今週の新興市場は続伸。米国では7-9月単位労働コストが予想外に低下し、10月雇用統計も弱めの内容だったことから労働需給の緩和と賃金上昇率の低下で米インフレ率の低下基調が続くことに市場は自信を強めた。12月米連邦公開市場委員会(FOMC)でも利上げは見送られるという観測と利上げ打ち止め観測が強まり、先週後半の米国株式市場は大幅高。先週末3日が祝日だった国内株式市場はこうした米国情勢を織り込む形で今週初めに急騰、週間で続伸した。なお、9日に米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は、データ次第では追加利上げを実施することを示唆する発言を行い、米追加利上げ観測がやや戻り、翌10日の国内株式市場はやや不安定な値動きとなった。今週の騰落率は、日経平均が+1.93%だったのに対し、東証グロース市場指数は+1.92%、東証グロース市場250指数(旧マザーズ指数)は+2.30%だった。
個別では、決算発表が好感され「2024年問題」に関連してテーマ性があるとの見方も買いを後押しフレクト<4414>、自社株買いと株主優待制度の導入を発表したイルグルム<3690>、業績予想を上方修正したセレンディップ<7318>などが週間騰落率値上がり上位に入った。その一方、先週上昇の反動で売られたアクアライン<6173>、決算発表内容が嫌気されたサンクゼール<2937>が週間騰落率値下がり上位となった。週間売買代金上位にはカバー<5253>とジーエヌアイグループ<2160>が引き続き入った。
■米インフレ関連指標に注目、IPOは1社
来週の新興市場は続伸か。米国では10月消費者物価指数と10月小売売上高が発表される予定。消費者物価指数(前月比)は9月の+0.4%に対し10月は+0.1%に伸びが縮小するとみられている。労働需給が緩和傾向にあることや賃金上昇率が低下傾向に入り始めていることを考えれば、インフレ率も低下してくることが見込まれる。10月小売売上高も9月実績が上振れた反動で減少する可能性が高く、米消費の減速観測も台頭することが期待できる。インフレ率の低下傾向確認と消費減速の観測台頭で、12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利が引き続き据え置かれるという見通しが強まれば、金利低下とともに成長株を中心とした株式市場への資金流入がみられよう。これを受けて日本国内でも、投資家の新興市場銘柄への物色は強まると思われる。
また、15日には米中首脳会談が開催される見通しとなったことから、米中関係改善への期待感も株価にポジティブな影響を及ぼす可能性がある。なお、中東情勢については、イスラエルがイスラム勢力ハマスの掃討を目指すと同時に人質解放と民間人避難への配慮から戦闘の一時休止に動き始めた。このため、中東情勢の急激な不安定化でリスク回避が一気に強まるリスクは限定的とみられる。
来週の新興市場では業績が順調な拡大基調にある銘柄で、投資家がリスク選好の姿勢を引き続き優勢にすれば、業績が順調に拡大基調にあり、株価が出直りの動きを継続することを期待できるものに、買いが入りやすいだろう。個別では医療福祉業界向けに人材紹介・人材派遣などを手掛けるトライト<9164>、コンテンツ制作・配信を主力とする好業績のカバー<5253>などに注目しておきたい。なお、来週は11/16にJapan Eyewear Holdings<5889>が東証スタンダードへ上場する。そのほかバリュークリエーション<9238>の公開価格が決定、アスマーク<4197>はBB期間入りとなる。
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