―相次ぐビッグニュース、官民強力タッグでシリコンアイランド復活の狼煙上がる―
日本列島が、 半導体工場の新設・増設そして再開で沸いている。半導体受託生産で世界トップの台湾積体電路製造(TSMC)
●列島各地で大型投資続々と
官民挙げての大型投資で、日の丸半導体が雄叫びを上げている。生成AIの急速な普及拡大に伴う半導体需要の拡大が期待されるなか、政府は国内の半導体業界に対する政策支援を積極化させている。
日々、半導体に絡む報道を見ない日はないが、4月に入ってもビッグニュースが相次いでいる。2日には、経済産業省がラピダスの半導体開発に2024年度で最大5900億円の追加支援を発表し、株式市場でも大きな関心を呼んだ。同社は、北海道千歳市で建設中の工場において27年の量産開始を目指すが、支援額は累計で9000億円を超える水準となっている。また、ルネサスエレクトロニクス <6723> [東証P]は11日、EV(電気自動車)向け需要の拡大を見据え、パワー半導体の生産能力を増強するために、14年に停止した甲府工場(山梨県甲斐市)の稼働を再開した。TSMCが、年内稼働予定の第1工場隣接地(熊本県菊陽町)に第2工場の建設を決定したことも伝わっている。
こうした半導体工場に対する巨額な投資が日本全国で相次いでいる。昨年10月には台湾半導体大手の力晶積成電子製造(PSMC)とSBIホールディングス <8473> [東証P]が宮城県大衡(おおひら)村に共同で半導体製造工場を建設すると発表した。広島県では米マイクロン・テクノロジー
●東京ではA&Dホロン
首都・東京都にも祭りの波が押し寄せている。A&Dホロンホールディングス <7745> [東証P]は2月27日、子会社のホロンが東京都のほぼ中央に位置する立川市に、成長ドライバーと位置付ける半導体関連装置の新工場を建設すると発表した。投資総額は37億7000万円(予定)で、25年12月の竣工を予定している。需要増加に対応し安定的な生産体制を確立するほか、新工場建設により本社工場内の開発スペースを拡充することで、次世代装置などの新製品開発を促進するのが目的だ。この発表を追い風に株価は上昇基調を鮮明にしており、きょう15日には2973円まで買われ年初来高値を更新し3000円大台乗せを目前に捉えている。
●ラピダスで日本酸素HD、長瀬産、JET
日本各地で半導体工場の建設が進むが、こうした動きは地域の経済活性化にもつながると同時に、周辺地域にはさまざまな企業の最先端工場などが集約され、半導体のサプライチェーン構築も加速している。大型投資で恩恵を受ける可能性の高い周辺企業をまとめた。
政府の追加支援で沸く北海道千歳市に新工場を建設中のラピダスだが、同市にはSUMCO <3436> [東証P]、ミネベアミツミ <6479> [東証P]、セイコーエプソン <6724> [東証P]などの生産拠点があり、今後サプライチェーン構築で連携も期待される。徐々にラピダスの全貌が現れるなか、株式市場でも関連銘柄に向ける注目度がいっそう増している。
日本酸素ホールディングス <4091> [東証P]は昨年、グループの大陽日酸がラピダスのパイロットライン向けのガス関連設備工事の設計施工者及び、同ラインで使用されるバルクガスの供給者に選定されている。同社は産業ガスの国内トップメーカーで業績も好調。24年3月期の営業利益は、前の期比36.4%増の1630億円を予想し過去最高益更新の見通しだ。
また、昨年11月には長瀬産業 <8012> [東証P]が、ラピダスの半導体材料を本州から北海道へ向けて輸送を手配する取りまとめ業者の1社に選定されたと発表。化学系専門商社として蓄積した知識の豊富さ、半導体製造に関わる多くのサプライヤーとのネットワークがあることなどが評価された。全体相場が波乱のなかも株価は頑強展開で、3月21日につけた上場来高値2687円をにらむ展開。
そして、現在投資家の視線を集めているのが半導体洗浄装置の開発・設計、製造販売などを手掛けるジェイ・イー・ティ <6228> [東証S]だ。今月3日取引終了後、ラピダスから受託した次世代半導体製造技術の基礎研究開発業務が完了し、新たに試作装置製作に関する研究開発業務を受託したことを発表した。ラピダスの最先端ロジック半導体製造ラインへの装置納入を目指す。これを受けて株価は上昇加速を続けていたが、ここにきて一服。ただ、半導体祭りはここからが本番といえ、まだまだ目が離せない。
