―経済V字回復はなくても株価は上がる、今が買い場の勝ち組銘柄をリストアップ―
8日の東京株式市場は、週末でなおかつ米雇用統計発表という重要イベント前にもかかわらず、旺盛な物色ニーズが反映された。日経平均株価は大幅に買い優勢となり2万円大台を回復、500円あまりの上昇をみせ高値引けというオマケまでついた。米雇用統計は既に大幅な悪化を織り込んでいるとの見方が強いほか、 新型コロナウイルスの国内感染者数が直近は減少傾向にあることなどがポジティブ材料として働き、大方の予想を外す思わぬ急騰を演じる形となった。
●実体経済を映さない株式市場
株式市場は「経済を映す鏡」といわれるが、今は少なくともその常識を覆すような相場がグローバルを舞台に繰り広げられている。新型コロナの感染拡大を封じ込めるために、各国は人の動きを止めることに精力を注ぎ、その結果として経済活動がフリーズし企業業績は急激に悪化、景気も後退局面に陥ることが必至となっている。更に今後についても、経済のV字回復は見込みにくいという識者の声が大半であり、3ヵ月から半年のタームで経済に先行するといわれる株式市場において、例えば日経平均株価が当該企業の1株利益が下がり続けるなかで2万円近辺にいることには、違和感を覚える投資家も少なくないだろう。いうまでもなく、今は2012年末を起点とするアベノミクス相場で平均PERは最も高い位置にあり、理論上ここで株を持つのはリスクが大きいということになる。
しかし個別株を見る限り、それとは全く違ったコンセプトで物色人気に沸く銘柄のオンパレードである。3月決算企業の今期業績見通しが未定(非開示)というケースで、何を根拠に買うのか。それは足もとのPERや配当利回りをモノサシにするのではなく、要諦となり得るのは企業の有するテーマ性、そして成長のビジョンだ。新型コロナは確かに、これまで経験のないほどのダメージを相場に与えたが、その試練は瞬時に過去の出来事として後方へと流れていく。視点はバックミラーに映る風景ではなく前方に開ける道に向いている。今の東京市場は魅力ある銘柄に貪欲なまでに資金が流れ込む、そういう地合いである。
●「強い株はより強く」の流れに
来週以降は米国や欧州各国で経済活動再開への動きが徐々に軌道に乗る。2次感染拡大のリスクは確かにあるが、今の段階でそのネガティブシナリオを唱えても埒(らち)が明かない。新型コロナの感染拡大を巡って先鋭化した米中対立も、目先は劉鶴副首相とライトハイザー米通商代表などとの電話協議を受け緊張緩和の思惑が浮上している。また、世界的に新型コロナのワクチンや治療薬の早期開発に向けた支援体制が強化されるなか、前倒しでコロナ駆逐の課題が達成されることへの期待も高まっている。そうした環境下、東京市場では決算発表本格化を受け総論として買い手控えムードが意識されやすいものの、一方で2極化現象を誘発し、強い株はより強くという太い流れが形成されそうだ。
ここは基本に立ち返りチャート好形の銘柄に着目。今回は、足もとの業績が好調に推移していることに加え、今後も新型コロナ感染拡大がもたらしたマイナス影響を受けにくいテーマ株に焦点を絞った。企業のIT投資の要である クラウドや人工知能(AI)、払底するデジタル人材、コロナ薬に絡む バイオ、アフターコロナの外食支援、導入が加速する農業ICTなどのテーマで、ここから太い流れに乗りそうな有望5銘柄をエントリーした。
●「ウィズ・コロナ」で時流に乗る極め付き5銘柄
◎SBテクノロジー <4726>
元来はECの運営受託で強みを持っていたが、企業向けクラウドサービスやサイバーセキュリティー分野に重心を移したことで、デジタルトランスフォーメーション(DX)需要を捉えて業績の伸びが加速している。同社の筆頭株主であるソフトバンク <9434> 向けにシステム開発のマネジメント案件が高水準、収益環境に吹く追い風は強い。20年3月期はトップラインの伸びが顕著で16%増収を確保。利益も営業利益段階で21%増の30億3500万円と好調だ。更に21年3月期は前期比19%増の36億円予想と、コロナ禍においても2年連続で2割前後の増益を計画するなど、強気の経営計画に評価余地は大きい。
◎医学生物学研究所 <4557> [JQ]
臨床検査薬や研究試薬などを製造し、自己免疫疾患検査薬など難病領域に高い実績を有するバイオベンチャーで、業績も大幅増収増益トレンドを走っている。20年3月期業績はテトラマー試薬の売り上げ拡大に加え、原価改善への取り組みが奏功し、営業利益段階で前の期比2.7倍の13億3400万円と急拡大、21年3月期も前期比12%増の15億円見通しと2ケタ増益基調を確保する見通し。新型コロナに対する抗体を測定する研究用試薬の取り扱いもスタートさせており、テーマ買い対象としてもマーケットの視線が次第に強まっている。26週移動平均線近辺の時価は拾い場となろう。
◎シンメンテホールディングス <6086> [東証M]
空調など店舗設備メンテナンスを手掛けており、外食チェーンなどが主要顧客。新型コロナ対策として換気や消毒などの設備投資の重要性が広く認知されるなか、国は補助金などでこれを支援する方向にあり、コロナ収束後をにらんだ同社の活躍余地に着目したい。20年2月期は売上高が前の期比2ケタ伸長を確保、営業利益は同34%増の8億4400万円と大幅な成長を達成、年間配当も前の期実績の26円から8円増配となる34円(株式分割前)と株主還元にも前向きだ。21年2月期予想は開示していないものの、「緊急メンテナンスサービス」の顧客開拓が続くなか、中期成長路線が見込める。
◎セラク <6199>
ITインフラ構築やデジタル人材の派遣事業を手掛け、企業のDX関連投資で収益環境は極めて良好だ。AI全盛時代に対応した有能なデジタル人材への需要が旺盛となるなか、年間1000人の技術者養成を目指すプログラム「テクトレ」に注目度が高い。また、新型コロナは野菜価格の高騰などで農業分野の合理化ニーズにも光を当てた。そのなか、同社は注力する温室内環境遠隔モニタリングシステム「みどりクラウド」で農業ICTの一翼を担う。業績は大幅増収増益路線を走り、20年8月期上期(19年9月~20年2月)も営業利益が前年同期比2.3倍の4億4100万円と足もとでも急成長をみせている。
◎クリーク・アンド・リバー社 <4763>
映像やゲーム、Webコンテンツなどの制作代行ビジネスを展開し、クリエーターの派遣事業も手掛けている。電子書籍分野にも傾注し需要を取り込んでいる。20年2月期業績は2ケタ増収で営業利益は3割強の伸びを達成したが、21年2月期も成長性に陰りは見られず、売上高が前期比21%増の400億円、営業利益は25%増の26億円を計画。売上高、利益ともにピーク更新が続くなか、株価は17年につけた高値1538円から4割もディスカウントされた水準にあり割安感が強い。株主還元にも前向きな姿勢をみせ、毎期増配を続けていることや、自社株買いに積極的に取り組んでいる点は見逃せない。
株探ニュース
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