日経平均;29359.43;+232.71TOPIX;2094.72;+11.63
[後場の投資戦略]
前日に発表された米4月卸売物価指数(PPI)は前年比+2.3%と2月(+2.7%)から鈍化し、2021年初旬以来の低い伸びとなり、市場予想(+2.5%)も下回った。前月比では+0.2%と上昇したが、こちらも市場予想(+0.3%)を下振れた。食品・エネルギーを除いたコア指数も前年比+3.2%と2月(+3.4%)から鈍化し、市場予想(+3.3%)を下回った。前月比では+0.2%と市場予想に一致。
米4月消費者物価指数(CPI)に続き、先行性の高い米PPIでもインフレの鈍化基調が確認されたことは安心感につながった。一方、前日に発表された米週次新規失業保険申請件数は前週比2万2000件増の26万4000件と市場予想(24万5000件)を上回った。堅調だった米労働市場にも徐々に軟化の兆しが出ているとみられ、米PPIの結果と合わせて米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ継続への警戒感は一段と薄れたといえよう。
金利先高観の後退で米金利の低下が続くなか、日米ともに株式は強含み、日経平均は
年初来高値を更新している。
しかし、前日は米地銀のパックウェストの預金減少を受けて金融不安が再燃し、ダウ平均はまたもインフレ鈍化を好感しきれずに下落した。また、米国ではマネー・マーケット・ファンド(MMF)の資産残高が2週連続で過去最高を更新するなど、銀行預金から資金を移す動きが続いており、地銀の経営不安はくすぶっている。それなりの規模をもつ銀行がすでに3行破綻しているが、さすがに4行目も意識されはじめると警戒感が高まろう。
本日の東京市場では日経平均や東証株価指数(TOPIX)は為替の円安も寄与して上昇しているが、新興株は売り優勢でマザーズ指数は下落している。インフレ鈍化と金利低下が最も追い風になりそうなところが軟調に推移しているあたり不可解な動きといえ、個人投資家がそれだけ先行きを警戒している証左といえよう。
加えて、米国では債務上限問題もくすぶっている。同問題を巡っては12日に予定されていたバイデン大統領とマッカーシー下院議長の会談が来週に延期されると伝わった。米与野党の協議に目立った進展はみられず、早ければ6月1日にも米政府の資金繰りが行き詰まる可能性も指摘されている。過去にも同様の問題は何度もあったことから、「結局、最終的には解決するから大丈夫だろう」というのが大方の考えだろう。
ただ、誰もがそう思い込んでいるからこそ、偶発的な事由の重なりによるリスクを考えておくべきだろう。過去の経験則からしても、仮に最終的に解決するにしても、問題の最終局面では事態の混乱を警戒してマーケットは下落する傾向にあることに留意しておきたい。
また、改めて本日の5月限オプション取引の特別清算指数(SQ)算出を境に需給が転換するリスクについても思い出しておきたい。なお、本日は東レ<3402>、AGC<5201>、住友電工<5802>、NTT<9432>、オリンパス<7733>、資生堂<4911>、クボタ<6326>、アサヒグループ<2502>、ヤクルト本社<2267>などの決算が予定されている。
(仲村幸浩)
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