ネツレン、土木・建築業界、建築機械・工作機械の受注が堅調に推移 連結売上高は前期比+8.5%と過去最高達成
目次
大宮克己氏:みなさま、こんにちは。ネツレン・高周波熱錬株式会社の大宮でございます。平素は、当社の事業運営に際しまして、ご理解、ご支援を賜り厚く御礼申し上げます。また、お忙しい中、当社決算説明会にご参会いただき、誠にありがとうございます。
それでは、2022年度決算説明会を開催いたします。本日の内容は、ご覧のとおりでございます。
1.2022年度 連結決算の概要
まずは、2022年度の決算の概要でございます。2022年度は、中国におけるロックダウン、半導体等の部品不足による生産停滞、鋼材、電力費、物流費の高騰によるコストアップ、またウクライナ情勢をめぐる世界経済の混乱や急激な円安など、厳しい事業環境となりました。
このような中、当社は、受注量の確保に全力を注ぐとともに、鋼材価格・電力費のコストアップ分の販売価格への転嫁や、従来から進めております原価低減方策をより一層推進いたしました。
しかし、土木・建築業界、建設機械業界および工作機械業界からの受注は比較的堅調に推移しているものの、下期後半になって回復すると想定していた主力である自動車業界からの受注は、本格的な回復には至らず、逆に急激な受注変動による生産現場の混乱などで大きな影響を受けました。この結果、2022年度の連結売上高は、前期比45億円増収で過去最高になる575億円となりました。
連結営業利益はコスト増加分をカバーできず、前期比13億円減益の23億円、経常利益は前期比13億円減少の31億円、親会社株主に帰属する当期純利益は減損損失などの計上により23億円減少の3.8億円となりました。従いまして、ROEは0.6パーセント、ROAは3.8パーセントでございます。
2.連結損益計算書
連結損益計算書でございます。後ほどご覧になっていただければと思います。
3.連結営業利益の増減要因
連結営業利益の増減要因でございます。売上高要因にてプラス20億円となりました。しかし、販価改定、原価低減に努めましたが、原材料費、電力費などの高騰により変動費は38億円増加し、減価償却費の減少、人件費の圧縮などにより固定費は4億円減少しました。以上により、営業利益は23億円となりました。
4.特別損失の主な内訳
続いて、特別損失の主な内訳でございます。今後の事業計画を保守的に見直した結果、国内外の自動車業界からの受注割合が高い拠点において、当初予測からの著しい乖離が生じたため、減損損失18.5億円を特別損失に計上することといたしました。
計上の理由ですが、刈谷工場は自動車部品を主力にしており大幅な受注減少の回復の兆しが不透明なこと、可児NH工場、ネツレンチェコについては欧州向けの製品が多くウクライナ紛争などの不安要素を勘案したこと、塩城高周波熱錬は製造終了となった部品向けの設備が遊休状態となったためです。
今後の対応として、原価低減活動、生産性向上、自動車業界以外からの受注量の拡大、計画受注量減少時の価格改定活動を強化してまいります。
5.セグメント情報(連結売上高)
続いて、セグメント別の連結売上高でございます。製品事業部関連事業におきましては、前期比18パーセント増収の368億円となりました。土木関連では販売量の増加と、販価改定により増収、建設機械関連も販売量が伸びております。
自動車関連では国内、欧州の販売量は減少しましたが、主として北米において販売量が伸び、コスト増加分のタイムリーな価格転嫁が進み、さらに円安の影響によって大幅増収となりました。
IH事業部関連事業におきましては、前期比5パーセント減収の205億円となりました。受託加工は、自動車メーカーさまの減産の長期化と生産混乱により大幅減収となり、受注が堅調な建設機械・工作機械向けによる挽回までには至りませんでした。
装置関連は、設備投資需要が国内外ともに堅調に推移しており、受注残は増加していますが、購入部品納期の長期化により時期ずれの物件が発生しており、売上高は横ばいとなりました。
6.セグメント情報(連結営業利益)
