1. SE構法
大規模建造物のノウハウを一般的な住宅に生かすSE構法とは、従来、鉄骨造やRC造(鉄筋コンクリート構造)において主流だったラーメン構法(骨組み(部材)の各接合箇所を剛接合したもの)を木造住宅に取り入れ、安全かつ便利に利用できるようにシステム化したエヌ・シー・エヌ<7057>独自の木造建築用建築システムである。圧倒的な強度を持つ、独自の木造建築用システムは、現在に至るまで同社の強みであり、20年来の施工・建築経験の蓄積により、他社には追随できない知的財産となっている。
同構法は、すべての建物に構造計算を行い、構造品質の高い集成材を採用。接合部に独自開発したSE金物を使用しており、集成材とSE金物によって高い耐震性と大空間が実現する構造計算から部材供給・施工・検査・性能保証まで一括管理できるシステムである。
2. 木構造デザインの設立
同社は2020年2月、木造プレカットCAD開発トップシェア(60%以上)のネットイーグルとSE構法以外の構法も扱う大規模木造非住宅分野の構造設計事業について業務提携し、合弁会社である木構造デザインを設立した。
まず、「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」が2010年10月に施行されたが、これは木造率が低く今後の需要が期待できる公共建築物にターゲットを絞って、国が率先して木材利用に取り組むほか、地方公共団体や民間事業者にも国の方針に即して主体的な取り組みを促し、住宅など一般建築物への波及効果を含め、木材全体の需要を拡大することをねらいとしている。一方で「建築基準法」では構造計算によって安全性を確かめる必要がある建築物として、以下のように定めている。
(1) 住宅などの木造建築物で階数が3以上のもの。
(2) 住宅などの木造建築物で延べ床が500m2超のもの。
(3) 住宅などの木造建築物で建物の高さが13m超のもの、または軒の高さが9m超のもの。
(4) 木造以外の建築物で階数が2以上のもの、または延べ面積が200m2超のもの。
(5) 主要構造部(柱・梁・壁等)を石造、レンガ造、コンクリートブロック造、無筋コンクリート造等にした建築物で、高さが13m超、または軒の高さが9m超のもの。
この規定に当てはまる建物は構造計算をしなければ建築できないということになる。すなわち、一般的な木造住宅である2階建て以下で、500m2以下の家は構造計算が義務付けられていないということでもある。
しかし、住宅以外の木造建築物へ対応する構造設計者が少なく、プレカットなど生産側との連携においても課題が上げられており、非住宅木造建築市場の普及と、成長を鈍らせているのが現状である。こういった現状を背景に同社は、木造プレカットCAD開発トップシェアのネットイーグルと合弁会社である木構造デザインを設立している。今回の合弁会社設立により、両社のシナジーが見込まれるほか、SE構法以外の非住宅木造建築物の構造設計と生産設計を扱うことになるため、非住宅木造市場をけん引する役割が大きい。
非住宅建築物のニーズの高まりと市場の成長に反して、対応できる構造設計者が少ないこと、構造設計された図面どおりに正しく製造工場に情報を受け渡すことができない現状において、構造設計の際にコストと施工のコンサルティングが同時にできることは、クライアントにとっては大きなメリットとなる。プレカット工場に対して図面通りに正しく製造加工できるよう、構造設計と連動したプレカットデータとして最適な生産設計を提供することで、多種多様な物件に対して、オンリーワンのワンストップサービスを提案することができるため、木構造デザインの設立による効果は相当強みになるだろう。
また、「新しい大規模木造建築のマーケット」によってネットイーグルのクライアントである全国400社のプレカット工場に新たな需要が生まれ、木造住宅を施工している500社の同社の登録施工店にも新たな市場を提供するため、ネットイーグルとはWin-Winの関係となる。同社が供給してきた住宅24,000棟以上で構築した優位性を活用することで、構造設計システムを大規模木造へとシェアを拡大することで、SE構法だけではなく、CLT※1工法、集成材※2工法、在来軸組工法※3など適切な工法を用いることで、工法単体だけではなく、木構造全体のソリューションを目的とした会社への成長が期待されよう。なお、300~1,000m2の中規模低層建築物を中心に着手し、5ヶ年計画の事業目標としては、棟数1,000棟、床面積500,000m2を目指している。
※1 CLT(Cross Laminated Timber):板の層を各層で互いに直交するように積層接着した厚型パネル。
※2 集成材:板材を接着剤で再構成して作られる木質材料。
※3 在来軸組工法:日本古来の工法を簡略化・発展させた工法。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
<NB>
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