―日本企業に活躍期待膨らむ、中長期的な需給逼迫の構図に変化なし―
LNG(液化天然ガス)関連株に長期的な投資妙味が膨らんでいる。ロシアによるウクライナ侵攻に伴い、世界的なエネルギー安全保障に対する関心が高まった。特に欧州は脱ロシアが急務となっており、それとともに天然ガスを液化して長距離搬送を可能とするLNGはエネルギー分野の注目の的となっている。足もとで、原油価格の下落でLNG関連株も軟調に推移しているが、長期的な成長トレンドは不変であり投資妙味は大きい。
●価格高騰の反動懸念もLNG需給逼迫は変わらず
LNGは液化天然ガスの略称。天然ガスを約マイナス162度にまで冷却し液化させたもので、液化すると体積は約600分の1に減る。これにより、LNG専用船やタンクローリー、鉄道での長距離輸送やタンクでの貯蔵が可能となる。石油や石炭などに比べ二酸化炭素の排出量が少ないクリーンなエネルギーであることも特徴だ。
そのLNGを巡る市場環境はウクライナ危機を契機に激変した。象徴的なのが、天然ガス価格で欧州の同価格は、100万BTU(英国熱量単位)当たりが今年3月の平均で1月に比べ5割上昇しており、その後も高止まりしている。ウクライナ危機を経て、いまこそ活躍本番とばかりにLNG関連株は急伸した。
ただ、直近ではLNGや 石油関連株が軟調となっている。これは米金融引き締めによる景気減速懸念が高まるなか、米原油先物相場のWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)価格が下落。LNG価格は原油相場に連動する面が強いため、LNG関連株も警戒売りに押されたようだ。しかし、エネルギーアナリストからは「基本的にタイトな需給関係は変わらない」と価格高止まりを予想する見方が多い。特に「LNGは原油に比べ一段と需給は引き締まっており、価格はより上昇しやすい」とみる声もある。それだけに、LNG関連株の一服場面は格好の拾い場ともみられる。
●米国産など巡り世界的なLNG争奪戦が勃発
ウクライナ危機で主要7ヵ国(G7)は対ロシア経済制裁を強めロシア産原油の輸入を禁止する方針を示した。同時にロシア産の天然ガスからの脱却を目指しており、この動きが天然ガス価格の高騰を呼んでいる。そんななか、焦点となっているのがシェール革命でシェールオイル・ガスの増産が進む米国の動向だ。これまでカタールやオーストラリアがLNG輸出国のトップ争いをしていたが、米国は2022年には両国を抜き世界最大のLNG輸出国となる見通しだ。
これまでロシア産の天然ガスに頼っていたドイツなど欧州各国は、脱ロシアを進めるなか、日本や中国、韓国の主要LNG輸入国のなかに割って入ってくる格好となり、増産を進める米国産などを巡って世界的なLNG争奪戦が勃発している。
今後、LNGの供給力を増加させるために生産設備を増強したとしても、新規プラントの建設には数年単位の時間がかかるとみられる。このことは、エネルギー危機の収束は容易ではないことを示すと同時に、LNG関連株には今後も長期間にわたり追い風が吹くことを意味している。
●日揮HDや千代建などプラント企業の活躍余地は大
とりわけ、日本にはLNG関連分野で世界的な高実績を誇る企業が少なくない。なかでもLNG関連の有力銘柄に挙げられるのは、やはり日揮ホールディングス <1963> [東証P]などプラント株だ。同社は、米ベクテルやKBR
同様に千代建にも期待が膨らむ。23年3月期の同利益は200億円(前期比89.7%増)の見通し。カタールのLNGプロジェクトなどの受注残が積み上がっている。更に、プラント大手の東洋エンジニアリング <6330> [東証P]も石油化学プラントなどの建設需要拡大の追い風が期待できる。
●IHIやニチアス、明星工、荏原など
また、オーストラリアのイクシスLNGプロジェクトなどを手掛けるINPEX <1605> [東証P]など石油関連株や、米国のLNGプロジェクトに出資する三菱商事 <8058> [東証P]や三井物産 <8031> [東証P]など商社株。それにLNG船の建造に絡む三菱重工業 <7011> [東証P]や三井E&Sホールディングス <7003> [東証P]などや、LNG運搬船の日本郵船 <9101> [東証P]や商船三井 <9104> [東証P]など。LNG貯蔵タンクの建設では、IHI <7013> [東証P]は世界トップシェアを誇り、トーヨーカネツ <6369>も同タンクで高実績を持つ。また、LNG保冷工事に絡むニチアス <5393> [東証P]や明星工業 <1976> [東証P]、LNGの移送などに使う極低温ポンプを扱う荏原 <6361> [東証P]、LNGプラント制御システムの横河電機 <6841> [東証P]などにも注目したい。
株探ニュース
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