょうか?
西尾:おっしゃるとおりです。補助金が多く、また人の配置も多いということもあります。
少し報道されていますが、例えば「4歳児30人ごとに保育士1人を充てなさい」という基準から、4歳児25人ごと保育士1人に変更されるといった話題が出ています。そのような部分で、1歳児であれば6人に対して保育士1人から5人に対して保育士1人になっていくと、事業家サイドから見ればコストがかかりやすくなり、その分売上も増えていくということになります。
坂本:なるほど。
西尾:現状は3歳、4歳、5歳児の職員を0歳、1歳、2歳児へ配置しているため、今後はコストの伸び率よりも収益増が見込まれるのではないかと考えています。
坂本:3歳、4歳、5歳児の充足については意外と問題になっていると言いますか、保育所がかなり増えていますが、埋まるものでしょうか?
西尾:そうですね。今の0歳、1歳、2歳が持ち上がっていくことになると思います。
一時期、待機児童が多い時に2歳までの小規模保育の施設をたくさん作りました。目先の受け皿はクリアしたのですが、そこから子どもたちが成長して2歳で保育が終わってしまいますので、その後はどこへ預けるかといったところも含めて、需要が高まっていくと考えています。
2023年7月期のトピックス
西尾:先日、第3四半期の締めを行ったところですので、ここでは本年度の進行期についてご説明します。
先ほども少しお話ししましたが、4月に保育の研修を行う会社を完全子会社化しました。こちらに関しては、保育士の技術を向上させることが必要となっており、ニュースでもよく出てきています。保育の現場はとても忙しいため、学びの機会が非常に少ない状況です。
そこで、振り返りができる機会を作っていく会社として、オンラインで研修を行ったり、コンサルティングを行ったりする会社となっています。保育の質を全体的に上げていきたい、また教育業界を良くしていきたいというところで、収益化を図っていこうと取り組んでいる企業を子会社化しました。
また、先ほどもお伝えしましたが、当社は不動産を得意とする保育事業者です。一方で、今後は保育所を多く作っていくステージではないため、保育所だけではなく子育て支援住宅の事業にも着手しました。保育所で培ったノウハウを住宅に反映したいということです。
4月から「東京こどもすくすく住宅認定制度」というものがスタートしており、こちらを取得できるような住宅の供給をしていこうと考えています。共働きの方が子育てしやすい1棟住宅ということで、その認定を受けたプロジェクトをスタートしています。
加えて、保育所を中央区勝どき、新富町、それから品川シーサイドへ開所しました。先ほど月島エリアのお話が出ましたが、晴海フラッグへの入居が始まったり、勝どきの大きな開発があったりしたため、品川を含めてニーズが強いエリアでの開所を進めてきているところです。
また、株主還元については増配となっています。数字はまだまだというところと思いますが、子育ての分野において、子どもや保護者のために我々が努力して、みなさまからのご支援はリターンとしてしっかりとお返ししていきたいという意気込みで取り組んでいます。
さらに、子育て支援カフェ「みらいのテーブル 門前仲町」を新しく開設しました。事業の大きな収益の柱になるものではありませんが、子どもを育てやすい社会環境を実現したいという思いで、お茶を飲みながら子どもたちが安全に楽しく過ごせる環境を保護者へ提供していくことを考え作りました。こちらはメディアの報道でも取り上げていただいていますので、ぜひご覧いただければと思います。
2023年7月期第3四半期決算概要
西尾:直近の2023年7月期第3四半期の状況としては、売上高102.5億円、営業利益1.6億円、経常利益4.1億円となっています。
2023年7月期第3四半期貸借対照表
西尾:2023年7月期第3四半期の詳細については、こちらのBSをご確認いただければと思います。
業績の推移と計画
西尾:スライドの棒グラフは、当期の目標売上高136億8,900万円を薄いピンク色で示しており、また目標に対する進捗について記載しています。第3四半期が終わった時点での売上高は、ご覧のとおりの状況となっています。保育所の施設数が増えたことに加え、年次の持ち上がりが増えてきている状況のため、売上高は今後も増加していくだろうと考えています。
当社の今のステージとしては、保育サービスにおいて、新規開設の拡大フェーズから質の向上という異なるかたちで収益を上げていくところとなっています。こちらは新規開設の施設がどんどん埋まり収益が向上していくことで、利益率も向上していく流れになっています。
