1. 会社沿革
サイオス<3744>はLinuxに代表されるOSSを活用したITシステム開発領域での事業展開を目的に1997年に設立され、その後、国内外でM&Aを活用しながら事業領域を拡大してきた。2006年には米国でIT企業(現 SIOS Technology Corp.)の株式を取得し、海外への進出を果たしたほか、2008年にクラウドサービスの開発販売を行う(株)グルージェント(以下、GLU)を子会社化、また、2015年には金融業界への事業展開を目的に(株)キーポート・ソリューションズ(以下、KPS)とProfit Cube(株)(以下、PCI)を子会社化した。
2017年10月には持株会社体制に移行し、国内事業については新たに設立したサイオステクノロジー(株)(以下、STI)へ段階的に集約し、経営体制の強化を図っている。具体的には、2020年10月にKPS、GLUを、2021年4月にはPCIを吸収合併した。2021年12月末時点の主な連結子会社はSTIと米国で「LifeKeeper」の開発・販売を行うSIOS Technology Corp.、持分法適用関連会社は2社、連結従業員数は489名となっている。
2. 事業内容
事業セグメントは、オープンシステム基盤事業とアプリケーション事業に区分されている。各事業の概要については以下のとおり。
(1) オープンシステム基盤事業
オープンシステム基盤事業は、ITシステムの障害時のシステムダウンを回避するソフトウェア「LifeKeeper」やRed Hat, Inc.関連商品※、OSS技術に関するサポートサービスやOSS関連商品、各種情報システム向けのコンサルティングサービス等が含まれる。このうち、「LifeKeeper」は米子会社が開発した製品で、国内だけでなく海外でも販売されており、大企業や公共機関などでの導入実績も多く、同社の主力製品となっている。
※オープンソースソフトウェア&サービス・プロバイダーの大手であるRed Hat, Inc.が開発するオープンソースの製品。
(2) アプリケーション事業
アプリケーション事業は、MFP向けソフトウェア製品や、Google Workplace※1及びMicrosoft Office 365※2に連携した業務用クラウドサービス「Gluegentシリーズ」のほか、金融機関向けシステム開発・構築支援、金融機関向け経営支援システム「ALM」※3の開発、導入・運用支援サービス等を展開している。「ALM」に関しては、地方銀行向けにおいて導入実績が豊富で、同市場に関しては同社のほか3社(日鉄ソリューションズ<2327>、データ・フォアビジョン(株)、日本ユニシス<8056>)で寡占状態となっている。また、事業規模はまだ小さいものの、HR Techソリューションとして、従業員のモチベーションを「見える化」するITツール「Willysm(ウィリズム)」や、オフィスのフリーアドレス化に対応した座席管理システム「YourDesk(ユアデスク)」のサービスを提供している。
※1 Google LLCがサブスクリプション形式で提供しているクラウドコンピューティング生産性向上グループウェアツール。
※2 Microsoftがクラウドサービスによってサブスクリプション形式で提供するMicrosoft Office製品群。
※3 ALM(Asset Liability Management):銀行の資産・負債を総合的に管理するソフトウェア製品。
3. 同社の特徴と強み
同社の特徴と強みは、国内で先駆してOSSをベースとした事業展開をしてきたことで、OSSに関する技術や運用ノウハウなどの知見が深いという点が挙げられる。OSSに携わる技術者のレベルや運用サポート体制は顧客企業からも高く評価されており、NTT<9432>グループやトヨタ自動車<7203>など日本を代表する大企業も顧客となっている。競合は日本電気<6701>(NEC)や富士通<6702>など大手IT企業となるが、これら企業は自社開発製品が主力でOSS関連製品は傍流となるため、同社にとって大きな脅威とはなっていない。OSS分野を専門にサポートしている競合も少なく、同分野では競争優位性を保っていると言える。
また、Linuxディストリビューター(商用Linuxの配布・サポートを行うことに特化した企業)として世界最大のRed Hat, Inc.とは創業時より緊密な連携関係にあり、「Red Hat Enterprise Linux」をはじめとする関連商品の販売・サポートで国内最大規模の代理店となっている。また、Javaを使ったシステム開発も設立当初より手掛けており、その技術基盤をベースとして、リコー<7752>のMFP向けソフトウェア製品を2009年に開発、事業化している。
なお、同社の商流はOSSのシステム開発やサポートサービス、金融業界向け製品・サービスを除けば、間接販売が大半を占めており、主に大塚商会<4768>などSI事業者を経由して最終顧客に販売されている。2021年12月期実績で見ると、大塚商会向けの売上構成比率が全体の23.4%、(株)ネットワールド向けが10.5%を占めている。また、海外売上比率は4.0%であり、そのうち63.4%は北米向け売上が占めている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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