2021年7月よりACRLで開始した希少遺伝性疾患のオプショナルスクリーニング検査については、検査数が2022年12月期の1万件から2023年12月期は2万件となり、2024年12月期も4~5万件と2倍強のペースで拡大する見込みである。2024年12月期第2四半期の手数料収入は72百万円と前年同期比で3倍増と急伸し、第3四半期以降も新たに群馬県健康づくり財団と受託契約(2024年8月1日~)を締結したことで、さらなる増加が見込まれる。通期では前期の115百万円から250百万円前後まで拡大する勢いで、サービス開始以降はじめて黒字化する見通しだ。
現在も複数の自治体と交渉を進めており、2024年内に新たな契約を締結できる見通しだ。国内のオプショナルスクリーニング検査の対象疾患数は最大で9疾患となっているが、すべての疾患に対応していない自治体もある。同社は9疾患すべて、または検査対象から外れている疾患のみを対象とした検査を自治体から受託する。また、公費で実施している新生児マススクリーニング検査において、オプショナルスクリーニング検査の対象であった脊髄性筋萎縮症と重症複合免疫症の2つの疾患を加えることが国の方針として決まったが検査体制が整っていない自治体も多く、こうした自治体からの受注も期待できる。一方で、検査能力も限界に近づきつつあることから、検査機器の投資と人員増強を図ることで2026年までに年間6万件まで処理能力を拡大することを目標としている。
また、検査領域拡大の取り組みとして、「ゾキンヴィ」の販売開始に合わせてHGPS及びPDPLを対象とした遺伝学的検査を2024年7月より開始した。現在スクリーニング検査を実施している疾患についても環境が整い次第、開始する。スクリーニング検査と遺伝学的検査の両方を実施している衛生検査所がなく、医療施設からの要望が強いためだ。なお、同社はスクリーニング検査で要検査となった新生児に対する二次スクリーニング技術を開発したことを2024年8月に開催された日本マススクリーニング学会 学術集会で発表し、同社研究員が「若手優秀演題賞」を受賞した。ACRLで実施しているムコ多糖症の一次スクリーニング検査で要検査となった新生児について、遺伝学的検査を行う前に二次スクリーニング検査を実施することで、要検査者を従来の10分の1以下に絞り込むことができる。具体的には、一次スクリーニング検査で用いたろ紙血を使って疾患に関与する物質を測定し、遺伝学的検査の必要性を判別する。新生児や家族、医療従事者等の負担軽減につながる技術として2025年以降に実用化していくほか、ムコ多糖症以外の疾患についての開発も進める予定だ。また、今回二次スクリーニング技術として開発したバイオマーカー検査を治療効果のモニタリングに応用し、希少遺伝性疾患検査のワンストップ体制の構築を目指す。同社はこれら検査事業を行うなかで、希少遺伝性疾患に関する新たな治療薬候補品を見出していく考えだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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