営業利益についても同様です。昨年は会計において不動産を売却したものがあったのですが、営業利益ベースではなく営業外収益に入ったことや、コロナ禍による固定費の増加などもあり、営業利益が落ち込んだかたちとなりました。ただし、現段階では回復してきているため、当社としては、売上高とともに営業利益も今後上がっていくだろうと考えています。
坂本:2025年7月にかけて、利益の伸びがかなり大きい予想になっていますが、こちらはほとんど本業の保育サービスから出てくるものなのか、または、付随業務によるものなのか、ざっくりとでも利益の割合のようなものがあるとわかりやすいと思います。イメージで問題ありませんので教えてください。
西尾:どちらの要素も含まれています。現在、我々は子ども・子育て支援事業として一括りにしているため、詳細については分けていませんが、バランスよく伸びていくと捉えていただければと思っています。
業績の推移と計画
西尾:経常利益についてです。昨年度までは開所数が多く、営業外費用の売上と経費において経常利益が膨らんでいく状況でしたが、開所数が減少してきていることもあり、今回の着地としてはいったん落ちてきている状況です。
ただし、第3四半期の目標に対しては概ね進捗できていることと、今後は利益の構造が変わってくると捉えており、営業利益率、当期純利益率を含めて、本業でしっかりと利益を出していけるような体制を整えていきたいと考えています。そのため、今までとはスタイルがやや異なる収益構造になってくると思っています。
配当について
西尾:配当についてです。昨年度より配当をお出ししています。会計の数字は先ほどご覧いただいたとおりになりますが、償却費なども含めたキャッシュフローについては計画どおりと考えています。配当推移に関しては棒グラフの数字のとおりになりますが、今後さらに上げていきたいと考えています。
坂本:仮に配当性向で配当を出すとなると、御社は補助金が経常利益や最終利益などに乗っかるパターンになるのでしょうか?
西尾:おっしゃるとおりです。
坂本:その場合、開設数がたくさんあり、仮に配当性向が一定であるとすると、けっこうな配当額になる可能性もあると思います。こちらは配当性向というよりは、どちらかと言いますと何円の単位で見ていくような認識になるでしょうか?
西尾:円の単位で考えていくだろうと思っています。今のお話でいきますと、パーセンテージをさらに上げていきたいと考えているところではあります。
坂本:ありがとうございます。イメージが非常に湧きました。
子育て支援政策
西尾:我々の事業としては、ご紹介したようなことに取り組んでいる状況ですが、今報道で話題になっているところは、やはり子育て支援政策になります。こちらは財源の問題へ話が進んでいくところになるかもしれませんが、取り組まなければならない問題の本質は変わりません。この問題に取り組むためには国策が必要とされ、なによりも対応していかないといけないところではと思っています。
社会保険料において、パートの方の収入で「106万円の壁」「130万円の壁」といった話題が出てきていますが、このようなことも含めて労働力を増やし、女性の活躍をより促進していくためには、どうしても子育ての施策が必要不可欠になってきます。その中核となる保育所、また、付随するさまざまな子育て支援が今話題に出てきている状況です。
「それでは財源はどうするのか」という話にどうしてもなるのですが、こちらについては今後必ず対応していくだろうと我々は考えており、事業全体として追い風になっていくのではと考えています。
坂本:今の枠組みから今後少しずつ変わっていく部分があると思いますが、どの部分が変わると御社の収益に一番大きな貢献をもたらすのかについて教えていただければと思います。
西尾:まずは、やはり保育所を利用される方々のご支援というところになります。
坂本:無償化から始まって、あらゆる支援ということですね。
西尾:特に話題に挙がっていることとしては「こども誰でも通園制度(仮称)」です。こちらは誰でも保育所へ登園できるというものになります。
今は、お仕事をしていることが通園の大原則になっているのですが、子育てのリフレッシュといったところも視野に入れていくことで、保育所のニーズが高まってくると思っています。全体的に少子化の状況ではありますが、保育所の利用率はさらに上がっていき、稼働率が高い状況が維持されるのではないかと思っています。
また、働いている方々の処遇の改善についても話が出てきているため、そのようなところに対する補助やサポートがより良くなり、我々も子育てを支援するという立場で、保育所をハブとして使いながら事業を新しく構築していくことで収益が増えてくるのではないかと考えています。
坂本:非常によくわかりました。
⻑期ビジョンイメージ
