1. 2021年9月期第1四半期の業績
オークファン<3674>の2021年9月期第1四半期の業績は、売上高が前年同期比88.4%増の2,963百万円、営業利益が1,224百万円(前年同期は62百万円の利益)、経常利益が1,215百万円(同60百万円の利益)、親会社株主に帰属する四半期純利益が918百万円(同11百万円の利益)と、「インキュベーション事業」の寄与(営業投資有価証券の一部売却)により大幅な増収増益となった。通期計画に対する進捗率でも、売上高が27.2%、営業利益が94.2%と、特に利益面で高い水準に達している。一方、主力事業だけで見ると、売上高が前年同期比7.7%増※1、営業利益が同21.6%増※2とやや緩やかな滑り出しとなった。
※1 外部顧客への売上高のみで算出
※2 調整値を含めた金額で算出
売上高は、ベンチャー投資に係る営業投資有価証券の一部売却により「インキュベーション事業」が増収に大きく寄与した。一方、主力事業については、「商品流通プラットフォーム事業」が、コロナ禍における巣ごもり消費等により堅調に推移したほか、「在庫価値ソリューション事業」が大手顧客のマーケティング費用の抑制的な動きにより新規受注に遅れが生じたことから、主力事業全体では計画を下回る緩やかな伸びにとどまった。
利益面でも、「インキュベーション事業」が大幅な増益に寄与した。また、主力事業についても、認知度向上に向けた広告宣伝や人材採用の強化など、今後の事業拡大に向けた先行費用が増加したものの、増収による収益の底上げにより増益を確保した。
財務面では、「現金及び預金」や流通量の増加に伴って「商品」(在庫)が増加したものの、「営業投資有価証券」の売却及び評価替え等により、総資産は前期末比19.6%減の10,764百万円と減少。一方、自己資本についても、「営業投資有価証券」の評価替えに伴う「その他有価証券評価差額金」の減少により同15.9%減の6,812百万円に縮小したものの、自己資本比率は63.3%(前期末は60.5%)と若干上昇した。また、「現金及び預金」は「営業投資有価証券」の売却等により前期末比39.0%増の3,760百万円に増加し、流動比率も370.8%と高い水準にあることから、財務基盤の安全性に懸念はない。
各事業の業績は以下のとおりである。
(1) 在庫価値ソリューション事業
売上高は前年同期比8.5%減の472百万円、セグメント利益は同15.7%減の98百万円と減収減益となった。売上高は、コロナ禍の下、大手顧客のマーケティング費用の抑制的な動きにより新規受注に遅れが生じたことや、在庫管理AI「zaicoban」の大手向け導入についても受注までにリードタイムを要したことからスロースタートとなった。ただ、第2四半期以降は、中小・SMBをターゲットとする施策により巻き返しを図る方針である。利益面でも、減収による収益の下押しに加え、積極的な広告宣伝や人材採用の強化に係る費用の増加により減益となり、セグメント利益率も20.9%(前年同期は22.7%)と若干低下した。
(2) 商品流通プラットフォーム事業
売上高は前年同期比16.0%増の1,231百万円、セグメント利益は同96.0%増の62百万円と増収増益となった。コロナ禍に伴う巣ごもり消費等により、「NETSEA」や「Otameshi」を中心として流通量が増加した。特に、企業の在庫増加により販売機会が拡大傾向にあるほか、「Otameshi」においても複数商品のセット販売が好調であったようだ。また、自治体や大手企業、農林中金等との取り組みを強化(詳細は後述)するなど、今後に向けた活動でも成果を残すことができた。一方、利益面でも、増収による収益の底上げにより増益となり、セグメント利益率も5.1%(前年同期は3.0%)に改善した。ただ、過去最高業績(四半期ベース)となった前四半期(2020年7−9月)と比べると、売上高、利益ともに減少しており、計画に対しても下回るスタートとなったようだ。
(3) インキュベーション事業
売上高は1,297百万円(前年同期は26百万円)、セグメント利益は1,151百万円(同2百万円の利益)と計画を上回る大幅な増収増益となった。2020年3月26日に東証マザーズに上場したサイバーセキュリティクラウド<4493>株式の一部売却が業績に大きく寄与したが、その点は想定内である。計画を上回ったのは他の複数銘柄を追加的に売却したことが理由である。なお、2020年12月末の「営業投資有価証券」残高は約40億円となっているが、そのうち約30億円はサイバーセキュリティクラウド株式(935,000株、持株比率10.08%)、残りの約10億円は他の複数銘柄(未上場株)で構成されているようだ。同社は、現時点で今期中の更なる追加売却を予定していない。ただ、約10億円の未上場株式については、コロナ禍に伴う景気悪化の影響等により減損リスク(損益へのマイナス要因)があることには注意が必要である。
2. (事業別)売上高の四半期推移
四半期推移を見ると、売上高全体では前四半期(2020年7−9月)を上回って推移しているが、「インキュベーション事業」を除く主力事業だけで見ると、過去最高業績(四半期ベース)となった前四半期との比較では減少した。特に、2020年9月期の第3四半期以降、急速に伸びてきた「商品流通プラットフォーム」の出遅れが目立つ進捗となっている。
3. 2021年9月期第1四半期の総括
以上から、第1四半期の実績を総括すると、「インキュベーション事業」の寄与により大幅な増収増益となり、財務的にも今後の成長資金を確保できたところは前向きに評価できるものの、外部環境が追い風(巣ごもり消費や企業在庫の増加、オフラインからオンラインへの流通構造の変化等)となってきたなかで、主力事業の伸びにやや物足りなさが残ったことは否めない。ただ、後述するように、環境変化を好機と捉え、将来を見据えた取り組みに注力したことを勘案すれば、第2四半期以降の業績の伸びにいかにつなげていくのかに期待したい。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
<NB>
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