セグメント別の連結営業利益でございます。製品事業部関連事業におきましては、全体の販売量は増加したものの、建築関連においては、商習慣上、契約時の鋼材価格での販売となり、直近の原材料の高騰分の価格転嫁遅れが大きく影響し、前期比25パーセント減益の9.8億円となりました。
IH事業部関連事業におきましては、受託加工において、自動車向けでの大幅な減産とお客さまでの断続的な稼働停止による生産計画の混乱が生産性の悪化となり、加えて電力費等のコストが増加したことにより、前期比42パーセント減益の13.5億円となりました。
建築関連製品につきましては、2023年度後半には原材料価格が転嫁された物件の販売に切り替わります。また、直近の販売動向を見ると、徐々にではありますが、自動車関連部品が増加してきております。各業界の動向を素早く、そして慎重に精査し、収益の確保に努めてまいります。
7.2022年度 資産残高の推移(連結)
連結資産残高の推移でございます。総資産は、自己株式の積極的な取得で現預金が減少しました。減損損失により固定資産も減少し、前期比22億円減少の798億円となりました。
8.2022年度 負債・純資産残高の推移(連結)
連結負債・純資産残高の推移でございます。負債合計は、未払法人税等や長期借入金などが減少し、前期比18億円減少の133億円です。純資産は、為替影響により為替換算調整勘定が増加しましたが、減損損失の計上による利益剰余金の減少、さらに、積極的な自己株式取得の実施などにより前期比3億円減少の665億円となりました。
9.2022年度 キャッシュ・フロー(連結)
連結キャッシュフローでございます。営業活動によるキャッシュフローは、業績悪化により前期比24億円減少の39億円です。投資活動によるキャッシュフローは、投資有価証券の売却収入が減少したことなどにより前期比11億円の減少となりました。従いまして、フリーキャッシュフローは27億円です。
また、財務活動によるキャッシュフローは、自己株式取得や配当金の支払い等により支出が前期比で23億円増加いたしました。以上により、キャッシュフロー期末残高は前期比11億円減少の169億円となっております。
10.連結設備投資
設備投資については、受注状況や顧客動向による市場環境の変化を精査した投資案件の見直しや、計画していた大型投資設備の構成部品の長納期化などにより、次年度への繰り越しが発生したことから、2022年度の設備投資額は13億円となりました。
2023年度は、これらの繰り越し分を含め、50億円の設備投資を計画しており、ネツレンビジョン達成に向けた成長戦略投資を進めてまいります。
11.地域別売上高の推移①
地域別売上高の推移でございます。2022年度実績としては、高強度ばね鋼線ITWを中心に、欧州を除き販売量が増加となり、さらに日本国内においては自動車関連以外の販売量が増加したこと、欧州においては販価改定が進んだこと、さらに円安効果によりまして全地域で売上高は増加しました。
2023年度につきましては、積極的な営業活動の展開で、さらなる販売量の増加を見込んでおり、さらに海外における受託加工事業の拡大、国内においては遅れておりました販価改定効果などによりまして、堅調に推移すると見込んでいます。
12.連結売上高の推移
続きまして、経営実績の推移でございます。まずは連結売上高の推移でございます。2022年度は自動車業界以外、土木・建築業界、建設機械業界および工作機械業界からの受注は比較的堅調に推移しているものの、自動車業界からの受注は本格的な回復には至らず、売上高は575億円となりました。
2023年度はさらなる販売量の拡大、販価改定の推進、年度後半からの自動車業界の生産回復などを見込んでおり、過去最高を更新し前期比10パーセント増収の630億円を予想しております。
13.営業利益・営業利益率の推移
連結営業利益・営業利益率の推移でございます。2022年度の営業利益は当初36億円を予想しておりましたが、減収の影響に加え、材料費、電力費などの高騰の影響が大きく、販売価格の改定、原価低減に努めているものの挽回には至らず、営業利益は23億円という結果になりました。