西尾:こちらは長期ビジョンイメージです。今までは創業期として施設をたくさん作ってきましたが、今後は転換期として、保育所という事業を中心に不動産の企画・開発に取り組むなど、保育所のノウハウを梃子にしながら新しい事業の発展を進めているところです。
経営の多角化を進めながらも、やはり子ども・子育て支援が当社の軸であり強みになっていくのではないかと思っています。他社との差別化においても、このような強みが挙げられると思います。
子育て支援サービスの取り組み
西尾:ただ保育所を運営すれば良いということではなく、やはり保育の質が非常に求められています。今回の国からの指針においても、このようなところがまた新しく出てきている状況です。
我々は従前より保育の質の向上に取り組んできています。乳幼児教育プログラム「CLiP」という独自のプログラムにおいて、各大学とアカデミックな研究をしながら、スライドのように取り組み実績を作っています。
脳科学の先生ともタッグを組むなど、各大学の先生と保育所の中で「このようなプログラムが必要ではないか」という視点で試していきながらプログラム化を行っている状況です。
スライド右側には、東京大学大学院のCedepという研究機関との取り組みを示しています。我々は指導者や保育者の質の向上をどのようにサポートしていくかというところで取り組みを行っていますが、やはり保育の質を徹底的に追求していることが、結果として利用者の方へ満足感をご提供できているのではないかと思っています。
子育て支援サービスの取り組み
西尾:質の高い研修を提供し、日本全国の保育施設をより安心できる場所にするため、保育のデザイン研究所の完全子会社化を実施しています。
300を超えるさまざまなオンライン研修もチャンネルとして持っており、リモート研修などを通じて、全国の幼児教育に携わる方々へのサポートを行っていきたいと思っています。こちらは今後強化していきたいプログラムの1つになります。
スライド右側には日比谷研修センター開設について記載しています。オンラインやテレワークが増えることで事務所に空きが出てきている一方で、良いところは埋まってきているという話も出ています。特に日比谷研修センターは人が集まる場所になっています。
保育は、人が集まらないとできない仕事ですので、人が集まるという取り組みによって学びの場を増やしていきたいと考えています。そこで、今は保育士に対して研修を行う研修講師を養成する取り組みなども行っている状況です。
坂本:保育士の方がセカンドキャリアとして研修講師を目指すということもあると思います。
西尾:保育士の資格には等級がなく、学校を卒業すれば取得できます。ただ、時代の流れとともに必要なものや、行わなければならないことが変わっていきますので、そのような学びの場を全国へ発信していきたいと考えています。こちらはオンラインとリアルの両面を通じて対応していければと考えているところです。
子育て支援サービスの取り組み
西尾:住宅、不動産においては、さまざまなかたちで取り組みを行っています。子育て支援住宅制度の認定を受けることによって、子育てがしやすい環境の子育て支援住宅を開発し、建物の住みやすさの他にも、例えば園長先生の無料相談会や「保育士と一緒に遊ぼう」といった会を入れるなどして、このような住宅の開発を並行して行っているというところが、当社の大きな特徴ではないかと考えています。
スライド右下に、直近で開設した保育所の写真を掲載しています。事業として不動産を最大限活用しながら、さまざまなかたちで取り組みを行っています。
子育て支援サービスの取り組み
西尾:先ほども少しお話ししましたが、目指すところは「乳幼児の栄養と満足を叶える安心安全なパンの開発」です。今はアレルギー児が非常に多く、中でも小麦アレルギーの子が多くいます。そのため、グルテンフリーのパンも今後開発予定になっています。
子育て生活の中で、子どもたちと保護者が安心して過ごせるカフェの提供など、食を通じや子育ての支援にチャレンジしていきたいという思いで、このような取り組みを行っています。
子育て支援サービスの取り組み
西尾:DXに関する取り組みです。さまざまなかたちで保育所から得られるノウハウはたくさんあります。そこで、子育ての成長をいろいろなかたちでデータ化していくという取り組みをスタートさせています。目先として、写真販売を開始していますが、こちらも保育所の事業だからこそできる1つの内容になっています。今までは他社のサービスが対応していました。
坂本:カメラマンが来て撮影し、その写真が貼ってあるアナログなものもけっこうあると思います。
西尾:そうですね。昔は壁に番号を打って、というようなお話だと思います。
坂本:いまだにそのような状況なのですか?
