2. 事業の概要
昭栄薬品<3537>の事業は、「化学品事業」「日用品事業」「土木建設資材事業」の3つのセグメントで開示されている。各セグメント別の売上高比率(2024年3月期実績)は、化学品事業が90.8%、日用品事業が3.3%、土木建設資材事業が5.9%となった。
(1) 化学品事業
同社が主に取り扱う化学品はオレオケミカルと称されるもので、植物由来の天然油脂を原材料としている化学製品及びその合成品である。具体的なオレオケミカルは、ヤシ油やパーム油などの植物性油脂を原料として生産される脂肪酸、脂肪族アミン、脂肪族アルコール、グリセリンなどで、オレオケミカルはプロセスの名称であると同時に、そのプロセスで生産される製品の総称としても使用される。一方でオレオケミカルの対極にあるのが、主に石油を原料とするペトロケミカルだが、広義では石油由来の製品の一部もオレオケミカルに含まれている。
この分野において同社は、メーカーではなく商社である。国内のオレオケミカルの領域における有力メーカーは花王だが、同社は花王の主要販売代理店としての地位を築いている。具体的には、同社の仕入額の約40%は花王のケミカル事業部が占めている。反対に花王の側から見ると、ケミカル事業部の販売代理店として同社の規模はトップクラスの位置にあるが、特に高級アルコールの扱いでは同社がトップである。
同社は、オレオケミカル製品を主として花王から仕入れ、それを主に界面活性剤メーカーに販売している。界面活性剤とは互いに反発する性質を有する2つの物質の界面張力を下げる性質を持つ物質の総称であり、具体的なものとして石鹸や洗剤がある。水と油のように異なる性質のものを混ぜ合わせる作用を生かして、界面活性剤は石鹸・洗剤以外にも食品や化粧品、医薬品、繊維製品、染料・顔料・塗料などに幅広く使用されている。また同社は、上記界面活性剤メーカーから界面活性剤を仕入れ、化粧品や食品、医薬品などの最終製品メーカーへの販売も行っている。界面活性剤メーカーを中心に置くと、原料(オレオケミカル製品)の供給と、製品(界面活性剤)の販売の両方を行っていることになる。
(2) 日用品事業
日用品事業には1987年に家庭用洗剤を商品化して参入した。当時はグループ内に生産子会社を有していたが、2014年にすべての生産活動から撤退したため、現在は化学品事業との連携等で外部の協力工場に生産を委託し、企画・立案に力を入れたファブレスメーカーとして活動している。
生産品目はあらゆる生活消耗材を軸として、例えば洗濯機の洗濯槽用洗剤、冷蔵庫脱臭剤、靴脱臭スプレー等多岐にわたる。これらをOEM(相手先ブランド)供給を行うのが主力事業となっている。近年は自社ブランドでの販売にも注力しているが、自社ブランドのブランド力はまだ弱くeコマース(EC)とホームセンターなどの販路に限定されているため、売上構成比は数パーセントに留まっている。
OEM供給先を含めたベースでの販路別内訳(2024年3月期)は、生協が約56.4%、量販店が31.5%、メーカーが7.4%、ネット・販売が3.1%、その他(業務用、ドラッグストア、その他)が1.6%となっている。
(3) 土木建設資材事業
土木建設資材事業は、大きく分けて「地盤改良」「コンクリート構造物の補修・補強」「汚染土壌の改良」の3つの領域に分かれており、それぞれの領域で使用される薬剤類を供給している。同社では、これらのうち「地盤改良」「コンクリート構造物の補修・補強」を土木建設資材関連、「汚染土壌の改良」を環境関連として分けて表示している。2024年3月期実績では土木建設資材関連の売上高が81.8%、環境関連の売上高が18.9%という構成となった。
土木建設資材事業では、同社は工事を行わず、工事を請け負った施行会社からの注文を受けて工事で使用する薬剤を供給(化学メーカーからの仕入販売)する。施工会社と化学品メーカーとの間に立つ同社は、豊富な情報量と情報収集力を生かし、製品情報や素材・工法開発に関する顧客ニーズ、フィードバック等の提供を付加価値としている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 寺島 昇)
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