2023年度は、後半からコスト増加分の価格転嫁が進むとともに、自動車業界の生産回復による増収効果、間接部門を含めた徹底した原価低減活動と、受注変動に即応した事業部を超えたフレキシブルな生産体制をフル活用し、前期比22パーセント増益の28億円を見込んでおります。
14.セグメント情報(連結売上高)
連結売上高のセグメント情報でございます。製品事業部関連事業におきましては、2022年度当初予測のとおり、前期比18パーセント増収の369億円となりました。2023年度はさらなる販売量の増加、積極的な価格転嫁、需要が伸びている海外拠点の拡販を進め、前期比12パーセント増収の414億円を予想しております。
IH事業部関連事業におきましては、2022年度売上高は前期比5パーセント減収の205億円となっております。2023年度は自動車業界以外への受注活動の強化、さらに自動車業界の回復を見込んではおりますが、先行きに不透明感があることを加味しまして、前期比4パーセント増収の214億円を予想しております。
15.セグメント情報(営業利益・営業利益率)
セグメント別の連結営業利益、営業利益率でございます。製品事業部関連事業におきましては、建築関連の販価改定の遅れが大きく影響し、2022年度営業利益は9億円となっております。
2023年度は販価改定が進むものの、工作機械向け軸材の在庫調整による一時的な落ち込み、さらに鋼材費や電力費の高騰の継続懸念、成長に向けた開発費の増加を見込んでおり、前期比11パーセント増益の10億円を予想しております。
IH事業部関連事業におきましては、自動車関連の減産長期化、生産混乱の影響により、2022年度営業利益は13億円となりました。2023年度は建設機械や工作機械関連が堅調に推移し、自動車生産の後半からの回復、今まで進めていた原価低減活動、さらに2022年度実施した減損損失による原価償却費負担の低減等により、前期比31パーセント増益の17億円を予想しています。
16.設備投資・研究開発費・減価償却費の推移
設備投資、研究開発費、減価償却費の推移でございます。2022年度の設備投資は、米国の太径対応を含むITW増産投資、インドネシアの受託設備投資、国内製造設備の増設、更新を進めてまいりましたが、主要部品の納期遅れにより、次年度へ繰り越される案件が多数出ております。
ダブルスターク新規製造ライン、金属3Dプリンター、N-DXの工場業務システム、国内関係会社増産投資といった大型設備投資は、今期に繰り越しております。そのため、今期の設備投資額は50億円まで増加する計画としております。今後、第16次、第17次中期経営計画を意識した、成長投資を積極的に進めてまいります。
17.業界別売上高の推移
業界別売上高の推移でございます。2023年度は、前年に引き続き建機、土木、建築は堅調に推移し、低迷していた自動車関連が回復、海外における高強度ばね鋼線ITWが引き続き拡大することにより、自動車向けの売上高が大幅に増加する見通しです。
18.高強度ばね鋼線(ITW) 売上高の推移
自動車関連製品であります高強度ばね鋼線ITWの売上高推移でございます。2022年度は、部品不足による世界的な自動車減産影響や欧州のウクライナ情勢、中国における上海のロックダウンやゼロコロナ政策による経済活動の停滞などがございましたが、一部、挽回生産や為替影響により、売上高159億円と過去最高の売上高となりました。
2023年度は、後半からの国内・欧州での自動車関連の受注回復を見込むとともに、中国・北米での需要拡大、特に北米の第1次増設投資の稼働開始により、前期比20パーセント増の191億円と過去最高売上高の更新を見込んでおります。
19.PC鋼棒・異形PC鋼棒 売上高の推移
建築・土木関連製品であります、PC鋼棒、異形PC鋼棒の売上高推移でございます。2022年度は熊本での建設特需や海外企業の水害影響により、売上高は前期比24パーセント増収の61億円となりました。
2023年度も引き続き、半導体工場向けの建設特需の継続、さらに北海道新幹線関連の需要取り込みにより、前期比15パーセント増収の70億円を見込んでおります。
