ブランド製品事業の売上高は前年同期比18.7%減の272.36億円、セグメント損失は30.69億円(前年同期は13.10億円の損失)となった。主力のクリエイティブソリューションは、コロナ禍で発生した前倒し需要からの回復遅れや中国で顕著な消費者センチメントの悪化、他カテゴリーへの需要シフトなど市場環境の変化による影響を受けるなか、ペンタブレット製品、ディスプレイ製品ともに新商品投入による商品ポートフォリオの更新を図ったものの、既存モデルの需要が減少し、全体の売上高は前年同期を下回った。ビジネスソリューションは、流動的な市況や案件進捗の動向の影響を受けつつも、全体の売上高は前年同期を僅かに上回った。セグメント損失は、棚卸資産評価損の戻入益の計上や販管費の削減を図るも、減収による粗利減に加えて部材の買付契約評価引当金の繰り入れや棚卸在庫評価減を売上原価に計上したことなどにより、前年同期から拡大した。
テクノロジーソリューション事業の売上高は同22.5%増の619.15億円、セグメント利益は同30.7%増の120.51億円となった。PC需要動向などOEM提供先の市場環境の変化による影響を受けつつも、AESテクノロジーソリューション全体の売上高は、前年同期を上回った。スマートフォンやタブレット、電子ペーパーに関連したOEM提供先の需要が増加したことから、EMRテクノロジーソリューション全体の売上高は、前年同期を上回った。セグメント利益は、増収による粗利増などにより、前年同期を上回った。
2024年3月期通期については、同日、連結業績予想の上方修正を発表した。売上高が前期比3.8%増(前回予想比7.3%増)の1,170.00億円、営業利益が同163.3%増(同17.8%増)の53.00億円、経常利益が同133.6%増(同28.8%増)の67.00億円、親会社株主に帰属する当期純利益が同173.4%増(同24.1%増)の49.00億円としている。連結業績予想の上方修正の主な要因として、売上高については、テクノロジーソリューション事業では継続した需要増加を見込む一方、ブランド製品事業では年末商戦の結果が想定を下回ったこと及び第4四半期連結会計期間の売上高減少を見込むことを反映したとしている。営業利益については、テクノロジーソリューション事業ではセグメント利益の上方修正を見込む一方で、ブランド製品事業では当第3四半期連結会計期間末に買付契約評価引当金を繰り入れたことなどを反映したとしている。経常利益、親会社株主に帰属する当期純利益については、上記の理由のほか、直近の為替相場が想定よりも円安に推移したことにより、営業外収益において為替差益が増加した影響を反映したとしている。
ワコムは、決算発表同日に行った決算説明会において、昨年5月の決算説明会で行った「(中期経営方針)Wacom Chapter 3」アップデートプランの改編の進捗報告を行い、商品ポートフォリオの見直し状況や販路のグローバル地域毎での集約化の推進、またその販路集約化と同期した形で組織の最適化を実施中であることを述べた。また、厳しい事業環境にあるブランド製品事業の運営体制の強化を図るため、Task Forceチームの組成と運営、さらに取締役会の監督機能のさらなる強化を図る旨が説明された。今後のスケジュールとしては、2024年5月を目途として、改編の効果を反映した2025年3月期の具体的な経営計画及びWacom Chapter 4の見通しアップデートの説明が実施される予定としている。
また、ワコムは1月31日、会社法第178条の規定に基づき、自己株式を消却することを発表した。同社の普通株式6,000,000株(消却前の発行済株式総数に対する割合3.8%)を2月14日に消却するとしている。なお、同社は中期経営方針「Wacom Chapter 3」対象期間(2022年3月期から2025年3月期まで)において、総額200 億円を上限とする自己株式の取得を実施する方針としており、2023 年12 月29 日現在で、各取締役会決議に基づき、累計して同社の普通株式 11,327,200株(取得価額の総額 8,350,730,400円)の自己株式の取得を実施している。
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