日本ヒューム<5262>は総合コンクリートメーカーである。日本におけるヒューム管の歴史とともに始まり、我が国におけるヒューム管の標準仕様を生み出し全国普及につなげ、その後事業領域を拡大し、コンクリートパイル(杭)、下水道管路の耐震化工法や管渠(かんきょ)更生工事工法の開発、コンクリート二次製品の設計・製造・施工といった全方位のワンストップサービスを提供している。また、建設市場の人手不足を補うプレキャスト(成形済)製品、社会インフラの老朽化に対応する製品・施工方法の開発、ICTを活用した取り組み(i-Construction)等の技術開発も推進している。
1. 2023年3月期第2四半期の業績概要
2023年3月期第2四半期の連結業績は、売上高で前年同期比5.2%増の14,861百万円、営業利益で同28.5%減の460百万円、経常利益で同0.8%増の1,408百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益で同4.5%増の1,187百万円となった。売上高は、政府が防災・減災、国土強靭化対策を推進するなかで公共投資が底堅く推移したほか、民間の設備投資も回復傾向となり好調に推移した。特に、引き続き都市防災関連のソリューションに対する引き合いが好調であった。一方で、営業利益は前年同期を下回った。原材料価格の高騰を販売価格へ転嫁するなど利益確保に向けた努力を行ったものの、想定を超える原材料・エネルギー資源価格の高騰が響いた。また、受注競争が激化したことも下押し要因となった。経常利益と親会社株主に帰属する四半期純利益については、持分法投資利益の影響等により予想値(2022年5月発表)を上回って着地した。
2. 2023年3月期の業績見通し
2023年3月期の連結業績見通しは、売上高32,000百万円(前期比8.5%増)、営業利益1,600百万円(同10.3%増)、経常利益2,500百万円(同1.1%減)、親会社株主に帰属する当期純利益1,800万円(同15.7%減)を見込んでいる。2021年3月期から減収・営業減益傾向であったが、増収・営業増益に転換する計画である。鋼材価格がもう一段値上がる可能性はあるものの、売価への転嫁も継続的にしており、下期にかけてその効果が業績に寄与することが想定されている。都市防災製品に関する引き合いは強く、基礎事業では公共構造物や物流倉庫関連、下水道関連事業では引き続き防災・減災関連の高付加価値製品の販売に注力することによって業績拡大を見込んでいる。計画の進捗に関しては売上・営業利益が若干計画を下回ったものの、ほぼ計画どおりに進行している。昨年開発しラインナップを拡充した高付加価値製品である合成鋼管が業績に寄与し始めていることに加えて、売価引上げ交渉の効果が下期にかけて発現してくる点も通期業績予想の達成に向けたプラス材料になると弊社は見ている。
3. 技術開発戦略
地球温暖化、脱炭素社会、デジタルトランスフォーメーション(以下、DX)など、社会・経済環境は大きく変化してきている。同社は、これらの社会課題を解決すべく、これまで培ってきたプレキャストコンクリート製品(以下、プレキャスト製品)の技術開発に取り組んでいる。同社においては「技術開発の推進により企業価値向上を目指す」という考えが浸透していることから、基礎研究の成果は、応用研究・開発を経て技術として成長し、生産そして営業・販売とつなげていく。昨年開発しラインナップを拡充した「合成鋼管」が業績に寄与し始めるなど既にその効果は表れている。同社は2024期3月期(2023年度)を最終年度とする3ヶ年の中期経営計画「21-23計画」を進めている。このなかで、成長に向けた戦略の1つとして技術開発の強化を挙げている。具体的には1)「環境問題、社会問題を踏まえた製品開発、技術開発の強化を図る(研究開発投資の強化)」、2)「デジタル化に対応する設計技術のプラットフォームの構築、サービスの向上に取り組む」、3)「生産の更なる効率化、デジタル化による品質管理の合理化を推進するため、生産技術、施工技術開発の強化を図る(設備投資の強化)」である。具体的には、都市型浸水対策に向けた縦型貯留槽「ウェルマン貯留槽」の発表、デジタル化・施工管理の生産性向上のため、ICT施工管理システム「Pile-ViMSys(R)」の開発などに取り組んでいる。中期経営計画のもとで技術開発は順調に実績を積み重ねてきている状況であり、今後の業績拡大に寄与することが期待される。
■Key Points
・2023年3月期第2四半期は、需要旺盛も原材料価格の上昇等が響き、28.5%営業減益
・2023年3月期下期に向けて売価引上げ交渉の効果が業績に寄与する見通し。加えて、基礎事業と下水道関連事業の堅調な推移により、前期比8.5%増収・10.3%営業増益を見込む
・防災・減災、社会インフラ老朽化対策、再生可能エネルギーや脱炭素への取り組みなど社会の変化に対応した取り組みを加速。中長期的に持続可能な成長に期待
(執筆:フィスコ客員アナリスト 清水陽一郎)
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