5. ソリューションサービス部門
2021年3月期におけるソリューションサービス部門の売上高は、936百万円と全社売上の19.9%を占めている。主な取扱プロダクト・サービスは、1)自社開発ソフトウェアRPAツール(EzAvater、RPA:Robotic Process Automation)、2)多言語リアルタイム映像通訳サービス(みえる通訳)、3)クラウド管理型マネージドVNPサービス(MORA VPN Zero-Con)、4)法人向けインターネット接続サービス(MORA光)、5)高速モバイルデータ通信サービス(MORAモバイル)、6)Web会議ツール(MVC、Zoom)、7)人工知能(AI)と拡張現実(AR)を活用した映像による非接触型のリモートサポートサービス(TechSee)、8)孫会社(株)IGLOOOによる「旅マエ・旅ナカ・旅アト」関連事業、9)連結子会社クレシード(株)による情報システム業務支援・代行事業である。
同部門の中核を成してきたのが、(株)テリロジーサービスウェア(2017年12月に買収したノジマ<7419>グループのアイ・ティー・エックス(株)の法人向けICTサービス事業を商号変更)であり、同社はこのM&A戦略で、新たな事業ドメインと従来手薄であった中堅・中小規模のエンタープライズ顧客基盤や全国に店舗展開しているチェーン店、業務店等のリテール顧客基盤を獲得している。この点、働き方改革や業務効率化の実現に向けて注目されるRPAツール(EzAvater)やインバウンド対応に活用できる多言語リアルタイム映像通訳サービス(みえる通訳)など、中堅・中小規模の顧客層にもマッチしたプロダクトが新たにラインナップされている点は注目できるだろう。
「EzAvater」は、究極的にカンタン(誰にでもロボット=定型業務自動化のシナリオが作成できる直感的な操作性)、止まりづらい(システムのスピードに合わせてロボットが作動、例外処理をテンプレート化し安定稼働を実現)、アプリを問わない(画像認識技術を採用することでWindows上の動作であればアプリを問わず自動化可能)、スモールスタート可能(PC1台から導入可能)、といった特長を持っている。これらの特長により「EzAvater」は、IT専門部署でなければロボットの作成が困難で導入コストやメンテナンスの負担も大きいという多くのRPAツールが持つ弱点を克服し、各部署において現場のニーズに沿ってロボットを作成し、日々の運営を行うといった活用方法を可能にしたソフトウェアである。実際、「EzAvater」はアイティクラウド(株)が運営する法人向けIT製品・クラウドサービスのリアルユーザーが集まる国内最大級のレビューサイト「ITreview」で高評価を多く集め、「ITreview Grid Award 2021 Winter」において「High Performer」を受賞している。
また、「EzAvater」の販売に関しては、幅広いユーザー層に浸透させたいとの狙いからパートナリング戦略を積極活用(ゴールドパートナー制を導入)しており、2019年中に(株)ネクス・ソリューションズ、パナソニックソリューションテクノロジー(株)、(株)レゾナゲート、(株)山崎文栄堂、(株)ネクステージ、ウチダエスコ<4699>、2020年以降も(株)日立システムズ、シーイーシー<9692>、ペブルコーポレーション(株)と販売代理店契約を締結し、販売チャネルの拡大を図っている。
「みえる通訳」は、タブレット・スマートフォンを利用した映像通訳サービスで、いつでもどこでもワンタッチで、通話オペレーターが接客等をサポートするもので、英語、中国語、韓国語、タイ語、ロシア語、ポルトガル語、スペイン語、ベトナム語、フランス語、タガログ語、インドネシア語、ネパール語、ヒンディー語、日本手話の通訳に対応している。利用料は定額制(9時−21時対応のライトプランが15千円/月、24時間対応のスタンダードプランが25千円/月)で医療通訳オプション(英語、中国語、韓国語、ポルトガル語、スペイン語、ベトナム語のみ、35千円/月)も用意している。
2021年5月時点における「みえる通訳」の導入先は、自治体~品川区、飯塚市、深谷市、東近江市、流山市、長岡市、稲沢市など31件、医療機関~東京都福祉保健局、大阪医科薬科大学附属病院、大阪市立総合医療センターなど11件、その他~(株)横浜銀行(全店導入)、東京都つながり創生財団、東近江市社会福祉協議会など18件となっている。加えて、5月31日の同社リリースによると、NTT東日本と連携し、(株)エイジェックグループが受託する自治体新型コロナウイルスワクチン集団接種会場(東京都、神奈川県、栃木県、福島県の中の5つの自治体、16の集団接種会場)に導入されることが開示されている。
テリロジーサービスウェアは、2020年5月にインバウンドメディア事業を運営するIGLOOOを子会社化した。IGLOOOは、欧米豪向け訪日旅行インターネットメディア「VOYAPON」の運営を核に海外向けコンテンツ制作及びプロモーション事業という「旅マエ・旅アト」型サービスを手掛ける企業であり、これまで主に訪日外国人観光客を対象にした「旅ナカ」領域で多言語リアルタイム映像通訳サービス「みえる通訳」を提供し業界最大手のポジションを確立してきた同社との補完性・相乗性は高い。ウィズコロナ時代においても「観光立国日本」を目指した国策が何らかの形で再起動されることは間違いないと思われるだけに、厳しい局面において逆張り的に攻めの一手を打った同社の決断は評価に値する。
同社グループ入り後、IGLOOOは、1)(株)ミキ・ツーリスト/(株)ITPと共同で欧米豪を中心としたオンライン旅行博出展支援サービス「海外旅行博オンライン出展サポートパッケージプラン」の提供を開始(2020年8月)、2)欧米豪向けインバウンドメディア「VOYAPON(ヴォやポン)」のリニューアル(同年8月)、3)“外国人目線”に立ったストーリーテリング型越境ECサイト「VOYAPON STORE(ヴォやポンストア)」の開設(同年9月)、4)中国向けデジタルマーケティング事業の(株)unbotと中国市場における欧米豪向け観光プロモーションの独占パートナーとして業務提携(同年11月)、5)沖縄県読谷村と連携し初の欧米豪向け越境ECプロジェクトを始動(2021年4月)、6)中東向けに山梨県のPR動画を作成、プロモーションを実施(同年5月)、と事業推進を加速しており、ソリューションサービス部門の一翼を担う存在に育ちつつある。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 前田吉弘)
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