3. 世界的な脱炭素経営の気運
2021年4月に、日本政府は2050年の排出実質ゼロ(Net Zero)のカーボンニュートラル達成のために、2030年までの温室効果ガス排出量の削減を2013年度比46%減とする新しい目標を発表した。前回目標は2015年のパリ協定を受けて26%減とした中期目標で、大幅な削減率の引上げとなる。さらに、公式目標は46%減であるが、50%減の高みを目指すと補足された。
世界に目を向けると、G7参加国は2050年の実質ゼロ目標を発表し、排出量が世界最大の中国は2060年、インドが2070年をネット・ゼロの目標年としている。投資の世界では、2020年12月にNet Zero Asset Managers Initiative(NZAMI)が立ち上げられ、2050年のGHG排出量ネット・ゼロに向けた投資を支援する。NZAMIには236の資産運用会社が参加しており、資産総額は57.5兆ドル(約6,600兆円)と世界の管理資産の6割近くを占める。企業情報の開示に関して、東証はプライム市場上場企業に、気候変動によるリスク情報の開示を実質的に義務付ける。気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD : Task Force on Climate-related Financial Disclosures)では、「ガバナンス」「リスク管理「戦略」「指標と目標」を開示推奨項目としている。「指標と目標」の項目では、科学に基づく目標設定(SBTi)の認定を受けた日本企業は、2022年3月現在で160社に達した。個々の企業がカーボンニュートラル実現を目指すに当たって、排出量の算定は自社施設の燃料消費(スコープ1)、自社施設で購入した電気・熱の使用(スコープ2)ばかりでなく、スコープ3では川上のサプライヤーによる物品製造時排出量や川下の顧客による自社製品使用時の排出量まで対象が広がる。
同社は、再生可能エネルギー関連事業を成長事業と位置付け、推進している。これには、再生可能エネルギーである太陽光や風力による発電に係る売電事業、小形風力発電機の開発・製造、カーボンニュートラルなバイオディーゼル燃料事業がある。さらに住宅機器関連事業においては、環境配慮型特殊商材の販売に注力している。同社は事業全体で、コーポレートスローガンである「PROTECT×CHANGE環境を守る。未来を変える。」を体現し、ESG経営を遂行していく方針である。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 瀬川 健)
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