今週の新興市場は一進一退が続いたが、結局反落となった。米金融決算では大手行のほか警戒されていた地銀でも概ね底堅い内容が確認され、安心感に繋がった。米動画配信サービスのネットフリックスの決算は冴えなかったが、共有アカウント対策や広告付きサービスの先行きを楽観視する向きも多く、同社株価が堅調に推移したことが投資家心理を上向かせた。一方、米セントルイス連銀のブラード総裁からタカ派発言が出たほか、米電気自動車メーカーのテスラの決算が低調で同社株価が急落したことが個人投資家マインドにも影響したとみられ、週末は手仕舞い売りが膨らみ、大きく下落した。なお、週間の騰落率は、日経平均が+0.25%であったのに対して、マザーズ指数は-0.49%、東証グロース市場指数は-0.67%だった。
個別では、決算などを手掛かりにロコンド<3558>、プログリット<9560>、FPパートナー<7388>、関通<9326>、フレクト<4414>などに物色が集中し、週間上昇率ランキング上位に並んだ。宇宙ベンチャーのispace<9348>は民間月面探査プログラムの順調な進捗に加え、民間では世界初となる月面着陸の予定日が最短で26日(日本時間)になると発表したことで人気化した。一方、上場後に上値追いが続いていたアクシスコンサル<9344>は利食い売りが続き、週間下落率トップとなった。また、Fusic<5256>、ビズメイツ<9345>、アイビス<9343>、Arent<5254>など直近の新規株式公開(IPO)銘柄の一角が下落率ランキング上位に入った。
■週末には植田日銀総裁の会見、資金の逃げ足の速さに注意
来週の新興市場はもみ合いか。東証プライム市場の主力株の決算発表が本格化していくため、新興市場はやや物色の対象外とされそうだ。一方、米国ではアルファベットやマイクロソフト、アマゾン・ドットコムなどIT大手の決算が予定されており、市場への影響力が大きいだけに、個人投資家心理を通じて日本の新興株にも影響が波及することが想定される。
週末には日本銀行の植田和男総裁にとって初の金融政策決定会合の結果と植田総裁の記者会見が予定されている。また、米国では個人消費支出(PCE)コアデフレーターが発表予定であるため、神経質な展開が予想される。日銀金融政策決定会合は政策の現状維持が大方の予想だが、公表される経済・物価情勢の展望や植田総裁の記者会見を通じて近い将来の政策修正を匂わせる可能性も想定されよう。国内は大型連休の関係で翌週の立会いは週初2日間に限られ、連休中には米連邦公開市場委員会(FOMC)も控えているため、週末にかけては手仕舞い売りが膨らむ可能性に注意したい。
今週は値持ちの良かった銘柄の一部が一気に値崩れした一方、需給主導でQDレーザ<6613>が急騰するなど荒い動きが見られた。好決算銘柄への買いも確認されているが、ispaceなど一部の銘柄に買いが集中する動きも強く、短期の値幅取り狙いといったマネーゲームの様相を強めている感も否めない。常に資金の逃げ足の速さには注意したい。
一方、「ひふみ投信」で知られるレオス・キャピタルワークス<7330>が25日に、AI技術のコンサルティングなどを展開するRidge-i<5572>が26日に上場する。その後のIPO予定がまだ発表されていないこともあり、IPO物色は活発化しそうだ。今週、好決算を発表したFPパートナー、関通はPERなどバリュエーションの観点からみても過熱感に乏しく、引き続き堅調な推移に期待したい。
<FA>
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