5. ESG・SDGsの取り組み
ESG(環境・社会・ガバナンス)やSDGs(持続可能な開発目標)の取り組みも強化している。
E(環境)では、環境マネジメント体制を強化し、強みを持つ環境配慮型製品の拡販や、再生可能エネルギーの導入(滋賀工場に太陽光発電所を設置)等を推進している。S(社会)では、時間外労働削減に向けた労働環境の改善、従業員の安全確保に向けた労働安全衛生の充実や健康管理、社会・地域への貢献を推進している。G(ガバナンス)では、コーポレート・ガバナンス体制(意思決定・業務執行体制、監査体制、インターナショナル・アドバイザリー・ボード)を確立するなど、その機能強化を推進している。
なお2017年1月には大阪市女性活躍リーディングカンパニーの認証を取得している。また2019年1月にはGPIFが新たに採用したESG投資のための株式指数「S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数」の構成銘柄に選定されている。
さらに経済産業省が2019年1月に設立したクリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンスにも参画している。地球規模の新たな課題である海洋プラスチックごみ問題の解決に向けて、プラスチック製品の持続可能な使用や代替素材の開発・導入を推進し、官民連携でイノベーションを加速化する。このアライアンスには2019年9月3日時点で258社・団体が参加している。
新製品開発は環境への配慮という点を意識して取り組んでいる。例えば廃棄物削減という点では、版を使用せず小ロットでの生産が可能なインクジェット技術を、社会課題解決のためのソリューションの1つとして開発を推進している。二酸化炭素の排出量削減という点では、材料の一部を植物由来成分に置き換えたボタニカルインキシリーズの拡販を推進している。食品ロス問題では、酸化を防止するガスバリア剤によって食品の保存期間の長期化に貢献する製品の開発を推進している。ほかにも従来の熱乾燥で硬化するインキから、UVやEBといった省エネルギーで硬化するインキの開発を推進している。
印刷用インキ市場における市場開拓余地は大きい
6. 中期成長期待
印刷用インキ市場では世界的に環境配慮型高機能製品へシフトする流れが強まり、その市場拡大・開拓余地は大きい。同社は環境配慮型高機能・高付加価値製品の開発・品ぞろえ・高シェアが強みであり、先行してグローバル展開した実績や各国の地域特性に合わせて製品投入するノウハウも豊富だ。
現中期経営計画の目標数値(2020年12月期の売上高195,000百万円、営業利益13,000百万円、経常利益15,000百万円、親会社株主に帰属する当期純利益9,800百万円、ROE10%以上、前提為替レート1米ドル=112円)の達成は難しくなったが、この反省も踏まえて次期中期経営計画の目標値を設定するようだ。
グローバル展開の加速と環境配慮型高機能製品の拡販をベースとする事業戦略に大きな変化はないだろう。新規事業創出も寄与して中期成長が期待される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 水田雅展)
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