1. 市場環境
2025年には国民の3人に1人が65歳以上、5人に1人が75歳以上という超高齢社会、いわゆる「2025年問題」を迎えることもあり、医療費全体の抑制に向けた動きが今後さらに進む見通しである。また、大手薬局によるM&Aの加速や、ドラッグストアの調剤併設店舗の増加により収益性の格差が拡大する環境のなかで、中小薬局は厳しい経営を強いられる状況がさらに継続すると予想される。このため、後発医薬品の使用促進や残薬管理の強化など、薬局の業務効率向上が一層求められるとともに、かかりつけ薬剤師・健康サポート薬局としての機能が求められている。また、厚生労働省により一定条件下で電子処方箋が解禁される一方、クリニックにおける電子カルテの普及率が35%を超えるなど、医療分野におけるICT化が進んでいる。このため、既に様々な地域でPHR(Personal Health Record:個人医療情報)、EHR(Electronic Health Record:医療情報の連携)の実証事業に参画しているEMシステムズ<4820>の役割はこれまで以上に重要であると考えられる。
2. 強み
同社の強みの1つは、ストック型ビジネスモデルを確立したことである。薬局向けのレセプトコンピュータが普及し始めた初期段階においてハードのコストが高いオフコンではなく、安価なパソコンをベースとした。オフコンのシステム導入に比べ導入コストが低かったことが優位に働き、薬局市場で30%超の高いシェアを確保した。加えて、業界内でいち早く売切り制から初期導入費を抑えた従量課金制度を採用したため、同業他社製品に比べ価格競争力が高い。さらに、同業他社が販売代理店制を採っているのに対して、同社は直販が主体の製販一体体制であることもユーザーサポート力の高さを評価される要因として働いている。また、同社の安全性・セキュリティレベルの高いデータセンターにデータを蓄積できる仕組みになっていることも強みとして挙げられる。
医科システムに関しては、後発であるため市場シェアは現時点で2.9%と低いものの、その弱点を逆手に取り、同社オリジナルのMRN(Medical Recepty NEXT)は同業他社製品以上の機能を保有する設計になっている。一方、連結子会社化したユニコン製の「ユニメディカル」は操作性に優れるという特徴があり、これらを合わせた品ぞろえという点で診療所・クリニックのあらゆる医師のニーズに対応できるようになっている点が強みである。
なお、2019年3月期は医療業界での認知度を上げ、診療所向け診察支援システム「MAPs for CLINIC」の拡販に注力する。医療システムの導入と合わせ調剤・介護のシステムが関連して導入されることを狙う。
なお、同社では薬局及び医科のデータをデータセンターに保有していることにより、ほぼ現状の設備のままEHRが可能である。今後の医療介護連携に生かすことができるほか、厚生労働省がガイドラインを打ち出し、実施解禁となった電子処方箋への対応も、同業他社よりも少ない設備投資で可能と考えられる。また、厚生労働省により一定条件下で電子処方箋が解禁される一方、クリニックにおける電子カルテの普及率が35%を超え、既に様々な地域でPHR・EHRの実証事業に参画している同社の役割は重要である。
3. 競合
調剤システムの競合企業はPHCホールディングス(株)、(株)三菱電機ビジネスシステムなどであり、電子薬歴システムでは、(株)グッドサイクルシステム、ハイブリッジ(株)、(株)ユニケソフトウェアリサーチなどである。
医科システムにおいては、電子カルテではPHCホールディングス(株)、(株)ラボテック、ビー・エム・エル、(株)ダイナミクス、富士通<6702>、日立メディカルコンピュータ(株)、(株)ユヤマなどが、レセコンではPHCホールディングス(株)、日本医師会総合政策研究機構、日立ヘルスケアシステムズ(株)などが競合である。
介護システムの競合企業としては、(株)ワイズマン、エヌ・デーソフトウェア<3794>、エス・エム・エス<2175>の介護システム開発企業のほか、富士通、(株)日立システムズ、内田洋行<8057>など大手企業が挙げられるが、実際バッティングするのは(株)ワイズマン、エヌ・デーソフトウェア、エス・エム・エスの3社のケースが大半である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 内山崇行)
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