西尾:おっしゃるとおりです。今までは他社のサプライヤーが対応していたところを自社のサービスとして、自社で開発したものを使い、保育収入以外の収入源として取り組みを始めているところです。
写真販売のみならず、さまざまな成長のデータなどにより、こちらから保護者に向けて「このようなかたちで行うとより子育てがしやすいですよ」というプッシュ型の提案も行っていきながら、事業を拡張していきたいと思います。
今はまだ開発途中ではありますが、大きなサービスになっていくのではと考えています。
増井麻里子氏(以下、増井):写真は紙など、なにかフォトブックのように仕上げるのでしょうか?
西尾:おっしゃるとおり、そのようなかたちでできるよう提案などを行っています。
坂本:動画なども同様でしょうか?
西尾:許諾の問題などもあるため、動画は少し課題にはなると思います。
増井:そうですね。映りたくないという子どももいると思います。
西尾:そのような子どももいると思います。他の方に、というところもクリアしていきながらの対応にはなっていますが、サービスの展開においてはいろいろと考えていけるのではと思います。
保育収入以外の収入源として、このような取り組みも積極的に行っていこうと考えています。
子育て支援サービスの取り組み
西尾:2021年6月にVAMOSという中学受験を中心とした進学塾を子会社化し、運営しています。こちらのマーケットは、東京で大変大きくなっており、2022年ですと推定約5万人規模になっているのではないかと言われています。
我々は、乳幼児期において子どもに対する教育的なアプローチを行っているため、こちらが今後につながっていくような取り組みを、推進していきたいと考えています。保育所を卒園された方々にとって、このように一貫性のある教育の中で学びの機会が増えるのは良いことではないかと思っています。
代表取締役社長の富永は書籍の発刊などもしており、非常に人気があります。今後も、そのような仲間を増やしていきたいと考えています。
保護者が仕事を持ち社会で活躍されていく中で、我々は子どもたちの成長をサポートし続けていきたいと思っています。そのため、今は子ども・子育て支援を中心に、事業を発展させていくことを考えています。
少子化社会の時代ですが、決して子どもがいなくなるわけではありません。子育て世帯がどのエリアに集まって、親御さんたちが何を求めているかにフォーカスし、事業を展開していくことが我々にとっては大事なことですし、社会にとっても必要なことだと思っています。
簡単ではありましたが、以上でご説明を終わります。
増井:ありがとうございました。それではここで、さくらさくプラスのCMをご覧ください。
西尾:会社のイメージや雰囲気を知っていただきたいと思い、このようなCMを作っています。親御さんが安心して預けられるように、子どもたちが楽しく、安全に生活できる環境を作ることが我々の大きな使命だと思っています。その揺るぎない信念のもと、事業を発展させていくことが我々の望みです。
質疑応答:中学受験準備について
坂本:先ほどご説明いただいた進学塾について、「中学受験だけではなく、小学校受験にも対応していますか?」というご質問です。
西尾:今は中学受験を中心にしています。塾の年齢は早ければ良いという訳ではなく、今ニーズが非常に高まっている中学受験を中心にしていきたいと思っています。
ただし、学びの開始時期についてのニーズは、より低年齢化してきています。我々の時は小学5年生くらいから塾に通い始めて受験の準備をしていましたが、今は3年生くらいに早まっており、1年生や2年生からというニーズも高まってきている状況です。
そのようなニーズに応えていくため、我々としては保育所との連携を図っていく流れを、現在考えているところです。
質疑応答:保育事業のビジネスチャンスについて
増井:「少子化と託児施設不足は相反するように思えますが、保育所事業のビジネス余地は大きいのでしょうか?」というご質問です。
西尾:少子化になると施設がいらなくなるのではないかという懸念もありますが、先ほどもお話ししたとおり、今は利用者の割合自体が大幅に上がってきています。
10年ほど前は、0歳から5歳までの子どものいる世帯のうち、3分の1くらいが保育所を利用しているという数字でしたが、現時点では50パーセントを超えている状況になっています。都市部では3分の2くらいになっていくだろうという話も出ています。加えて、「こども誰でも通園制度(仮称)」ができると、保育所を利用する割合がより高まってくるのではないかと思っています。
