―1ドル=160円台から140円台へ、小売り・食料品など内需系の銘柄群に狙いを定めよ―
今月に入り全体相場は再び波乱含みの様相となっている。8月暴落からの反発を受けて広がり始めていたマーケットの安心感はすっかりしぼんでしまった。為替市場で進む円高がネガティブ要素として意識され、積極的に買いに動きづらいのが現状だ。こうしたなか、投資家が活路を見出しているのが円高メリット株だ。株探の人気テーマランキングをみると、ここ最近は「円高メリット」が常に上位に入っている。内需系の小売りや食料品など、これまで歴史的な円安の逆風を受けてきた銘柄に狙いを定めてみたい。
●ニトリHDは2カ月弱で4割上昇
円高の流れが強まっている。ドル円相場は7月半ばごろの1ドル=160円台から、8月初旬にかけて141円台まで急変動。その後いったん戻りを試したものの、足もと再び円高が進み140円台をつける場面もあった。米国で景気下支えに向けた利下げ観測が広がるなか、日本では追加利上げへの警戒感が根強く、日米金利差縮小の思惑からドル売り・円買いの動きが出ていることが要因だ。為替市場での急速な円高を受け、株式市場では円高が業績にプラスの効果をもたらす円高メリット株の投資妙味が高まっている。
関連銘柄には株価が堅調なものが目立つ。筆頭格のニトリホールディングス <9843> [東証P]は7月半ばから上げ足を加速。1万6000円台から今月前半には2万3000円台へ迫り、わずか2カ月弱で約4割も水準を切り上げた。直近の4-6月期決算は増収増益と好調だった。関連主力株に位置づけられる神戸物産 <3038> [東証P]も高値圏でしっかりの展開。このほか、 100円ショップのセリア <2782> [東証S]、衣料品のパルグループホールディングス <2726> [東証P]なども堅調な値動きをキープしている。
もちろん、今後再び円安が進む可能性もなくはない。11月の米大統領選挙で共和党のトランプ氏が勝利した場合、同氏が主張する減税や高関税によってインフレが再燃し、米金利の上昇とともに日米金利差が拡大する事態が想定される。民主党ハリス氏の勝利でも、中間層向けの支援策を背景にインフレが持続するかもしれない。こうした政治面の動きには注意が必要だが、とはいえ現在の日米経済や金融政策の動向から即座に円安トレンドに回帰するとも考えづらい。今しばらくはドル安・円高の流れが続くことだろう。今回、円高メリットによる業績拡大期待が意識される銘柄を5つピックアップした。
●妙味株5選
ワッツ <2735> [東証S]は100円ショップを運営。「Watts(ワッツ)」を主力に「meets.(ミーツ)」「silk(シルク)」などのブランドで全国展開する。前述のセリアと同じく業界大手の一角だ。インフレにより消費者の節約志向が高まるなか、低価格を強みとする100円ショップ業態には追い風が吹いている。月次の既存店売上高(100円ショップ直営店)は直近8月まで11カ月連続でプラス。第3四半期累計の営業利益は前年同期比2.8倍の10億5400万円と、24年8月期通期計画(10億5000万円)を上回っている。株価は新値追い態勢にあり、全体相場とは別次元の動きを鮮明にしている。
RIZAPグループ <2928> [札証A]は言わずと知れたスポーツジム大手だが、傘下で雑貨やアパレルなど小売りも展開。ジム運営と小売りが業績を支える2本柱となっている。ジム運営は「chocoZAP(チョコザップ)」の急成長を背景に好調が続く。一方、小売り部門は円安による原材料価格上昇の悪影響を受けており、円高が事業環境の好転につながることが期待される。先月発表した第1四半期決算では小売り部門が引き続き冴えなかったが、チョコザップが牽引する形で全体では増収・営業赤字縮小で着地。今3月期通期の増収・営業黒字見通しは据え置いており、今後の推移を見守りたい。
yutori <5892> [東証G]は若年層向けに多数のアパレルブランドを手掛ける。自社ECサイトや実店舗、資本・業務提携しているZOZO <3092> [東証P]の通販サイト「ZOZOTOWN」などで商品を販売している。円安による仕入れ価格の上昇が打撃となり23年3月期は営業赤字に転落したものの、仕入れ先の集約と値上げが奏功し、翌24年3月期は円安に見舞われながらも黒字に浮上して一気に過去最高益を達成。25年3月期も連続での最高益更新を狙う。新規ブランドの創出とともにM&A戦略にも積極的に取り組んでおり、先月には有名タレントがプロデュースするアパレル会社を買収し話題を呼んだ。
丸大食品 <2288> [東証P]はハム・ソーセージが主力の食品メーカー。ここ数年前までは円安や原材料高によって厳しい状況に置かれていたが、価格改定の効果が表れ前3月期は4期ぶりに営業黒字へ転換。今期も3割近い増益を予想している。第1四半期時点で営業利益の通期計画に対する進捗率は4割を超えており、業績上振れへの思惑が高まる。株価は8月の暴落相場に巻き込まれる形で1500円台前半まで下落し年初来安値に沈んだが、そこから急速に切り返し、同月下旬には1800円台に浮上。一転して年初来高値を更新した。再び突っ込む場面があれば、そこは押し目買いの好機となりそうだ。
日本製紙 <3863> [東証P]は底値買いのチャンスが巡りつつある。代表的な円高メリット業種の一つで、紙パルプセクターの中核銘柄である同社に注目したい。製品価格の修正やコストダウンが進展し、先月発表した4-6月期決算は営業利益が前年同期比5.1倍と急拡大。通期でも3割強の増益を見込む。業界全体でデジタル化による構造的な紙需要の減少が逆風となるなか、会社側では脱プラスチックの流れが追い風となる紙容器など生活関連事業の拡大に注力する姿勢を示している。足もとの株価は前身(旧日本製紙グループ本社)の企業時代を含めた上場来の底値ゾーン(800円台)に位置している。
株探ニュース
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