―観光促進だけでなく防災面でも重要な役割、需要拡大で関連銘柄に商機―
さまざまな情報をタイムリーに多言語で発信できる「デジタルサイネージ」への関心が一段と高まりそうだ。日本政府観光局(JNTO)が21日に公表した7月の訪日外客数(推計値)は単月として2カ月連続で過去最高を記録しており、インバウンド(訪日外国人)対応での需要が更に見込まれる。観光促進などのニーズだけでなく、台風や地震など災害が発生した際にも重要な役割を果たすことから関連銘柄に目を向けてみたい。
●紙媒体にはない大きなメリット
デジタルサイネージとは、ディスプレーやタブレット端末などの電子表示媒体を活用した情報発信システムの総称で、電子看板や電子掲示板とも呼ばれている。従来の看板や紙媒体のポスター、チラシなどに比べて鮮やかで人の目につきやすく、一度設置すればタイムリーに情報を発信することが可能。動画や音楽も扱えることから主に広告宣伝や情報案内、空間演出で利用され、公共交通施設をはじめ商業施設やショッピングモール、病院、薬局、銀行、大学など屋内・屋外を問わずあらゆる場所に設置されている。
また、デジタルサイネージは情報の伝達と効果的な警戒を促進する防災対策でも有効だ。日頃から本来の配信内容に加えて防災関連の啓発を行うことで意識づけができるほか、災害発生時には被災地域や避難情報、交通状況などの重要な情報を即座に画面に表示することで、取るべき正しい行動を促すことが可能になる。活用場面の広がりとともに、関連銘柄の商機が拡大しそうだ。
●ペイクラウド、TBグループなど注目
TBグループ <6775> [東証S]は屋外電子看板、LED照明、電子マネー及びストアオートメーション(電子レジスターやPOSなど)事業を展開している。直近では屋外仕様の小型LEDサイネージの新製品「スーパーエコリアyay!(イェイ!)」を発表。シリーズ初となる音声出力機能「キャッチオン(音)」を搭載していることからコンテンツにあわせて音声の割り当てが可能になり、視覚だけでなく聴覚からも効果的に情報が発信できるという。
楽天グループ <4755> [東証P]傘下の楽天モバイルは法人顧客向けのサービスとして、7月31日からインターネット回線を利用することでコンテンツの自動アップデート、人工知能(AI)やセンサーによる近隣環境の把握と分析ができるデジタルサイネージの提供を開始。広告を表示しながらAIカメラの画像認証機能や物体検知のセンサーによって目の前のユーザーの人物属性や注視時間を分析し、ニーズにあったコンテンツを配信することで、より効率的で効果的な広告配信が実現できるとしている。
ペイクラウドホールディングス <4015> [東証G]傘下のクラウドポイントは、空間演出で培ったクリエイティブ力を背景に、デジタルサイネージの企画設計・設置・システム開発・コンテンツ制作・メンテナンスに至るまで、オリジナルの映像デバイスを組み合わせてワンストップでサービスを提供。直近では、商業空間での運用に特化した新製品「更新かんたんサイネージTouchLive」と「更新かんたんサイネージPromoPost」の販売を開始した。
このほかでは、LEDディスプレー(デジタルサイネージ)システムソリューションで実績を持つヒビノ <2469> [東証S]、大型デジタルサイネージを手掛けるエムケー精工 <5906> [東証S]、米社のサイネージ専用プレーヤーを販売するジャパンマテリアル <6055> [東証P]、グループ会社が超薄型サイネージなどを展開するミナトホールディングス <6862> [東証S]、販売促進・インテリア内装向けデジタルサイネージを扱うビーアンドピー <7804> [東証S]、トータルサイネージソリューションを提供するアビックス <7836> [東証S]、多数のラインアップから提案するU-NEXT HOLDINGS <9418> [東証P]が関連銘柄として挙げられる。
●市場拡大を支える広告関連の企業群
CARTA HOLDINGS <3688> [東証P]が昨年12月に公表したデジタルインファクト(東京都文京区)とのデジタルサイネージ広告市場に関する調査によると、市場規模(広告主によるデジタルサイネージ上で表示される広告媒体に対する年間支出総額)は2024年が934億円(23年は推計801億円)、27年には1396億円まで拡大すると予想されている。
広告関連では、INFORICH <9338> [東証G]がこのほど、モバイルバッテリーのシェアリングサービス「ChargeSPOT」に搭載されたデジタルサイネージの広告活用の拡大を見込み、新たにSSP(オンラインの広告枠を管理し、広告主に自動で販売するためのプラットフォーム)の開発を行ったと発表。これにより、広告出稿者は時間単位や日単位で広告枠の確保が可能となり、「ChargeSPOT」を媒介した効率的な広告運用が実現できるという。
GENOVA <9341> [東証G]はサイバーエージェント <4751> [東証P]や大日本印刷 <7912> [東証P]らが運営するエレベーターサイネージと提携し、9月をメドにエレベーター内に設置してあるデジタルサイネージで医療系動画コンテンツ「Medical DOC News」の配信を開始する予定。7月にはサイバー及びRIZAPグループ <2928> [札証A]とサイネージ広告配信サービスの提供に向けた取り組みを開始している。
サイバー・バズ <7069> [東証G]は1日、自社が運営する人気ブランド商品や話題の新商品などが試せるモニターサービス「Ripre」で、広告主向けにRipreに登録しているTikTokクリエイターの投稿クリエイティブを店頭のデジタルサイネージで放映する「Ripre×デジタルサイネージメニュー」の提供を開始すると発表。店頭で消費者目線のSNSコンテンツに接触させることで購買意欲を高めたい考えだ。
これ以外では、官公庁や大型商業施設向けのデジタルサイネージで行政・地域情報を発信するサイネックス <2376> [東証S]、AIサイネージサービスを扱うニューラルグループ <4056> [東証G]、クラウドベースのデジタルサイネージ基幹システムを手掛けるビーマップ <4316> [東証G]、デジタルOOH(交通広告、屋外広告及びリテールショップなどに設置されたデジタルサイネージを活用した広告媒体)向け広告配信サービス「Logicad DOOH」を展開するSMN <6185> [東証S]、デジタル屋外広告プラットフォーム「GENIEE DOOH」を提供するジーニー <6562> [東証G]などにも注目したい。
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