―ウィズコロナで「フォトウエディング」「マッチングサービス」など新たなニーズ―
オミクロン株の出現など、新型コロナウイルスによる脅威はいまだ予断を許さない状況にあるが、国内においては感染者数が急激に減少するなど落ち着きをみせている。足もと、海外でのオミクロン株の感染拡大に対する懸念が高まり株式市場を揺るがすが、国内ではウィズコロナを見すえた動きも出始めている。新型コロナの感染拡大は「ブライダル関連株」にもここまで大きな影響をもたらしてきた。結婚式の延期、中止が相次ぎ披露宴会場を運営する企業にとっては大きな痛手となった半面、「フォトウエディングサービス」や「 マッチングサービス」は、コロナ禍での新たなニーズを捉え攻勢を掛けている。また、結婚式や披露宴も徐々にだが再開され始めるなか、「結婚」そして「婚活」関連株のいまを検証した。
●令和婚反動からの回復、感染縮小で光明
9月に発表された厚生労働省の2020年の人口動態統計(確定数)によると、「婚姻件数は52万5507組で、前年の59万9007組より7万3500組減少」した。戦後最少となった婚姻数だが、背景には新型コロナの感染拡大に加え、前年の令和婚による婚姻数増加の反動があったという見方が大勢だ。
これを前提に考えれば、令和婚の反動からの回復に加え、感染者数の減少はブライダル関連への光明につながることになる。関連銘柄の業績については強弱観が対立するものの、回復色をみせる企業も散見され始めている。株価は下値模索の銘柄が多いものの、今後再評価機運が高まる可能性もある。
●「いつかは実施する予定」
11月4日に公表された「結婚総合意識調査2021(リクルートブライダル総研調べ)」では、20年4月~21年3月に結婚した全国の20~49歳の既婚者を対象に調査した結果、「披露宴・ウエディングパーティー、親族中心の食事会、その他ウエディングパーティーのいずれかの非実施者のうち約3人に1人は、新型コロナの影響を受けて延期したが、いつかは実施する予定と回答。新型コロナの収束を待って、ウエディングパーティーの実施を希望している層がいることが推察される」と分析している。こうしたことからも、日常が次第に戻るなか、結婚市場は従来とは形、規模を変えつつも緩やかながら回復傾向をみせることが予想される。
とは言え、「まだまだ状況は厳しい」(ブライダル関連・広報)と語る関係者は少なくはない。確かに、国内における感染者数は急減し行動規制も緩和される状況にあるが、海外に目を転じればいまだ感染は拡大を続けており、安穏とはしていられない心境は理解できる。それでも、「披露宴の形は(コロナ禍で)多様化しており、こうしたニーズも捉えることで業績回復に努めたい」(同)と話す。
●ブラスは5期ぶりの過去最高益
ウエディング業界が厳しい事業環境に置かれるなか、直近注目を集めたのが東海地方を中心に貸切型ゲストハウスによるハウスウエディング事業を展開するブラス <2424> だ。同社は今月15日取引終了後、非開示としていた22年7月期の単独業績予想について、売上高が前期比22.2%増の114億2000万円、営業利益が同2.1倍の7億円、経常利益は同57.1%増の8億円を計画し5期ぶりに過去最高益を更新する見通しになったと発表。8月と9月は全国的な緊急事態宣言の発出により挙式、披露宴の延期が多数発生したことの影響を受け、第1四半期(8-10月)の経常利益は7900万円だった。しかし、10月の施行件数は前年を上回る推移をみせ、平均単価も改善傾向をみせた。通期は新型コロナワクチンの接種率が上昇するなか、挙式・披露宴実施組数が回復する見通しだ。株価は、これを受けて16日には一時ストップ高となり、ウィズコロナが視野に入るなか、ブライダル関連株への投資家の関心の高さをうかがわせるものとなった。きょうは、全体相場の悪地合いもあり、大きく売られ72円安の684円で取引を終えている。
また、ハウスウエディング大手のテイクアンドギヴ・ニーズ <4331> は国内ウエディング事業では取扱組数、平均単価が緩やかに回復傾向をみせるなか、22年3月期の営業利益は8億円(前期111億9100万円の赤字)と黒字転換を予想する。ただ、7月から発令された緊急事態宣言により7月から9月の挙式延期が増加したため、売上高は380億円と従来予想(420億~450億円)から下振れた。売り上げ減少を、継続的なコスト削減で補完する格好だ。