我々は認可保育所を中心に展開していますが、認可を取るにはそれなりの基準が求められます。人員や建物、事業者に関する基準などがあり、それらすべてを満たす必要がありますので、そのような安心してご利用いただける施設の需要が高まると思っています。
特に都市部では、子どもの数が減るのではないかと思われがちですが、実際には、東京都の子どもの数は減っていません。そのような状況の中で保育所利用者の割合が上がっており、ニーズは高まっています。今後も、付随する事業の展開などのチャンスが必ずあると思っています。
飲食店でも、どんなところでも同様ですが、仮に子どもが1割減ったとしても、すべての保育所で子どもが1割減るわけではなく、全く減らない保育所もあります。一方で、今後の可能性として利用率が1割から2割になり、閉めざるを得ない保育所が出てくることも十分にあり得ると思っています。我々は、前者のような残る保育所の作り方をしているところも強みだと思っています。
坂本:閉めざるを得ない保育所が出てくると、行政に補助金を求めることになると思うのですが、おそらく厳しいですよね。そうすると、選ばれる保育所を作っていかなくてはいけないと思います。
今後、選択の自由度が広がることはありますか? 実際に経営環境は厳しいと思いますが、政府が「これだけ作りましょう」と言ったため作ったのに、3歳児以上の充足が厳しい保育所もいまだにあると思います。そこで、今後のビジネスチャンスとしては、どのようなものがありますか?
同業他社を見ると習い事などのオプションをいくつか設定して選べるというような話も耳にします。国としては問題ないので、自治体が許可するのであればそのあたりもチャンスになってきますね。
西尾:おっしゃる通り、その点も大変注目しています。しかし保育所の組成上、いろいろなご家庭の方がいらっしゃるのも事実ですので、そのようなところで自治体が二の足を踏んでいるところがあるのではないかと思っています。
今後はさらに各保育所の特色を出していく必要がありますので、習い事などの教育的オプションのようなニーズが高まっていく可能性はあると考えています。今展開している写真販売などはまったく異なる角度で行っていますが、1つの戦略として、そのようなところをうまく活用していきたいと思います。
質疑応答:人材の確保について
坂本:御社は急激に成長を遂げた企業のため、人材の確保については非常に大変だったのではないかと思います。そのあたりの工夫や今までしてきたことで、王道のようなものがあれば教えてください。
西尾:おっしゃるとおり、保育士の確保は非常に大きな課題です。私などはまったく違う世界から入ってきたため違和感も大きかったのですが、「子どものため」といって、さまざまなものがブラック化しているように感じます。
我々は企業ですので、「本当に必要なものは何か? 不要なものは何か?」を見極めながら、保育のホワイト企業化の推進することをテーマとしています。
福利厚生を含めて、働き方改革をどのようなかたちで進めていくか検討を重ね、企業の在り方を作ってきました。保育の働き方改革として、1分単位の残業や1時間単位の有給休暇など、「働きやすい環境をとにかく作ろう」と取り組んでいます。
保育士が辞める理由として1番高いのが、人間関係という話も出てきました。当社は東京に特化して、ある程度ドミナントで事業を行っていますので、人事異動することで離職を抑えながら人材を確保していったことも大きな特徴だと思います。
坂本:場所も良いところですので、地方から出てきて就職する方もいらっしゃいますよね。
西尾:それに対しては、社宅制度があります。先ほどは割愛しましたが、保育所の上に保育士寮を作り、「社宅併設保育所」を開発しています。スライド7ページの中央下部の写真は、1階と2階が保育所で、3階の7部屋が保育士向けの住宅です。
下階の保育所で働く職員ではないのですが、近くの保育所で勤務しており、こちらで生活できるような開発を行っています。このように、さまざまなことを活用して保育士の採用などを進めています。
坂本:一般的なワンルームを借り上げると高額になるため、このような取り組みをしているのですね。
西尾:開発段階から並行して行っています。
坂本:ワンルームがたくさん作れない地域でも、寮であれば許可がおりることもあります。非常によくわかりました。
質疑応答:M&Aや新規事業の計画について
坂本:「M&Aや新規事業の計画について、差し支えない範囲で教えてください」というご質問です。
