今週の新興市場は続落。米連邦公開市場委員会(FOMC)では市場予想通りに政策金利が据え置かれたが、年内の追加利上げの可能性が残ったほか、2024年の利下げ幅予想も前回の1.0ポイントから0.5ポイントに圧縮された。タカ派な結果を受け、米10年債利回りが連日で2007年以来の高値を更新するなか、ハイテク株を中心に米国株が下落。21-22日の金融政策決定会合を前に日本銀行によるマイナス金利早期解除の思惑の根強さから、日本の10年債利回りも9年8カ月ぶりの水準を更新。日米の長期金利上昇と米ハイテク株安を嫌気する形で新興市場は続落した。ただ、日銀が現行の金融緩和政策を維持したこともあり、週末には自律反発狙いの買いが入った。今週の騰落率は、日経平均が-3.37%だったのに対し、東証グロース市場指数は-1.56%、マザーズ指数は-1.80%だった。
個別では、AI開発・運用などを手掛けるworkhouse(東京都江東区)から一部事業を譲受すると発表したグラッドキューブ<9561>のほか、新たな生産設備として大型低圧鋳造設備の導入を完了したJMC<5704>、業績予想を上方修正したタスキ<2987>などが週間上昇率ランキングに入った。一方、業績予想を下方修正したメドレックス<4586>が週間下落率トップとなり、オンコリス<4588>やGNI<2160>などその他のバイオ関連でも下落する銘柄が見られた。ポート<7047>は公募増資による希薄化や需給悪化が嫌気された。
■株価調整進展&業績好調に注目、IPOは5社
来週の新興市場は下値固めの展開か。米長期金利は21日にかけて4.49%まで上昇し、高値を更新した一方、今週末22日には4.43%へと低下した。米FOMCでは今後の経済指標を確認しつつ、追加利上げの是非を慎重に判断するというこれまでの金融政策運営姿勢が堅持されている。市場は来週発表される米経済指標を見守ることになりそうだ。
週間の米新規失業保険申請件数は引き続き相対的な低水準を維持し、株式の売り材料となる可能性がある。一方、米8月個人消費支出(PCE)は堅調な数字が見込まれているものの、ガソリン価格の高騰が大きな要因とみられ、これを除けば、穏やかな増加基調とみる。また、米連邦準備制度理事会(FRB)がインフレ指標として重視する米8月コアPCE価格指数は引き続き鈍化基調が見込まれる。8月新築住宅販売戸数や9月消費者信頼感指数などその他の米経済指標も弱めの数字が多そうだ。
これらの経済指標を受けて米長期金利が上昇一服感を強めれば、追随して日本の長期国債利回りもやや軟化の兆しを見せる可能性がある。日米長期金利の先高観が和らげば、新興株には押し目買いが入りやすくなるだろう。マザーズ指数は今週一時1月4日以来の年初来安値水準まで大きく下落していることで、テクニカル的にも自律反発狙いの買いが続きやすい。新興市場は下値固めの動きに入ると期待したい。
こうしたなか、株価調整が進んでいて、かつ業績が拡大基調にある銘柄が注目されやすくなると考える。個別では24年3月期業績・配当予想を上方修正したパーキンソン病専門の老人ホーム等を運営するサンウェルズ<9229>やクラウド活用の会員制転職サービス「ビズリーチ」を運営するビジョナル<4194>などに注目したい。
一方、来週は東証グロースとスタンダード案件を含め、合計5社の新規株式公開(IPO)が予定されている。吸収金額の大きい銘柄が多いため、初値水準が気掛かりであるほか、既存の新興株にも需給悪化の点から注意が必要だろう。
<FA>
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