2. 2024年3月期上期決算の概要
エムアップホールディングス<3661>の2024年3月期上期の業績は、売上高が前年同期比14.2%増の8,865百万円、営業利益が同22.7%増の1,457百万円、経常利益が同22.7%増の1,472百万円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同24.5%増の795百万円とコロナ禍からの回復とともに増収増益を実現した。また、通期計画(特に利益面)に対してもハイペースで進捗している。
主力の「ファンサイト事業」「EC事業」「電子チケット事業」がそれぞれ順調に拡大した。「ファンサイト事業」は、新規FC獲得とそれに伴う課金会員数の増加が業績の伸びをけん引した。「EC事業」は、回復するライブやコンサートと歩調を合わせた取り組み(商品取扱高の拡充)や会員限定販売・事前販売などのファンニーズに寄り添ったサービスが奏功した。「電子チケット事業」についても、有観客でのライブ、イベントが増加するなかで、電子チケットの強み(感染予防対策など)を生かした発券枚数の伸びに加え、周辺サービス(オンラインくじ等)を付加した顧客単価の向上により順調に伸びている。
利益面でも、オフィス増床や円安に伴うAWSサーバー代の上昇などによる費用増に加え、新規事業等への先行費用が発生したものの、会費の値上げ効果や収益性の高い「EC事業」「電子チケット事業」の伸びにより大幅な増益を実現し、営業利益率も16.4%(前年同期は15.3%)に改善した。
財政状態については、「EC事業」の拡大等により売上債権が増加した一方、現預金が減少したことから、資産合計は前期末比0.7%減の16,328百万円とほぼ横ばいで推移した。自己資本についても、内部留保の積み増しによるプラス要因と、自社株買い及び有価証券評価差額金の変動によるマイナス要因がほぼ均衡し、同0.2%減の6,152百万円と横ばいで推移したことから、自己資本比率は37.7%(前期末は37.5%)と同水準を確保した。
主なセグメント別の業績は以下のとおりである。
(1) コンテンツ事業
売上高は前年同期比16.3%増の7,476百万円、セグメント利益は同22.7%増の1,438百万円と増収増益となった。そのうち、主力の「ファンサイト事業」については、FCプラットフォーム(Fanpla Kit)の利用拡大等により新規案件獲得が堅調に推移し、それに伴って課金会員数が増加したことや、会費の値上げも奏功し前年同期比14.8%増の6,611百万円に伸長した。新規FC開設は55件(年間目標は75件)、新規獲得に伴う会員数の増加は約7万名に上り、総会員数も年間目標(前期末比10%増)に向けて順調に進捗した。また、「EC事業」についても、回復するライブやコンサートと歩調を合わせ商品の取扱高を増加させたことや、コンサート会場での電子決済及び事前販売・会場受取サービスへの需要の取り込み、会員限定販売の実施等により同28.4%増の865百万円と大きく伸びた。利益面でも、新規事業(新サービス)等への先行費用を継続しながらも、増収による収益の押し上げにより大幅な増益を実現した。特に会費の値上げ効果や収益性の高い「EC事業」の伸びによりセグメント利益率も19.2%(前年同期は18.2%)に改善した。
(2) 電子チケット事業
売上高は前年同期比3.4%増の1,370百万円、セグメント利益は同17.1%増の396百万円と増収増益となった。有観客でのライブ、イベントが増加するなかで、電子チケットの強みを生かしたシェア拡大により、電子チケットの発券枚数が増加した。また、不正転売に対応すべく、チケットトレードによる二次流通の普及や利用拡大に取り組んだほか、プロ野球球団の公式チケット二次流通サービスも開始し、スポーツ領域でのチケット拡大に向けた取り組みも本格化した。電子チケットの発券枚数は前年同期比17.6%増の280万枚に増加し、通期目標(550万枚)に向けても順調に進捗した。一方、チケットトレードの成立件数は、大型ツアーが下期に開催されることもあり12.3万枚と通期目標(35万枚)に対して出遅れたものの、案件数は536件(前年同期比16.2%増)と順調に拡大している。また、電子チケットに加え、オンラインくじ(くじプラ)などによりチケット1枚あたりの単価向上を図ったほか、周辺領域サービスであるプロ野球等のカードコレクションアプリについても、新たに開始したバレーボールや女子バスケットボールなどが収益貢献した。利益面では、収益性の高いチケット販売(手数料収入)の伸びや単価向上等により大幅な増益を実現し、セグメント利益率は28.9%(前年同期は25.5%)に改善した。
3. 2024年3月期上期の総括
以上から、2024年3月期上期を総括すると、コロナ禍からの回復が本格化するなかで、ハイペースで進捗している業績面はもちろん、アーティストとファンの関わり方の変化やファンサービスのDXを見据えた様々な取り組みが軌道に乗ってきたところは、今後に向けても評価すべきポイントと言える。特に「ファンサイト事業」を起点として「EC事業」、「電子チケット事業」がバランス良く利益成長を実現していることは、同社ビジネスモデルの優位性が発揮されている証左と捉えることができるだろう。また、活動面についても、ファンダム形成に向けた新サービスの展開や新規事業の立ち上げ、韓国・中国を中心とするグローバル戦略(海外IPの獲得、FC展開)の推進、次世代ビジネスの取り組み(VR、NFT等)など、短期・中長期の目線から各方面で進展を図ることができた。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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