2. エノモト<6928>の強み
同社の強みは、一貫生産体制と機動力にあり、一貫生産体制は金属と樹脂の複合加工(インサート成形)技術と高品質・大量生産の技術に支えられ、機動力は同品質の製品を製造する3極体制と独立系のサービスポジションに裏付けられている。
同社は、金型製作では、自社設計・自社開発により狭ピッチ品用プレス金型を2週間で試作できる高精度微細加工技術や高電圧高電流仕様のパワー半導体の金型製作技術、プレス加工では、プレス時の金型の摩耗を考慮して最適なタイミングでメンテナンスする量産技術、金と銀に対応する微細なスポットメッキ技術、熱膨張係数の異なる金属と樹脂の複合加工技術などを有しているが、いずれも競争力のある技術である。なかでも同社の複合加工技術は、厳しい寸法精度が要求される、超精密な金属打ち抜き部品と樹脂成形の一体成形部品を製造できる、競争力のある技術である。平状フープ及び縦フープでのインサート成形や、単品部品をロボットで金型に供給して成形する複合成形など、長年培ってきた高度な超精密加工技術により、あらゆるパターンのインサート成形にも対応することができる。また、フレームと樹脂成形のマッチングを社内で一括管理・一貫生産しており、金型の設計や製造、部品生産のみならず、開発から試作、量産に至るまでのライン構想の提案など、成形に関するあらゆるニーズに対応することができる。同社はさらに、高精度の金型製作や最適なタイミングでのメンテナンスによって、低背・狭ピッチコネクタやパワー半導体用リードフレームなど成形部品を、億単位で大量生産することができるという強みも持っている。
機動力の面では、同社は国内4工場のほか、自動車やスマートフォンなどセットアップメーカーに近いフィリピンと中国に工場を有する。ともに、日本と同水準の高い品質基準と万全な生産体制を構築、金型の設計からプレス、メッキ、樹脂成形、完成部品までの一貫した製造を行っている。もちろん海外においても、顧客のコストや納期に対する要求に、国内同様適切に対応することができる。特にメッキ加工の認可取得が困難と言われる中国において、メッキ工程まで含めた一貫生産ができる数少ない「メイドインジャパン」品質の日系企業として、非常に評価が高い。また、部品メーカーは素材系、電機系、独立系に分けることができるが、素材系は純粋な金属加工領域に特化しているためロットが大きく汎用性の高いオープン品をメインに扱っており、電機系は親会社の意向に沿った技術で製品を製造している。これに対し、同社のような独立系は、精密・微細加工など加工難度の高い製品やメッキ・樹脂加工など加工度の高い製品に特化しているため、様々な顧客が求める製品や技術、ロットに対応することができる柔軟性をもっている。
生産体制を支える厳しい品質管理基準
3. 生産体制
同社の工場はどの工場も、蓄積してきた技術と独創的で効率的な生産ラインにより、顧客の要求を満たす高品質な製品を生み出すことができる。ますます強まる顧客の高度な技術への要求を実現するため、国内の各工場では、インサート成形の本社工場(上野原サイト)、リードフレームの本社工場(塩山サイト)、コネクタ用部品の津軽工場、リードフレーム及びコネクタ用部品の岩手工場と、それぞれの工場が得意とする分野を持ち、様々な技術やノウハウを集約している。前述したとおり、海外の製造拠点であるフィリピン工場と中国・中山工場でも、日本と同様の製品を安定して大量に一貫生産することができる。
こうした生産体制を支えるのが、品質管理である。同社は、全工場でISO9001とISO14001を取得、海外でも国内生産と同じ基準で品質管理を実施している。三次元SEM(高機能測定器)による分析や品質に厳しい車載用デバイス向け製品の供給実績から、同社の品質管理技術が高水準にあることが理解できる。車載用製品におけるさらに厳しい品質管理・環境管理に対応するため、自動車産業の国際的な品質マネジメントシステムであるIATF16949の認証を中国で取得、2019年9月には岩手工場でも認証を取得した。IATF16949認証とは、自動車部品及び自動車用材料メーカーを対象に制定された、「欠陥の予防」と「バラツキとムダの削減」を達成するための自動車業界特有の品質マネジメントシステム要求事項で、ISO9001:2015をベースにつくられたセクター規格である。認証があれば、自動車産業における受注活動が大きく効率化されると考えられる。今後、他の工場でも認証取得を進める方針だ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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