1. 2024年9月期の業績動向
2024年9月期の業績は、売上高が前期比7.1%増の3,107百万円、営業利益は同20.1%増の362百万円、経常利益は同22.5%増の362百万円、当期純利益は同24.5%増の255百万円と、売上高と通期営業利益は過去最高を更新し、その他段階利益についても前期比大幅増で着地した。売上高については、SaaS事業者向け大型案件獲得が大きく貢献し、3期連続の増収を達成した。シトリックスソフトウェアをバンドルした大型案件が寄与したほか、サイバー攻撃やBCP(事業継続計画)対応のハイブリッドクラウド基盤の構築案件も好調だった。なお、地域別売上構成については九州近郊が40.76%、首都圏が59.24%となっている。
期初計画(売上高3,200百万円、営業利益347百万円、経常利益346百万円、当期純利益237百万円)に対しては、売上高は2.9%減と若干届かなかった。要因は、エモーショナルシステム事業部で計画した実機販売やメタバース案件が、期待通りに進捗しなかったことを理由に売上計画を大幅に下回ったことである。一方、営業利益は計画比4.4%増、経常利益は同4.7%増、当期純利益は同7.9%増と各段階利益は計画をやや上振れた。利益面については、セキュアクラウド事業において高付加価値製商品の販売が増加したことに加え、人員増に伴う内製化で製造コスト最適化を実現したことが貢献した。なお、期末従業員数は前期比11人増の65人と純増しており、注視していた人財の定着についても順調と言える。
2. 2024年9月期の財務の状況
2024年9月期末の資産合計は前期末比892百万円増の2,872百万円、負債合計は同717百万円増の1,436百万円、純資産合計は同174百万円増の1,436百万円となった。現金及び預金が206百万円減少した一方、受取手形、受掛金及び契約資産の増加(992百万円)があった。これは、大型案件が第4四半期にずれ込んだ影響である。ほかには、買掛金の増加(802百万円)、商品及び製品の減少(27百万円)、長期借入金の減少(24百万円)があり、また当期純利益による利益剰余金の増加(255百万円)や自己株式の取得による減少(80百万円)があった。これにより2024年9月期末時点の自己資本比率は50.0%と前期末比13.7ポイント減少したが、2024年3月期の東京証券取引所プライム市場の情報・通信業平均値31.4%(日本取引所グループ)と比較して高水準にあるほか、流動比率も目安の200%水準を保っていることから特段の懸念はない。
主力事業では高機能製品が伸長、エモーショナルシステム事業は苦戦も来期に向け手応え
3. 2024年9月期のセグメント別業績動向
2024年9月期のセグメント別業績は、セキュアクラウドシステム事業の売上高が前期比8.8%増の3,060百万円、セグメント利益が同31.9%増の395百万円、エモーショナルシステム事業の売上高が同46.7%減の47百万円、セグメント損益が33百万円の損失(同1百万円の利益)となった。
セキュアクラウドシステム事業では、遅れていた大型案件の期末検収を完遂したことで、通期で予定通り進捗し、増収継続を達成した。2024年9月期にシトリックスのライセンス販売を含む売上規模10億円の大型案件を受注し、大半を売り上げた。同案件で数億円程度の受注残があり、2025年9月期への貢献も見込まれている。「2025年の崖問題」では基幹システムを中心に、OSサポート切れの対応だけでなく、付随するハード更新需要が多く、機会を確実に捉えて業績に貢献した。サーバーのほかネットワーク機器全般に関しては、高機能な通信機器への切り替え需要が続いており、2024年9月期の高付加価値製商品(売上総利益率25%以上)の売上高は、前期比21.5%増の650百万円と伸長した。なお、同社はこの傾向は数年続くと見込んでおり、2025年9月期の計画にも加えている。クラウド基盤に関しては、引き続き同社の強みである高度なSI技術を要するハイブリッドクラウドの提案に注力した結果、付随するハードウェアの売上高は同41.8%増の835百万円と大きく業績に貢献した。ほかにも、近年課題とされるサイバー攻撃やBCP(事業継続計画)に対応するレジリエンス関連ソリューションや、同社拠点の九州周辺エリアでは、半導体関連企業向け案件のほか、地場の食品製造業向け基幹システムマイグレーション案件等を受注するなど、顧客層の幅を広げ、顧客ニーズにフレキシブルに対応している。
エモーショナルシステム事業については、第2四半期に沖縄県与那原大綱曳資料館での360度3Dシアター稼動や、「超体験 NHKフェス 2024 in SHIBUYA」でのMetaWalkers採用等がみられたほか、エンターテイメント領域を中心に既存顧客からのストック収入が寄与したが、小型案件が中心となったほか、計画した実機販売やメタバース案件が計画通りに進まなかったこともあり、減収赤字転落となった。一方、2024年9月期に展開を計画した企業向けのメンタルトレーニング商材については、顧客の関心は高かったものの、期待していた水準の需要獲得には結びつかなかった。その結果、前期比、計画比ともにビハインドの着地となった。ただ、本社ショールームに加え、東京支社にMetaWalkersデモ機を配置し、顧客接点を拡大したことで同社としては今まで以上に手応えをつかんでいるようだ。圧倒的に首都圏での需要が多いため、デモ環境を整備した効果は絶大で、顧客の声から潜在ニーズを読み取り即座に反映して改良を加えるなど、技術的側面での期待も大きい。また、MetaWalkersはスタンダードとアドバンスドの2つのシステムラインナップを揃えるが、アドバンスドに映像処理をGPU対応する大幅改良を加え、高画質化を実現した。ほかにも、360度カメラで撮影した映像を5G接続により、リアルタイムで投影するライブ対応オプションの開発も完成しており、本社のショールームでの体験が可能となった。
なお、受注残については、セキュアクラウドシステム事業において前期比22.0%減の771百万円となった。SaaS事業者向けの高付加価値ハードウェアを2024年9月期第4四半期に受注したほか、製造業向けシトリックス製品の販売や、食品製造業の基幹システムマイグレーション案件を獲得した。ストックビジネスでは、サイバー攻撃関連で安定的に受注を確保している。エモーショナルシステム事業については前期比23.7%増の12百万円と受注残を積み上げた。この結果、両事業合計での2024年9月期末受注残高は前期末比21.5%減の784百万円で着地した。ただ、前期比で大幅減に見えるものの、2025年9月期に入ってから既に、地方公共団体のインフラネット案件やカスタマイザー部門でも新規案件を受注するなど、好調な滑り出しを見せているようであり、弊社としても特段懸念視はしていない。
(執筆:フィスコアナリスト 村瀬智一)
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