20.高強度せん断補強筋 売上高の推移
建築関連製品であります高強度せん断補強筋の売上高推移でございます。2022年の売上高は前期比9パーセント増収の47億円となりました。
建設業界は商習慣により、原材料の高騰による価格転嫁が遅れている業界ではありますが、価格転嫁前の契約案件の解消は上期と予想しており、2023年度は前期比6パーセント増収の50億円を見込んでおります。
施工時のメリットが大きいカットオフ工法を汎用設計ソフトにリリースし、一般化したことにより、本ソフトの活用による提案営業を開始しております。お客さまでの使い勝手もよくなり、さらなる売上拡大を見込んでおります。
21.旋回輪(建設機械部品) 売上高の推移
建設機械関連であります旋回輪の売上高推移でございます。2022年度は堅調な受注により前期比8パーセント増収の52億円となりました。2023年度も堅調な需要が見込めており、特に東南アジアや北米・南米の需要が旺盛でございます。
一方で、中国国内では需要が低迷しておりますが、中国からの輸出でカバーする計画でございます。従いまして、前期比8パーセント増収の56億円を見込んでおります。
22.誘導加熱装置・サービス 売上高の推移
誘導加熱装置・サービスの売上高推移でございます。2022年度は、設備の主要構成部品の長納期化が解消されず時期ずれが発生し、30億円となりました。2023年度は部品の長納期化が解消されると想定しており、受注残も積みあがっていることから、装置売上高は前期比33パーセント増収の40億円を見込んでおります。
サービスにつきましては、2022年度売上高は23億円という結果になりました。2023年度につきましても横ばいの23億円を見込んでおります。装置に関しては、サブスク販売の浸透を根気よく展開するとともに、お客さまが使用する旧式電源から高効率電源の更新に向けた営業活動の強化も継続してまいります。
23.熱処理受託加工 売上高の推移
熱処理受託加工の売上高推移でございます。2022年度の売上高は、自動車業界の急激な受注減により145億円となりました。建設機械・工作機械向けは堅調に推移しておりましたが、自動車向けを挽回するまでに至りませんでした。2023年度は引き続き、厳しい状況が続きますが、自動車生産の緩やかな回復を見込むとともに、電力費などのコスト増を加味した販価改定も進め、前期比2パーセント増収の148億円を予想しています。
また、5月15日にリリースしましたが、当社重要顧客である米国キャタピラーさまよりサプライヤー評価制度SERにおいて、当社尼崎工場が優秀認定をいただきました。9月には米国における表彰式に招かれております。これらを励みに、引き続き高品質な製品を提供してまいります。
24.第15次中期経営計画の進捗①
続きまして、2023年度が最終年度となる第15次中期経営計画の進捗でございます。
当社グループは、第15次中期経営計画にて、「NETUREN VISION 2030」の達成に向け、4つの基本戦略の取り組みを進めてまいりました。しかし、当社グループを取り巻く事業環境が計画立案時から大幅に変化しております。
当社グループは、コア事業の拡大、材料費や電力費等のコスト増加分の価格転嫁を強力に進めておりますが、厳しい事業環境は継続すると予想し、15次中計最終年度の数値目標を見直しすることといたしました。
売上高は、材料費や電力費等のコスト増加分の販売価格への転嫁、為替影響を加味し過去最高の630億円としました。営業利益は、価格転嫁の適用時期が遅れる可能性や、自動車業界の先行き不透明な受注状況等も踏まえ、40億円から28億円とさせていただき、ROEも修正させていただきました。しかし、ROE5パーセント達成に向け計画していた施策は積極的に展開し、鋭意、足掻き続けてまいります。
25.第15次中期経営計画の進捗②
第1の戦略である収益基盤の確立に関しましては、既存商品の適用拡大や新規部品の取込み、IoT活用による生産性の向上、新型電源の拡販など順調に進んでおります。
