● 終活ニーズの増大
政府の人口推計によれば、高齢化率は2020年の28.9%から2040年には35%を超え、2060年には5人に2人が65歳以上の高齢者となる超高齢社会が到来する。平均寿命が年々延び長寿化が進む中で、高齢者の単身世帯の増加、医療費の増加、金融資産の高齢者への偏在など社会構造の大きな変化が生じている。こうしたトレンドは、終活ニーズの増大という形で現れてくると鎌倉新書<6184>では認識している。また、終活を「人生の終わりに向けて前向きに準備することで、今をよりよく生きる活動」と定義。お墓、葬儀、仏壇など「家族のつながり」のことだけに留まらず、遺言、相続、不動産など「お金」のこと、介護、終末医療など「からだ」のこと、他にも「家の片付け」「思い出」「家族へのメッセージ」など、人生をよりよく生きるために大切なことをすべて終活市場として捉えている。
同社によれば、ユーザーのニーズには葬儀や相続のように死に関するイベントが生じた時に意思決定する顕在化しているもの(やらなければならないこと:課題)と、遺言書のように将来可能性があるがまだ取り組んでいない潜在的なもの(やりたいこと:希望、やっておきたいこと:備え)があり、この10年間のうちに個々人の潜在的ニーズが顕在化し、終活サービスの利用に結び付いてくる流れが生まれると予測している。現在顕在化している数兆円規模(葬儀市場1兆5,050億円※1、仏壇市場1,402億円※2、お墓4,000億円※3と供養3事業だけで2兆円規模)のライフエンディング市場から、10倍以上の50~100兆円規模の終活市場へと拡大していくと予測している。
※1 経済産業省大臣官房調査統計グループ「平成30年特定サービス産業実態調査報告書 冠婚葬祭業編」
※2 総務省統計局「平成28年経済センサス活動調査」
※3 同社推計
同社の2020年1月末の試算では、Webサイト「いいお墓」「いい葬儀」の業界市場シェア(数量ベース)はお墓3.0%、葬儀0.5%程度とわずかである。しかも、人口推計では今後20年は死亡人口が現在の140万人強から170万人弱まで増加していくことが見込まれており、同社の成長余力は十分にある。また、スマートフォンの普及によりモバイルでの同社へのアクセスも増加しており、ネット市場の拡大も同社の成長を押し上げるものと見られる。一方、仏壇仏具やお墓などにおいては、ユーザーの節約志向に加え、ユーザーの生活スタイルや価値観の多様化による購入商品の小型化・低価格化の傾向が継続している。葬祭事業においても、核家族化や葬儀規模の縮小により、単価は減少傾向が続いている。
また、行政サイドにおいても、2016年「官民データ活用推進基本法」の制定、2017年同法に基づく「デジタル・ガバメント推進方針」策定により、行政の在り方をデジタル前提で見直す取り組みが加速。内閣官房IT総合戦略室では、自治体による遺族に向けた「死亡・相続ワンストップサービス」を推進し、2018年度には全国で6自治体だった「おくやみコーナー」の設置自治体数は、2020年度には169自治体と、わずか3年間で約28倍に急増した。こうした動きと同調して、同社では2021年から自治体による遺族や地域住民支援の課題解決をサポートする官民協働事業を立ち上げている。自治体の関心も強く、同社の取り組みの独自性も評価され、2023年4月末現在で提携数は44都道府県300自治体に急増。今後も提携自治体は増加すると見込まれる。こうした自治体のサポートにより、その先にいる地域住民やその家族の終活ニーズを捉えて市場シェアを拡大していく事業基盤づくりが着実に進んでおり、同社の飛躍が期待できるところである。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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