1. 2022年10月期第2四半期の業績概要
ジェイ・エス・ビー<3480>の2022年10月期第2四半期の業績は、売上高31,432百万円(前年同期比10.1%増)、営業利益5,559百万円(同19.3%増)、経常利益は5,500百万円(同19.3%増)、親会社株主に帰属する四半期純利益は3,887百万円(同26.6%増)と、大幅な増収増益を達成し、売上高及び各段階の利益は全て前年同期比2ケタ成長を継続した。また、期初予想比では、売上高は0.3%増とおおむね計画どおりであったが、営業利益は5.5%増、経常利益は5.8%増、親会社株主に帰属する四半期純利益は11.9%増と好決算であった。2021年4月から適用される収益認識会計基準等の変更に伴い、売上高の増加率は利益の増加率に比べて低い伸びにとどまった。一方、予想を上回る各利益の増加は、売上高が計画どおりに増収したことに加え、広告宣伝費、支払手数料の一部未消化やコロナ禍の再拡大に伴う行動抑制による一般経費の一部未消化などにより、販売費及び一般管理費が期初予想を10.5%下回ったことも影響した。コロナ禍に備えて多めの広告宣伝費を計画していたが、2022年10月期第2四半期は営業活動が順調となったため抑制できたようだ。親会社株主に帰属する四半期純利益の大幅な増加は、固定資産売却益を特別利益に計上したためである。
2022年10月期第2四半期におけるわが国経済は、コロナ禍による厳しい状況が緩和されつつあり、持ち直しの動きが見られる状況となってきた。企業の景況感も改善傾向が続いており、経済社会活動が正常化に向かうなかで景気が持ち直していくことが期待されるが、一方ではウクライナ情勢を背景とした先行きの不透明な状況に加え、資材・燃料価格の高騰等に伴う全般的な物価上昇や金融資本市場の変動や、建築資材など供給面での制約等による下振れリスクに留意が必要な状況となっている。
こうした経営環境の下、同社グループでは賃貸入居需要の集中する最繁忙期(3月~4月)を迎えて、前期より取り組みを強化したオンラインによる非対面での営業活動を中心に、コロナ禍における感染防止策を徹底した営業スタイルを踏襲し、顧客へのより積極的なアプローチを実践してきた。また首都圏において、大手デベロッパーとの関係強化による物件管理戸数の拡大にも注力した。他方、投下資本の循環過程として自社所有物件の一部を売却し、それに伴う固定資産売却益を特別利益に計上した。
同社グループでは、中期経営計画「GT01」(2021年10月期~2023年10月期)において、2021年12月に当初の計画数値を上方修正して進捗している。中期経営計画の中間地点に当たる2022年10月期第2四半期決算も、計画達成に向けて順調に推移していると評価できるだろう。
なお主力事業の不動産賃貸管理事業においては賃貸入居需要の繁忙期である第2四半期(2月~4月)に新規契約件数が増加することから、売上高は上期の割合が大きく、利益も上期に偏在する傾向があることに留意が必要だ。実際、学生マンションの入居者入れ替わりは年度末・年度始に集中しており、売上高・利益計上の時期に大きな偏りが生じる。すなわち、学生マンションの入替期である第2四半期に売上高・利益計上が集中し、第1、3、4四半期は、主に入居者募集の準備として費用を計上する期間となっている。結果として、売上高・営業利益の四半期別累計の推移では変動はあるものの、物件管理戸数増加に伴って年度単位では着実に右肩上がりで推移している。
2. セグメント別動向
(1) 不動産賃貸管理事業
売上高は29,744百万円(前年同期比10.5%増)、営業利益は6,192百万円(同19.8%増)と増収増益となった。収益認識会計基準等の適用により、従来の方法に比べて売上高は387百万円、営業利益は46百万円それぞれ減少しているが、営業強化と積極的な自社所有物件開発が奏功し好業績であった。
物件管理戸数は80,611戸(同4,665戸増)と順調に増加したうえ、高い募集力を背景に入居率は99.9%と、前年に引き続き高水準を確保した。「学生会館 Uni E’meal 三重大学前【食事付き】」「学生会館 Uni E’meal 富山大学前【食事付き】」、熊本県の「学生会館 ロイヤル 新大江【食事付き】」、鹿児島県の「学生会館 マニフィックリア 高麗【食事付き】」、山形県の「学生会館 UniS Court 山形【食事付き・山形大専用】」などの運営を開始した。こうした自社・保証物件増に伴う家賃・礼金等の増加や拠点増に伴う食堂売上の増加などから、増収となった。学生マンション業界では厳しい経営環境で倒産に追い込まれた学生寮運営会社があったなかで、同社グループの高い稼働状況は際立っている。一方、費用面では、戸数増による保証家賃増加、人員増による人件費の増加、自社所有物件増による減価償却費の増加など、業容拡大に伴う費用負担の増加はあったものの、増収が上回り増益となった。この結果、営業利益率は前年同期の19.2%から20.8%に上昇し、高い利益率を維持した。
(2) 高齢者住宅事業
売上高は1,408百万円(前年同期比0.7%増)、営業利益は133百万円(同37.6%減)となった。収益認識会計基準等の適用により、従来の方法に比べて売上高は25百万円減少しているが、売上原価が同額減少しているため、営業利益への影響はなかった。
2021年10月にオープンした「グランメゾン迎賓館 豊中刀根山」による売上高の増加はあったものの、コロナ禍における感染拡大傾向への懸念から高齢者施設に入居する時期を先延ばしにするなど、一時的に入居を控える動きもあり、運営する高齢者施設の稼働率は全体的に弱含みの状態で推移した。一方、費用面では派遣社員の利用増に伴い人件費が増加した。コロナ禍によるスタッフの欠員を派遣社員でカバーしたためである。以上から、営業利益率は前期の15.3%から9.5%に大きく低下した。
(3) その他の事業
売上高280百万円(前年同期比14.5%増)、営業損失40百万円(前年同期は86百万円の損失)となった。学生が本気で商売を学び実践する47都道府県地域産品セレクトショップ「アナザー・ジャパン」(2022年8月、東京駅前で開業予定)を年間スペシャル・サポーターとして支援することを決定し、学生支援の取り組みを積極的に展開している。日本語学校事業では、コロナ禍の断続的な再拡大に伴う入国制限の長期化の影響を受け、待機留学生の発生や受け入れ時期の遅延が継続しており、事業収益は低調な状況で推移した。しかし、政府による水際対策の緩和等の動きもあることから、今後の事業収益の挽回に努める方針だ。また、子会社のスタイルガーデンが運営する第0新卒事業では、当初計画を上回る順調なペースで推移し、その他の事業の成績挽回に貢献した。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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