製品事業部関連ではカットオフ工法算定式を標準設計ソフトに搭載し、顧客への置換提案を開始しております。ネツレンアメリカでは第1次増設が終わり、引抜加工の量産を開始しております。さらに第2次増設も進めており、11月より焼入設備の導入を開始する予定です。
インドネシアにつきましても約3億円の増産投資も進んでおり、現在、量産立上げの準備を進めております。引き続き、新製品の開発と拡販、生産拠点への積極的な設備投資を進めてまいります。
第2の戦略である情報展開力の向上に関しましては、N-DX(※)体制の構築に進んでおり、ありたい姿に向けた課題を数件ピックアップし、実証実験を開始しております。後ほど、VR活用に関する事例をご説明いたします。
※N-DX:ネツレンデジタルトランスフォーメーション
26.第15次中期経営計画の進捗③
第3の戦略であるCO2削減に関しましては、省エネ・高効率稼働設備の更新、物流エネルギーの削減を進めており、太陽光発電システムの導入では、尼崎、神戸工場に続く、次期拠点の検討を開始し、投資金額の精査に入っております。
CO2排出量原単位も前期比で約5パーセントの削減を達成しており、2017年度からのCO2排出量原単位では、31パーセントの削減を達成しました。現在、これらの情報の全拠点への見える化を進めております。
第4の戦略であるグローバル人財の輩出に関しましては、海外技術支援の展開による技能人財のグローバル化、女性管理職候補者へのキャリア開発、さらに工場長クラスまで拡大させた各職位ごとの研修カリキュラムを充実させ、さらなる人財強化を行ってまいります。
27.第15次中期経営計画の進捗④
また、企業価値向上に向け積極的なPR・IR活動と社会貢献の取り組みを進めております。PR・IR関連につきましては、ご覧のような活動を展開しており、今後も積極的に情報開示を進めてまいります。
社会貢献関連につきましては、地域支援・人道支援など積極的に行っており、CSR活動のさらなる充実化を図っております。学術・研究関連につきましても、日本熱処理技術協会さまより、ご覧の賞を拝受するとともに、各種学会や協会に積極的に情報発信を進めております。今後も大学・学会・協会を通して、さらなる技術革新に努めてまいります。
28.第15次中期経営計画の進捗⑤ 目指すべきバランスシート
第15次中計および「NETUREN VISION 2030」に向けた目指すべきバランスシートでございます。ごらんのように、将来的な目標のもと、数値目標に向けた施策を展開しております。事業ポートフォリオを見直しを進めまして、次期中計策定時の指針をまとめております。
自己資本比率につきましては、第15次中計では70パーセント程度、「NETUREN VISION 2030」では60パーセントから65パーセント程度を目指してまいります。
29.第15次中期経営計画の進捗⑥ キャピタルアロケーション
こちらは、第15次中期経営計画のキャピタルアロケーションとなります。基本方針のもと、目指すべきバランスシートおよびROE8パーセントの実現、PBR(株価純資産倍率)1.0倍以上の早期実現に向けた施策を前倒しして進めるべく、2023年度から配当政策を変更し、DOE3.0パーセント以上とすることといたしました。これにより、配当につきましては41億円の予想となります。
また、資本政策の一環として、2022年度に引き続き、2023年5月より上限15億円の自己株式取得も進めてまいります。成長投資につきましては、2022年度計画案件が2023年度にずれておりますが、成長に向けた戦略投資は継続してまいります。現在進めております投資案件につきましては、後ほどの成長戦略にて、ご説明いたします。
30.第15次中期経営計画の進捗⑦ 株主還元の充実(1)
株主還元の充実としまして、配当の方針を変更しました。第16次中期経営計画で配当方針の変更を予定しておりましたが、早期にROE8パーセントおよびPBR1.0以上を達成するべく、前倒しして2023年度から展開してまいります。
