今週の新興市場は大幅下落。米8月雇用動態調査(JOLTS)の求人件数が予想に反して増加したほか、9月ISM製造業景況指数も予想を上回ったことで、米10年債利回りが連日で2007年以来の高値を更新するなか、リスク回避の動きが広がった。高PERで金利感応度の高い新興株は、流動性リスクなど中小型株特有のリスクも嫌気され、週半ばまで大幅な下落が続いた。日本の10年債利回りも連日で約10年ぶりの高値を更新し、重しになった。一方、週後半は持ち直した。米9月ADP雇用統計の民間雇用者数の伸びが大幅に市場予想を下回ったほか、米9月ISM非製造業景況指数でもインフレ鈍化の基調が確認されたため、米長期金利が低下に転じたことが安心感を誘った。ただ、週前半の下落を取り戻すには遠く及ばなかった。今週の騰落率は、日経平均が-2.71%だったのに対し、東証グロース市場指数は-4.01%、マザーズ指数は-3.89%だった。
個別では、業績予想を下方修正したメドレックス<4586>、監査法人から公表済み決算の不適切な会計処理を指摘されたグッドスピード<7676>、業績悪化懸念の根強いマイクロアド<9553>などが週間下落率の上位に入った。一方、延期していた上期決算の1日前倒しの公表などを発表したテクノロジー<5248>、年初来高値更新で先高感が強まったペルセウス<4882>、政府が各府省庁のパソコン端末に国産のセキュリティーソフトを導入するとの報道で買われたセキュアヴェイル<3042>が週間上昇率の上位に入った。
■新興株に相対的に物色向かいやすい
来週の新興市場は戻りを試す展開か。注目された米9月雇用統計はややネガティブな内容だった。非農業部門雇用者数は前月比33.6万人増と市場予想(17万人増)を大幅に上回ったうえ、8月分は18.7万人増から22.7万人増へと大きく上方修正された。一方、平均時給は前年同月比+4.2%、前月比+0.2%とそれぞれ市場予想(+4.3%、+0.3%)を下回った。平均時給が予想を下回ったことは株式市場にとって歓迎される一方、モメンタムを示す前月比のプラス基調は変わっておらず、雇用者数の20万人を超える強い基調も踏まえると、金融引き締めの長期化懸念がくすぶる。
ただ、週末の米長期金利は反発したものの、雇用統計の発表直後に急伸した水準からは低下した。初動は売りで反応した米国株もハイテクを中心に大幅高に転じて終えている。週明け9日の米国株も底堅く推移すれば、連休明けの国内新興株は今週後半からの戻りを試す展開を続けそうだ。
来週は米国で11日に卸売物価指数(PPI)と連邦公開市場委員会(FOMC)議事録(9月開催)が、12日には消費者物価指数(CPI)が発表される。FOMC議事録はタカ派な内容が想定される一方、物価指数は食品・エネルギーを除いたコア指数でともに前月比の伸びは前月から横ばいにとどまる見込み。また、総合ではともに前月比で伸びの鈍化が予想されている。前年同月比でもともに概ね鈍化傾向が再確認される見込みだ。市場予想並みの結果となれば、金利上昇のピークアウト感が意識される可能性があり、新興株を巡る環境は改善しよう。
ほか、10月下旬から決算シーズンが本格化するため、主力大型株は当面様子見ムードが強まりやすい。このため、傾向としては新興株に物色が向かいやすい環境が期待できそうだ。
個別では短期物色が強まりやすいなか、AVILEN<5591>、ファーストアカウンティング<5588>、キャスター<9331>など、直近の新規株式公開(IPO)銘柄のなかでも事業内容でテーマ性の高い銘柄が注目されそうだ。
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