(5) 特色と強み
a) システム構築が容易
「SPIRAL(R)」の最大の特長は、自由なカスタマイズ性にある。パイプドHD<3919>自身が「SPIRAL(R)」の機能を組み合わせて自社の業務用システムや特定顧客(分野)向けのアプリケーションを開発しており、世に存在するあらゆる業務系のシステムを「SPIRAL(R)」の機能の組み合わせによってつくることができると言っても過言ではない。以前はこのような業務系のシステムは、一般的にはSIerと呼ばれる専門事業者が構築していた。しかし、従来SIerが行っていた業務の大半は「SPIRAL(R)」の機能を組み合わせることで置き換えが可能であり、顧客企業自身が各種の開発やシステム構築を容易に行うことができるようになっている。そのため、大企業だけでなく、システム開発等に多額の費用をかけられない中小企業にとって同社製品は、安価でかつ使いやすい製品となっている。
b) 各種アプリケーション間の連携が可能
「SPIRAL(R)」の持っている機能は多岐にわたるが、最も基本的な機能は、例えば顧客企業がWebを通じてデータベースを管理するうえで、データベースの作成から「登録/更新/削除」などのデータ操作、一括データ登録、ダウンロードなどが簡単にできる点である。具体的には、企業がWebを通じてアンケートを実施し、市場調査や新製品の評価を行うような場合、企業側では「SPIRAL(R)」を使用して、ごく手軽にアンケートを作成し、それをターゲットとする顧客や見込み客の元に届け、アンケートに回答してもらい、それを回収することができる。顧客情報のデータベースに満足度調査のアンケートを関連付ければ、それがそのまま顧客属性に応じた分析になり、満足度の向上のためのフォローアップも可能になる。アンケート結果はリアルタイムで集計され、その結果をそのまま報告書に仕上げることもできる。「SPIRAL(R)」を通じて、これらの異なるアプリ間での一連の作業を簡単な操作で行うことができるのだ。
同様に、プレゼント特典付きのキャンペーン、人事採用のエントリーシート、問い合わせフォーム、セミナーの申し込み、口座開設、資料請求などのフォーム作成に関しても、「SPIRAL(R)」を通じて、フォームの作成や会員属性の登録、更新、削除、ログイン認証などを手早く行うことも可能である。例えばセミナーの開催などの場合、仮に複数のセミナーが同時進行しても、複数の申込受付やキャンセルの管理が即時に可能であり、セミナーの開催が効率的になる。これらのデータを検索フォームに一覧表示させ、一問一答式の分岐アンケートや集計表、グラフなどに発展させることも容易である。さらに、音声(電話)でのソリューションを持つ(株)フレンディットのサービスが加わったことによって顧客の利便性は一段と向上する見込みだ。
同社の競合会社の1つが米国のsalesforce.com
c) 導入コスト、セキュリティ面での優位性
また「SPIRAL(R)」は、パッケージソフトウェアとして販売されずに、期間利用型のクラウドサービスとして提供されているため、顧客企業は無駄な時間やコストをかけずに、必要とするシステムを独自に短時間で安価に構築できるのも特長だ。すなわちシステム導入の初期であっても多額の費用をかけずに少額の投資からシステム開発が可能になる。
このようなコスト面での優位性に加えて、セキュリティ面での保証・保守や監視機能も付いていることから、特に中小SIerにとっては利便性の高い製品となっている。例えば、ネット上での通信暗号化技術として最も一般化しているSSL(Security Sockets Layer)に脆弱性が指摘された場合、通常であれば各SIerは個別にこの脆弱性への対応をする必要があるが、同社の「SPIRAL(R)」を利用していれば、必要な対応は同社が行う(「SPIRAL(R)」上で解決される)ため、各SIerは個別に対応する必要がなくなる。一方で、同社の「SPIRAL(R)」を利用していることが、最終顧客に対してセキュリティ面での安心感を与えているとも言える。
特にシステム開発やセキュリティ確保のために多額の費用をかけられない中小企業にとって、同社製品はワンストップでこれらの問題を解決してくれるため、同社製品は大企業だけでなく、特に中小企業に対して強みを発揮できると言えるだろう。
d) 導入事例:東京農業大学教職員組合の「Web投票システム」を「SPIRAL(R)」で構築
東京農業大学の教職員組合は、約800人の組合員で構成され、役員や代議員を決める選挙のほか、組合活動に関する組合員投票などを年に10回程度行っている。以前は、投票用紙を用意して投票所を開設し、3時間ほどかけて開票作業を手作業で行っていたが、コロナ禍をきっかけにWeb投票システムを導入することで、新型コロナウイルス感染症対策だけでなく、事務作業の効率化や時間短縮についても実現したいと考え、その基盤に「SPIRAL(R)」が採用された。
この結果、選挙・投票にかかる事務作業工数を10分の1に削減でき、開票作業も3時間から30分に短縮されたほか、選挙の準備段階や投票時における対面接触機会を減らせることで、新型コロナウイルス感染症の感染リスクを抑えることができた。また、インターネット環境さえあればいつでもどこからでも投票できるため、場所と時間に囚われない投票が可能となり、投票者の利便性も向上した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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