これまでのDOE1.5パーセントを下限とし、連結配当性向40パーセント以上を目処とする方針から、自己資本配当率に一本化し、DOE3.0パーセント以上に変更いたしました。2024年3月期の中間配当より実施し、年間配当は48円になる見込みです。資本コストを意識した取り組みを継続的に行い、より一層の株主還元を進めてまいります。
31.第15次中期経営計画の進捗⑧ 株主還元の充実(2)
キャピタルアロケーションに基づいた株主還元のひとつとして、自己株式取得を行っております。経営環境の変化に対応した柔軟な資本政策の遂行、資本効率・ROEの向上および株主還元のさらなる拡充を目的として、昨年度2022年5月から12月までに15億円の取得を実施し、2023年2月に消却を行っております。さらに、本年度は2023年5月11日に上限15億円の取得の実施を公表し、合計30億円の取得を行ってまいります。
32.成長戦略① ITWのグローバル展開
最後に、成長戦略について一部ご紹介いたします。
まず、高強度ばね鋼線ITWのグローバル展開でございます。国内におきましては、赤穂工場がマザー工場として各拠点を支援するとともに、新規のお客さまへの納入を開始しました。新たな取り組みとしては、生産能力1.5倍の取り組みを開始し、各拠点に横展開をしてまいります。
中国におきましては、上海、重慶の2拠点で中国全土をカバーしております。最近では輸出も開始するなど、新たな取り組みを開始しています。また、新規EVメーカーさまからも引合いをいただくなど、さらなる成長を見込んでいます。
北米におきましては、第1次増設が完了し、量産を開始しております。また、第2次増設としまして、11月より熱処理設備を導入し、これらにより生産能力40パーセント増、太径ITWも対応可能となります。
欧州におきましては、アフター市場は減少しておりますが、新規のお客さまへの納入が順調に拡大しており、次期モデルの搭載に向けた拡販を進めております。また、さらに新たなお客さまからの引合いもいただいており、厳しい環境の中、徐々にではありますが市場拡大を進めております。そして、欧州での認知度向上に向け、2024年4月にはドイツで行われます国際ワイヤーショーへの出展を決定いたしました。
今後も、本製品はグローバルに成長していくと見込んでおり、次の拠点拡大に関しての議論を開始しております。
33.成長戦略② ボールねじ用軸材の加工設備増設
半導体製造装置、産業用ロボット、工作機械に使われるボールねじの需要は、2023年度に在庫調整のため一時的に落ち込みますが、2024年度より大幅に増加する見込みのため、平塚工場の生産設備増強を決定いたしました。
当社が販売するボールねじ用軸材は、直線性に優れ、円筒度精度の高さが特徴になります。投資額は約2億円でございまして、約2倍の生産能力アップを図ってまいります。本製品は、今後も需要は伸びていくと見ており、現在、製造体制の強化を進めております。
34.成長戦略③ フロントフォーク用インナーチューブの受注拡大
次も、製品事業部関連でございます。2輪車のフロントフォークに使われるインナーチューブの需要が拡大しております。2輪車用フロントフォークの剛性は性能や乗り味を決める重要なパーツになります。
海外メーカーに当社の熱処理技術をご評価いただき、主にオフロード用バイク向けに販売しておりましたが、最近のアドベンチャーバイク需要増に伴い、お客さまから増産受注をいただきました。さらなる引き合いもいただいており、2024年からの能力増強投資として約6億円の設備投資を計画しております。
35.成長戦略④ N-DXの取り組み
N-DXの取り組みの一環として、バーチャルリアリティを活用した業務の効率化を進めております。ヘッドマウントディスプレーを着用し、両手にコントローラーを持つことによって、実際の工場を上下左右360度の仮想空間で移動しながら、生産工程、品質重要ポイントや生産設備の危険個所などを効率的に学ぶ事ができます。
現在、アバターで参加の工場見学会や、生産技術会議など構想中でございます。バーチャルリアリティの活用を含め、さらなるN-DXの推進を進めてまいります。
