1. 2024年3月期の連結業績予想
2024年3月期上期収益の状況を踏まえ、会社側では2024年3月期の連結業績予想は売上高36,000百万円(前期比5.4%増)、営業利益1,500百万円(同26.9%減)、経常利益1,500百万円(同30.3%減)、親会社株主に帰属する当期純利益600百万円(同58.7%減)予想の変更は行わなかった。
この結果、上期が売上高減額、利益増額で着地したため、下期の業績予想については、売上高19,503百万円(期初計画比1,003百万円増額、前年同期比17.2%増)、営業利益705百万円(同195百万円減額、同16.8%減)、経常利益504百万円(同396百万円減額、同36.2%減)、親会社株主に帰属する四半期純利益169百万円(同231百万円減額、同13.8%減)予想となる。
2. 2024年3月期セグメント別売上計画
同社は2024年3月期のセグメント別売上高計画を開示(営業利益については非開示)しており、4セグメントともに増収を見込んでいる。また、セグメントごとにサブセグメントの売上についても開示している。
(1) トナー事業
トナー事業は全体では売上高14,100百万円(前期比4.2%増)を計画しているが、2024年3月期上期で収益が大幅に落ち込み、上期での通期予想に対する売上高進捗率は39.6%に過ぎない。
現状、中国経済の不透明感が依然として解消しておらず、世界的にも電子媒体でのファイリング拡大などの進展からプリントニーズが減退している。足元で在庫調整が進みつつあり、販売のボトムは確認できたと見られるが、緩やかな回復となる模様で、カラートナーの構成比が高まるなかで高単価品の拡大で補うものの、今期予想売上の達成はかなりハードルが高いと見られる。利益面でも減収効果が影響、価格競争も依然として継続している模様で、円安効果はあるものの2023年3月比較では大幅減益が避けられないと見られる。
(2) 半導体・ディスプレイ関連事業
半導体・ディスプレイ関連事業は全体で6,000百万円(前期比6.5%増)を計画している。内訳は主力の半導体実装用テープが半導体生産の低迷で3,400百万円(同200百万円減)予想となっている一方で、半導体製造装置関連部品が1,000百万円予想と新製品立ち上げによる伸びを見込む。光学フィルムは1,600百万円を見込む。
現状、上期については光学フィルムが計画していない受注の獲得があり、前上期比倍近い売上となったもようで、通期に対する売上高進捗率は56.7%となっている。通期については、主力の半導体実装用テープの需要は底堅いと見られるが、期待していた半導体関連部品の新製品については半導体製造装置(エッチング装置)の受注急減により、新技術を生かした静電チャックの新製品投入が期ずれする見通しにあり、レガシー半導体製造向けに回復していた従来品の静電チャックも伸びが減退しているもよう。また上期に想定外の受注獲得となった光学フィルムは下期受注の不確実性があり、全体では上期比下期減収が想定される。このため通期としては多少の売上増額に留まると見られる。ただし利益面では光学フィルムの増収から前期比で利益は大きく改善が見込まれる。
(3) 機能性シート事業
機能性シート事業は全体で11,700百万円(前期比8.6%増)を計画している。内訳は機能性不織布が2,800百万円と増収の中心で、製紙は2,400百万円と集約化進展で減収が続く見通し。
現状、上期で売上高5,272百万円は進捗率45.1%となっており、機能性不織布が中国の経済減速で伸び悩んでいる分が影響していると見られる。紙加工、ガムテープは対象市場の需要減により漸減傾向の様子。下期は価格改定効果もプラスし、通期では計画並みを確保するのは可能と見られる。
(4) セキュリティメディア事業
セキュリティメディア事業は売上高4,200百万円(前期比5.4%増)を見込む。上期での進捗率は50.1%であり、計画通りの売上が見込まれる。
全体を通じ、最大部門のトナー事業の収益進捗率が低く、しかも下期についても在庫調整が進む見通しながら、急回復とはならない見通しで、半導体・ディスプレイ関連事業の多少の売上の上振れがあっても、全体での売上高達成はかなり厳しいと見られる。一方、利益面では上期に計画比上振れしており、下期に多少研究開発費などでコスト増要因はあるものの、トナー事業の底入れ、為替の円安継続などから、会社計画の利益達成は十分可能と見られる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 岡本 弘)
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