西尾:「子ども・子育て支援事業」を中核に、今後も検討し続けていきたいと思っています。最近は、小規模の保育所や入所率が少し低い保育所の売り物などが出ていることがありますが、そこを購入して、ただ無闇に大きくするという選択肢は取りません。
オペレーションが変わってうまくいく時と、そうでない時があるので、そのようなところを正確に見極めながら判断しています。また、保育事業だけではなく、付随する他の事業のM&Aなども積極的に図っていきたいと思っています。
質疑応答:都市部以外での事業展開について
増井:「今後も、事業所は都市部で展開していく計画ですか?」というご質問です。
坂本:関西や他の地域でも都市部へ進出することを検討しているのかという質問だと思います。
西尾:これはオペレーションの関係があり、今は1番確率の高いところでニーズを押さえている状況になっています。収益性においても、東京都は事業しやすい環境ですので、特化して開所している状況となっています。
ただし、今後の国の施策などで動きが変われば、目線を広げていくのも1つの案だと思っています。しかし、今は保育所を増やすステージというよりも、それに梃子を効かせて、どのように事業を発展させていくかという新たなステージに入っていると考えています。
坂本:現状、都心と地方では新規開園の数が異なってきていると思います。以前は、比較的どのエリアでも作っていました。御社が立地の基本として選定している都心の新規開園は、現状落ちているもののゼロではなく、一応ニーズはまだあるということですね。
西尾:必要とされているところはあります。
坂本:比較的計画どおりでも、ほぼ横ばいの状態でしょうか。御社と同規模の企業では1園から2園という増加計画でしたが、都心はもう少しあるというイメージでしょうか?
西尾:そのとおりです。新規開園に関しては、大幅に伸びることはありませんが、必要な時に必要なものを着実に作っていくという戦略を取っています。開設だけしていれば良いわけではないと思っていますので、我々としてはそこでつまずかないように慎重に見極めています。今ある保育所の稼働率を計画どおりに上げていき、付随する業務の拡張に取り組んでいきたいと考えています。
質疑応答:特色あるサービスや教育法について
坂本:「園児向けの御社の特色あるサービスや教育法は何ですか?」というご質問です。 教育法を打ち出している保育所などはよくありますが、御社の強みがあれば教えてください。
西尾:スライド20ページの左側に記載していますが、「CLiP」という制度に取り組んでいます。いくら有能なカリキュラムがあっても、使い手にその技術がないとまったく無意味なものになると思っているため、職員の研修に重点を置いています。他社のことはわかりませんが、我々はおそらく日本で一番研修の機会を持っていると思います。
研修はリアルやオンラインなどさまざまで、多くの職員に研修の場を提供しています。今は「CLiP」を中心に取り組んでおり、このような学びのサイクルを作り続け、質の向上に努めています。
お子さまをどこに預けたいかといった時に、やはり信頼できる保育所かどうか、信頼できる先生がいるかどうかが大変重要になってくると思います。そのような環境を作りあげるためプログラムの研修をしっかり行い、誰か一人だけができるのではなく職員の一人ひとりが対応でき、保育所全体の質が向上することで、信頼を生んで選ばれる保育所になっていくのではないかと思っています。
アカデミックな研究を取り入れることで、現段階で最新の優れたものをみんなで学んでいくという取り組みを行っているのが、我々の大きな特徴だと考えています。
質疑応答:補助金がない場合の会計について
増井:補助金に関してですが、売上高に計上されるものと、営業外収益に計上されるものがあります。保育所開設時は両方が立つと思いますが、例えば開設がない年はどのようになりますか?
西尾:営業外の収入がなくなっていきます。併せて営業外費用という、開設する時に使う費用ももちろんあります。そこが出ているところではありますが、そこがなくなると営業外に関する売上費用がなくなります。
営業外収益として入る補助金は今後も動いていくところになるため償却していき、営業利益を出していくことが非常に重要なことで、我々が今一番取り組まなければならないところです。
これまでは創業期でしたが、今はそれが実り始めて稼働を高めており、今後は営業利益が増えていくと考えていますので、そちらによって我々の事業の本質が見ていただけると思っています。
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