前日24日の米国株式相場は続伸。ダウ平均は454.97ドル高の30046.24ドル、ナスダックは156.15ポイント高の12036.79ポイントで取引を終了した。ワクチンの実用化期待やバイデン氏への政権移行開始が好感され、また、次期財務長官に選出されたイエレン前FRB議長が大規模財政策を支持するとの期待から寄り付きから上昇。終日強い展開となり、ダウは3万ドルの大台に乗せ史上最高値で引けた。米国株高を受けた今日の東京株式市場は買いが先行した。日本でもワクチンの実用化、普及への期待感が株価支援要因となり、リスク資産選好がさらに進んだ。一方、国内で新型コロナ感染拡大が止まらないことへの懸念が強く、また、このところの急ピッチな株価上昇で高値警戒感も意識されたが、寄付き段階では買いが優勢だった。
個別では、「ノート」新モデル発売と環境省が新たなEV補助金を検討しているとNHKで報じられたことを受けた日産自<7201>、自社株買いを発表したトーヨーカネツ<6369>、室蘭・君津の2高炉を再稼働したと発表した日本製鉄<5401>、原油価格の上昇を受けた国際帝石<1605>が5%を超す上げとなり、米社よりマイルストーンフィーを受領すると発表したペプチドリーム<4587>、原子力関連の事業から撤退すると発表した川重<
7012>、23年3月期の連結経常損益を約180億円改善させると報じられたUACJ<5741>、抗インフルウイルス薬が米国で適応追加承認された塩野義薬<4507>、大容量リチウムイオン2次電池向け投資を拡大すると報じられたTDK<6762>が堅調だった。
一方、海外株式売出しを発表したアカツキ<3932>がストップ安となり、11月度の既存店売上高が前年同月度比7.4%増と10月度の同23.7%増から伸び率が鈍化した西松屋チェ<7545>が下げた。
セクターでは、海運業、鉱業、鉄鋼、非鉄金属、空運業などが値上がり率上位。一方、電気・ガス業、パルプ・紙、陸運業、食料品が値下がりした。東証1部の値上がり銘柄は全体の59%、対して値下がり銘柄は36%となっている。
日経平均が29年半ぶりの高値水準に躍り出、米国市場ではダウ平均が3万ドルを突破した。株式市場はまるでバラ色の楽園に化したかのような感があるが、少し冷静に見てみよう。例によって「株価=景気/金利」の式を使う。
まず、分子の景気。ワクチンの実用化、普及が近いとの見方から景気の先行き楽観ムードが広がっているが、足元はどうか。米国で昨日発表された経済統計を見ると、9月のケース・シラー住宅価格指数は前月比1.7%上昇で上昇率は過去最大となった。一方、コンファレンス・ボードが発表した11月の消費者信頼感指数は96.1で前月から5.3ポイント低下し、ダウ・ジョーンズまとめの市場予測(98.0程度)を下回った。まだら模様だ。注意をしなければならないのは、住宅市場の活況は金融緩和政策による低金利が強い追い風となっているということだ。先行きの金融政策によっては意外なもろさも内包していると言える。
一方、分母の金利(金融政策)。パウエルFRB議長は景気の二番底懸念に対し量的緩和の拡充を検討する考えを表明しており、株価上昇を支える強力な要因となっている。ただ、ここも注意が必要。ムニューシン米財務長官はFRBに対して19日、新型コロナ対策で実施する緊急支援制度の一部を20年12月末で終了すると通知したと伝えられた。これを受けFRBは、中小企業向けの資金供給策などを今年末で打ち切る方針を表明した。直ちに株式市場に影響を及ぼすものではないだろうが、何かの拍子に投資家心理を揺らすことはあるかもしれない。
バラ色の世界に見える株式市場だが、このように少し子細に見ると、あちこちに相場急変の萌芽が見え隠れしている。緊張感は保ちたい。
さて、後場の東京株式市場で日経平均はもみ合いとなりそうだ。新型コロナワクチンへの期待は大きく、相場の先高観は強いものの、前場段階で25日移動平均線との乖離率が8%超に拡大し、目先高値警戒感が強くなっており、上値追いには慎重となりそうだ。また、今晩は米国で週間新規失業保険申請件数、7-9月期GDP改定値、10月の耐久財受注額、個人所得・個人消費支出、新築住宅販売件数などの経済統計が発表され、また、11月4-5日開催分のFOMC議事要旨が公表されることから、これらの内容を見極めたいとしてやや様子見ムードが広がる可能性もありそうだ。
(小山 眞一)
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