36.新商品・新規事業の売上高推移
最後に、新商品・新規事業の売上高推移でございます。2022年度新商品売上高は当社基準での新商品登録期間満了に伴う入れ変えがあり、89億円となりました。
2023年度は海外ITW関連に加え、海外受託の拡大、カットオフ工法、プレグラウトPC鋼棒、建設機械関連製品、新型高周波電源等の売上が伸びると見込んでおり、新商品売上高比率は103億円、比率は16パーセントを見込んでおります。
これからも、グループ内のリソースを融合し、新商品・新工法の開発と市場投入に向け、研究開発機能を強化するとともに、事業開発・経営企画機能を充実させ、マーケティング活動をスピード感をもって推進してまいります。
NETUREN VISION 2030
以上、2022年度の決算状況についてご説明いたしました。2022年度は対前期比増収減益となりました。2023年度は、売上高はネツレングループ過去最高を達成できる見込みです。これは、世界的な原材料価格高騰分の販価改定分と為替影響によるものと認識しており、収益拡大につながるものではないと考えております。
国内では、材料価格値上げ圧力や販売価格据置圧力の中、収益確保に向け、開発中の環境特性に優れた新商品、新工法、新技術を市場ニーズにマッチングさせ、さらに従来の当社事業モデルに囚われない、新しいかたちの事業モデルを作り上げ、付加価値を高めた製品、技術を市場に投入する動きを加速させてまいります。
また、海外グループ会社は順調に売上高を拡大しており、収益の拡大が見込めます。したがいまして、今後も海外グループ会社を中心とした増産投資、拠点拡大を進めてまいります。そのためにも、さまざまな外部要因に左右されない、しっかりとした事業基盤は不可欠となりますので、その点は引き続き、地道に整備してまいります。
今回、時期を空けずに配当政策の見直しを行いました。また、引き続き自己株式の取得も進めてまいります。15次中計のROE5パーセント以上の達成は厳しい状況ですが、ネツレンビジョンの目標でありますROE8パーセントに向け、資本政策、成長戦略をしっかりと精査し、着実に実行し、企業価値向上に向け、事業運営に邁進してまいる所存でございます。
今後とも、ネツレンに対しまして、ご支援、ご指導のほど、よろしくお願い申し上げます。本日は誠にありがとうございました。
ネツレンのご紹介①
当社は1946年、わが国で初めて誘導加熱、いわゆるIH技術の事業化・工業化に成功した企業でございます。創業以来蓄積されたIH技術を中核とし、金属製品の製造と受託加工装置販売の事業を展開しております。資本金は64億円、従業員数は連結で1,596名でございまして、東証プライム市場に上場させていただいております。
ネツレンのご紹介②
国内ネットワークとしましては、当社を含め、ネツレングループとして9社25拠点です。当社の国内ネットワークは、北はいわきから南は岡山までの12拠点、グループ会社としては、北は山形から南は北九州までの9社25拠点です。
海外ネットワークとしましては、米国、中国、韓国、インドネシア、チェコ、メキシコの6か国に持分法適用会社を含め16拠点を配し、事業を展開しております。韓国に2拠点、中国に6拠点、東南アジアに2拠点、北米に4拠点、中米1拠点、欧州1拠点となっており、当社のIH技術をグローバルに展開する体制を取っています。
ネツレンのご紹介③
事業内容としましては、このIH技術を核とした製品事業部関連事業としまして、建築・土木でお使いいただいているPC鋼棒関連製品、主に自動車のサスペンションばね用材料としての高強度ばね鋼線ITW、さらに一貫加工部品として、自動車用ステアリング部品である中空ラックバー、二輪部品であるフロントフォークインナーチューブ、建設機械用の旋回輪がございます。
IH事業部関連事業としましては、自動車、建設機械、産業・工作機械における部品の熱処理受託加工、さらに高周波焼入設備をはじめとした誘導加熱装置の設計・製造・販売を行っております。
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