―成長路線復帰へ、雌伏期間を経て一気に業績を飛躍させた銘柄をピックアップ―
上方修正ラッシュとなった24年3月期の上期決算発表シーズンが終了した。コロナ禍からの経済再開(リオープン)や円安などを追い風に好調なスタートを切った第1四半期(4-6月)に続いて、上期も好決算を示す企業が多く、通期業績見通しを増額する企業が相次いだ。1年の折り返しにあたる4-9月期での業績予想の引き上げは先行きに対する自信の表れであり、一段の業績上振れや株主還元の強化が期待できる有力株としてマーケットから注目を集める。
今回は足もとの業績が絶好調な上方修正企業のうち、10期以上ぶりに過去最高益を塗り替える見通しになった“大復活”銘柄に注目。長い低迷や雌伏期間を経て、新たな成長ステージを走り出す企業を追った。
●上方修正ラッシュの一方で下方修正も目立つ
「株探」集計では、10月1日から11月17日の期間に、24年3月期通期の経常利益または税引き前利益予想を引き上げた企業は531社に上った。足もとの業績好調に加え、第1四半期時点では世界景気後退など先行きに対する警戒感が強く、通期計画に対する進捗率が高水準でも見通しに慎重姿勢をみせていた企業が多かったこともあり、およそ4社に1社が上方修正した格好だ。
業種別に見ると、輸送用機器セクターの上振れが目立つ。自動車生産の回復や販売単価の上昇に加え、為替の円安進行も強力な追い風となり、輸送用機器の半数以上が上方修正に踏み切った。また、コロナ禍からの脱却が進み業績回復が鮮明な鉄道会社、値上げ効果で採算が改善している食品メーカーや電力会社も増額修正が顕著にみられる。
一方、業績見通しを下方修正した企業も多く、17日までに278社が通期予想を引き下げた。中国経済の低迷が逆風となる化学や電気機器をはじめとする製造業、物価高による物量減少が響く運送会社などは苦戦を強いられている。
ここから紹介する最高益更新の間隔期数が大きい企業は、利益成長が長期停滞を脱した企業といえ、成長路線への回帰が期待される。利益確定売りに押されている銘柄もあるが、押し目買い候補としてマークしたい。以下では、10月1日から11月17日に24年3月期通期の経常利益予想を上方修正した531社の中から、上方修正によって10年以上ぶりに最高益を更新する見通しとなった5銘柄を紹介していく。
●フタバはトヨタの新車生産回復で業績急改善
フタバ産業 <7241> [東証P]はマフラーなど自動車用プレス部品のトップメーカー。筆頭株主で主要取引先でもあるトヨタ自動車 <7203> [東証P]の生産回復を背景に足もとの業績は絶好調だ。4-9月期は国内や北米を中心に部品販売が拡大したうえ、合理化改善や円安効果なども寄与し、売上高、経常利益ともに上期の過去最高を大幅に塗り替えた。業績好調に伴い、通期の経常利益予想を実に31期ぶりの最高益となる140億円(従来予想は100億円)へ上方修正するとともに、配当も前期比倍増の30円(従来計画は18円)に引き上げた。上期実績の修正した通期計画に対する進捗率は68.1%と高水準で、一段の上振れに含みを持たせている。指標面では予想PER7倍前後、PBR0.6倍台と割安感が強く、見直し余地は大きいとみられる。
●広済堂HDは稼ぎ柱の葬祭部門が高成長へ
広済堂ホールディングス <7868> [東証P]は印刷、 葬祭、人材を3本柱とするが、利益の大半は東京都内に6カ所の葬儀場併設火葬場を運営する葬祭部門が稼ぎ出している。全国でも突出した人口と火葬件数がある東京23区における火葬占有率は70%に上り、火葬場の新規参入も困難なため、持続的かつ安定成長が見込める事業だ。中期経営計画では式場を2倍に増やし、26年3月期に経常利益84億9000万円(23年3月期比倍増)を目指す。足もと4-9月期は新式場の増設で利用料が増加したうえ、新型コロナウイルスの5類移行に伴う参列者の回復によって斎場で提供する菓子・飲料の販売も伸びた。業績好調に伴い、通期利益見通しを24期ぶりの最高益に上方修正したほか、11月末に1株から5株へ株式分割することも明らかにした。需給妙味も高まるなか、株価は青空圏で推移している。
●日ギアは期初の減益予想から最高益見通しへ大幅増額修正
日本ギア工業 <6356> [東証S]はバルブアクチュエータ(バルブ開閉装置)、ミキサー、スクリュージャッキなどを展開する歯車製品の老舗メーカー。なかでもバルブアクチュエータは国内原子力発電所のシェア9割以上を握る主力品だ。前期業績は値上げ効果や利益率の高い工事事業の伸長などによって、経常利益9億9900万円(前の期比8.1倍)と急回復をみせた。今期は期初段階で経常利益が6億8000万円に落ち込む予想だったが、好調な上期業績を受けて15億円(前期比50.1%増)へ12期ぶりの最高益見通しに大幅上方修正している。補修用部品の販売や工事事業の好調な推移に加え、海外の原発向け大型案件が継続することを織り込んだ。予想PER7倍近辺、PBR0.6倍台と割安な指標のほか、1株400円台と低位にある株価も注目ポイントだ。
●ヤマックスは業績、株価ともに大復活もまだ割安
ヤマックス <5285> [東証S]は熊本県に本社を構える九州最大の土木用・建築用コンクリート二次製品メーカー。24年3月期は高騰する原材料や資材・経費の販売価格への転嫁が進んでいるほか、土木用高付加価値製品の販売や徹底した工場操業度の平準化によるコストダウンを通じて、売上高営業利益率が7.39%(前期は4.62%)と収益力が大幅に高まる計画だ。上期決算発表時には通期の経常利益予想を従来計画の10億円から15億円(前期比80.6%増)へ上方修正し、31期ぶりに最高益を塗り替える見通しを示した。あわせて期末一括配当も前回の20円から30円へ大幅増額修正したことも評価され、株価は約26年ぶりの高値圏に急浮上している。予想PERは8倍台と依然として割安で更なる上値期待は大きい。
●富士通系SIの大興電子は32期ぶり最高益奪還へ
大興電子通信 <8023> [東証S]は富士通系のシステムインテグレータ。4-9月期は半導体不足による納期遅延の解消や大型案件の獲得を背景に情報通信機器部門が拡大したほか、インボイス制度対応のソフトウェア案件が積み上がるなど収益性の高いソリューションサービス部門も大きく伸びた。好調な業績を反映する形で、24年3月期の経常利益予想を従来の17億2000万円から28億7000万円へ上方修正した。一気に32期ぶりとなる最高益更新へ復活を遂げる見通しだ。あわせて、30万株(発行済み株式数の2.27%)または2億1000万円を上限とする自社株買いの実施も発表。株価は約3年8ヵ月ぶりの高値圏を走る展開となっているが、予想PERは6倍台と相変わらずの低水準にある。また、年間配当は20円と配当性向13.8%に過ぎず、株主還元の更なる拡充も期待される。
株探ニュース
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