1. 2018年12月期業績見通し
ザインエレクトロニクス<6769>の2018年12月期の連結業績は、売上高が前期比11.5%増の3,528百万円、営業利益が11百万円(前期は490百万円の損失)、経常利益が41百万円(同524百万円の損失)、親会社株主に帰属する当期純利益が38百万円(同523百万円の損失)となる見通し。想定為替レートは前期とほぼ同水準となる110円/米ドルとしている。上期については売上高が前年同期比4.5%減の1,555百万円、営業損失が85百万円と低迷するが、下期は売上高が上期比で27%増と急拡大し、営業利益も96百万円と黒字転換すると見ている。
下期に一段と売上高が伸びるのは、2017年10月に量産出荷を開始した次世代USB規格となるUSB3.1 Gen2対応リドライバの需要が本格的に拡大するためだ。USB3.1 Gen2は伝送スピードが10GbpsとUSB3.0と比較して2倍に高速化している。反面、機器間をつなぐケーブルの動作保証距離は1mと従来の3分の1に短くなり、使い勝手の面でやや難があった。同社のリドライバは独自の伝送技術により伝送距離を数mまで延伸することが可能となっており、競合他社品に対して優位性があり、今後のシェア拡大が見込まれる。同社ではさらに性能を向上させたリドライバの投入や周辺部品も含めたモジュール製品の開発・販売も進めていく計画となっており、今後の収益けん引役になる製品の1つとして期待される。
なお、売上総利益率が前期の61.4%から57.0%に低下するが、これはUSB3.1 Gen2対応リドライバを戦略製品として拡大するため、利益率を既存製品よりやや抑えて販売していくことが要因。このため売上総利益は前期比3.5%増の2,012百万円と若干の増益にとどまることになる。ただ、研究開発費が前期の1,514百万円から1,081百万円と433百万円減少することにより、営業利益は大幅に改善し3期ぶりの黒字に転じる見通しだ。
市場別売上見通しでは、産業機器向けは事務機向けやセキュリティカメラ向けなどで前期比1ケタ増と堅調に推移するが、アミューズメント機器向けは規制強化の影響が続き同2ケタ減になると見ている。車載向けは引き続きCIDやドライブレコーダー、車載カメラ向け等での引き合いが旺盛で2ケタ伸長が続く見通し。中国自動車メーカーからコンパクトSUVのCID用純正部品として高速情報伝送用半導体を受注するなど、純正部品としての採用もさらに拡大が見込まれる。
一方、モバイル向けは日系スマートフォンメーカー向けISPが減少する見通しとなっている。ISPに関しては高解像度化が進むセキュリティカメラや車載用カメラ向けでの拡販に取り組んでいく方針となっている。民生機器向けに関してはパソコン・周辺機器向けはUSB3.1 Gen2対応リドライバの伸びが見込まれるが、テレビ向けの減少が続く見通しとなっている。テレビ向けについては2018年内にサンプル出荷を目指している次世代高速インターフェース技術「V-by-One®US」を搭載した製品で復活を目指している。8Kテレビでは従来技術だとパネルと機器間をつなぐケーブル本数が32本必要だったが、同技術を用いれば8本と大幅に削減され、コスト低減につながる技術として中国、韓国のテレビメーカーからも注目されているためだ。このため、8Kテレビの普及が本格化する2020年の東京オリンピック・パラリンピックに向けてはテレビ向けも回復に転じる可能性が高い。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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