●熊本ではフェローテク、平田機工、ヤマックス
熊本県は、TSMCの進出により大きく変貌中だ。周辺には、TSMCに出資するソニーグループ <6758> [東証P]をはじめ、国内の最先端企業が続々と進出しており、地域経済への貢献は絶大だ。半導体装置向け真空シールでトップシェアのフェローテックホールディングス <6890> [東証S]は、熊本県大津町に半導体製造装置向け部材・サービスの新拠点を建設しており、隣接する菊陽町のTSMC工場稼働に伴う需要拡大に積極的に対応する構えだ。24年3月期は営業利益段階で前の期比28.7%減益見通しだが、これは株価には既に織り込み済みとみていいだろう。株価指標面ではPER9倍台、PBRも0.6倍台に過ぎず、水準訂正余地の大きさが意識されそうだ。
こうしたなか熊本に本社を構える平田機工 <6258> [東証P]への注目度は高い。同社は、自動車(EV、内燃系)、半導体などさまざまな産業分野に向けて、多様な生産設備の製造・販売事業を世界的に展開しており、台湾子会社を経由してTSMCとも取引があるだけに、こうした面も期待感を増幅させている。2月には、北米の顧客から内燃系自動車のエンジン生産設備(合計約130億円)を受注したことを発表しており、今期以降の業績に寄与する見通しだ。2月からは増築を進めていた七城工場(熊本県菊池市)で、生産機能の一部を前倒しで運用開始するなど、拡大する需要をスピーディーに取り込む姿勢も見逃せないポイントだ。
コンクリート2次製品メーカーで九州最大手のヤマックス <5285> [東証S]にも注目。九州・沖縄方面の事業拡大が期待される防衛関連に加え、本社所在地である熊本県内の大型企業誘致に関連する事業が多く計画されるなか、大型案件の受注獲得に向けて攻勢を強めている。24年3月期は営業利益段階で前の期比2.2倍となる18億円を見込む。株価は、3月28日に1985円まで買われ最高値を更新。その後は調整しているものの、1700円台で頑強展開をみせており、業績好調を背景に2000円大台乗せからの活躍期待も。
●人材確保でNISSO
日本各地の半導体関連工場で優秀な人材確保が大きな課題となるなか、製造業向け派遣・請負大手のNISSOホールディングス <9332> [東証P]にも注目したい。日本全国に9カ所の教育訓練施設を有する同社だが、昨年9月には、北海道経済産業局が設立した「北海道半導体人材育成等推進協議会」への参画を発表。更に、同年12月には日総テクニカルセンター熊本の増設を発表しており、同施設における半導体製造に携わる人材の育成を現状の3倍(年間300人以上)にする方針を明らかにしている。半導体製造における人材不足解消が求められるなかで、同社には成長期待が大きく膨らんでいる。
●エアウォータ、タツモなどにも活躍期待
工業用ガス大手エア・ウォーター <4088> [東証P]にも目を配っておきたい。同社もラピダスの材料輸送に関する取りまとめ業者に選定されており、半導体工場向けロジスティクスサービスを開始することで業績への貢献が期待されている。更に、日本各地での半導体工場の稼働は、この分野で強みを持つ同社にとっては、まさに天与の商機にほかならない。24年3月期の営業利益は、前の期比15.8%増の720億円を見込み最高益更新を計画している。
また、製造ライン増強を進めるマイクロンが拠点を置く広島県周辺には強固なサプライチェーンが構築されており、多くの関連企業が進出している。22年には「中国地域半導体関連産業振興協議会」が設立され、中期的な半導体関連産業の集積強化の方策を図り、この地域での経済活性化を目指している。同協議会には、半導体シリコン大手のトクヤマ <4043> [東証P]、ウエハー、ガラス基板搬送機のローツェ <6323> [東証P]、液晶用塗布装置トップシェアで半導体製造装置に注力するタツモ <6266> [東証P]をはじめ、前出のエアウォータなど多くの企業が名を連ねており、こうした銘柄にも活躍期待が高まりそうだ。
株探ニュース
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