今週の新興市場は反落。前週まで日経平均・NYダウが4連騰となっていたため、利益確定売りが入りやすくなっていたようだ。そうした中、米国の利上げ打ち止め観測が一段と強まり、早期の利下げ観測まで台頭すると、為替市場では円高ドル安が進行した。円安による企業業績の改善期待が日本株市場の先高期待を支えていた要素もあるため、日経平均は下落基調となり、その影響を受けて新興市場でもリスク回避的な利益確定売りが入ったとみる。また12月は毎年IPOが多くなる月であり、IPO銘柄を買うための換金売りの影響もあったと思われる。今週の騰落率は、日経平均が-0.58%だったのに対し、東証グロース市場指数は-2.06%、東証グロース市場250指数は-2.27%だった。
個別では、京都市によるデジタルツイン化技術採用で週前半に3日連続ストップ高となった地盤ネットHD<6072>、厚労省の健康づくりに関するガイド案が10年ぶりの改訂が買い材料視されたトゥエンティーフォーセブン<7074>、米国でのスマホ装着型バーコードリーダー大量納入を発表したアスタリスク<6522>などが週間騰落率値上がりの上位に入った。その一方、12月30日付けでの上場廃止を発表したルーデンHD<1400>などが週間騰落率値下がり上位となった。週間売買代金上位にはカバー<5253>とジーエヌアイグループ<2160>が引き続き入った。
■米利上げ打ち止めと経済の軟着陸期待続くか、IPOは2社
来週の新興市場は反発か。米国では経済の減速傾向とインフレ率の低下傾向に米連邦準備制度理事会(FRB)高官らが確信を強めつつあるとみられる。来週発表される11月ADP全米雇用報告、11月雇用統計などでは労働需給の緩和傾向が確認される可能性がある。その他の米経済指標も極端に悪化するものがなければ、利上げ打ち止めと経済の軟着陸に期待が高まり、投資家はリスク選好の姿勢に傾きやすくなるだろう。
なお米債券市場では米金融当局が来年5月までに利下げに転じるとの観測が高まっている。米金利の先安観により為替市場では円高ドル安傾向が続こう。主力の輸出株は円高により業績拡大のペースが抑制される懸念があり、投資家は内需株への物色姿勢を強める可能性がある。特に成長性が高い情報・通信関連銘柄は注目を集めよう。新興市場は情報・通信やサービス業の企業が多く、これらの動きが株価上昇の支えになると思われる。日経平均株価が年初来高値圏にあるのに対し、東証グロース市場指数、東証グロース市場250指数はいずれも6月に付けた年初来高値よりも約2割安い水準にあり、値ごろ感のある銘柄も多い。
来週の新興市場では東証プライム市場に比べ出遅れ感が魅力となって、業績が拡大基調にある銘柄を中心として、幅広い銘柄で買いが再び入り始めることが期待される。個別ではDX支援とIT人材調達支援を主力事業とするコアコンセプト・テクノロジー<4371>、携帯キャリア各社の通信設備を共用化する事業が主力のJTOWER<4485>、格安航空券予約サイト「スカイチケット」を運営するアドベンチャー<6030>などに注目しておきたい。なお、来週は12/4にアスマーク<4197>が東証スタンダードへ、12/6にQPS研究所<5595>が東証グロースへ上場予定となっている。特に宇宙ベンチャーのQPS研究所は12月IPOでは目玉的存在となっており、年末に向けてのIPO市場の空気を決めるとみられるため、初値やその後の株価推移に注目しておきたい。
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