ウエディング業界は、いまだ不透明な事業環境が続いているのも事実だが、ワクチン接種が進むなか、足もと感染者数の大幅な減少もあり、わずかながらも明るい日差しが差し込み始めている。こうしたなか、クラウディアホールディングス <3607> 、ツカダ・グローバルホールディング <2418> といった関連銘柄の動向にも注視しておく必要がありそうだ。
●デコルテHD、フォトウエディングで商機
一方、デコルテ・ホールディングス <7372> [東証M]はコロナ禍での新たなニーズを捉えている。6月22日に東証マザーズ市場に新規上場したIPO銘柄で、フォトウエディング(写真婚)事業が主力。同社は、昨年11月に挙式事業(和婚スタイルサービス、衣裳レンタルサービス)を譲渡し、市場の将来性と事業の収益性の高いフォトウエディングサービスに経営資源を投入する体制を整えた。披露宴の中止や延期が相次ぐなか、フォトウエディングサービスへのニーズの高まりやコロナ禍に対応した施策の実施が功を奏している。16日には22年9月期連結業績予想について、営業利益を9億9800万円から14億2700万円(前期比63.8%増)へ、純利益を5億9700万円から8億9500万円(同55.9%増)へ上方修正した。所有するデコルテ浅草ビル(東京都台東区)を譲渡し、約4億3500万円の固定資産売却益を営業利益に計上する。同ビルの老朽化が進んでいたため、底地の所有者から購入の打診があり、譲渡を決めたという。もともと営業利益で前期比14.5%増を計画していたが、それに上乗せさせた格好だ。
●バンクオブイはゲーム恋活アプリ「恋庭」好調
コロナ禍で出会うチャンスが減ったことで、急速に注目されたのが恋愛・婚活アプリの存在だ。最近では、大手企業も参入し多くの人が利用していることで、アプリでの出会いにも違和感がなくなってきている。バンク・オブ・イノベーション <4393> [東証M]もマッチングアプリを手掛けており、4月から配信し「ゲームをしてたら、恋人ができた」という体験ができるゲーム恋活アプリ「恋庭」の利用者数が増加しており、今後の成長に向けたサービス基盤の確立を進めている。アプリを活用し、実際に会った2.8人に1人が交際に発展したと回答しているという。同社は11月12日、22年9月期連結業績は新作ゲームアプリ「メメントモリ」の配信開始及び「恋庭」の拡大に伴い、下半期には黒字に転換し、通期で連結営業利益を計上することを見込んでいると発表。現時点では適正かつ合理的な算定が困難であるとして、具体的な業績予想の数値は公表されていないものの、期待感も高まる。
また、マッチングサービスとして恋活・婚活サービス「Omiai」を提供するネットマーケティング <6175> は、11月11日に22年6月期第1四半期決算を発表。営業利益段階で2億5700万円に伸び、通期計画の5億円に対する進捗率は51%に達している。そのほかでは、恋活・婚活マッチングアプリ「CoupLink」を運営するリンクバル <6046> [東証M]も今期営業利益は黒字転換を計画する。
●IBJ、「日本結婚相談所連盟」で攻勢
婚活サイト、各種婚活サービスを展開するIBJ <6071> にも目を配っておきたい。同社は11月12日、21年12月期について連結営業利益を20億7400万円から14億7300万円(前期比9%減)に下方修正した。度重なる緊急事態宣言の発出や、今夏における感染者数の急拡大によりパーティー事業で開催規模の縮小などが響いた格好だ。ただ、今期は直営店事業においては、以前より注力してきた営業メソッドが浸透したことや、20年5月からZWEI(ツヴァイ)がグループ会社となったことなどで、入会数が前年同期比で増加。また、加盟店事業ではお見合い会員数が前年同期比で増加するなど、いずれも堅調に推移している。今月15日には、同社が運営する結婚相談所ネットワーク「日本結婚相談所連盟」が加盟相談所3000社、お見合い会員が7万5000人を突破したことを発表している。
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