1. 沿革
同社は、ラサ工業<4022>がシリコンウェーハの再生加工事業から撤退するのを受け、その設備を継承して2010年12月に設立された。以来、三本木工場(宮城県大崎市)と、2014年に台湾に新設した子会社である艾爾斯半導體股フン有限公司の台南工場(2015年竣工)の2工場体制でシリコンウェーハの再生加工事業を展開してきた。
2017年には中国でのプライムウェーハ事業の進出を発表し、2018年に中国の国有企業である北京有色金属研究総院(現 有研科技集団有限公司 以下、GRINM)及び福建倉元投資有限公司(以下、福建倉元)との3社間で、合弁会社となる北京有研RS半導体科技有限公司(以下、BGRS)を設立した。同時に、BGRSがGRINMの子会社でシリコン部材やプライムウェーハの製造販売を行うGRITEKに出資し、完全子会社化した。BGRSへの出資比率は同社が45%、GRINMが49%、福建倉元が6%となっており、同社の出資比率は50%を下回る。しかし、福建倉元は同社代表取締役社長である方永義(ほうながよし)氏の親族が運営する投資会社で同社側が実質的に50%以上を保有し、BGRSの董事会を構成する董事5名のうち3名を同社が指名していることから実質的に経営権を有しているとみなし、連結対象子会社としている。BGRSが複雑な出資スキームとなっているのは、中国現地資本の出資比率が50%以上であれば内資企業として取り扱われ、中国政府や地方政府から設備投資等で各種補助金の取得が可能なこと、また、税制面での優遇メリットも享受でき、外資系企業に対して競争上優位に立てるためだ。
GRITEKは事業のさらなる拡大を図るため、2018年に山東省徳州市の地方政府と合弁で山東有研半導体材料有限公司(以下、山東GRITEK、出資比率はGRITEK80%、徳州経済技術開発区景泰投資有限公司20%)を設立し、新たな製造拠点として山東工場を立ち上げた。山東省周辺には大手半導体メーカーが集積しているほか、理工系大学が近隣にあり優秀な人材を獲得しやすいこと、水道光熱費や社宅などインフラコストの面で優遇措置を享受できることなどが進出の決め手となった。また、2020年には12インチのウェーハ再生事業並びにプライムウェーハ事業を手掛ける山東有研RS半導体材料有限公司(以下、SGRS)を、GRINM及び徳州市政府系ファンド等と合弁で設立(設立当初の同社の出資比率は19.99%で持分法適用関連会社、現在はGRITEKを通じて株式を保有)し、中国での事業拡大を推進している。なお、GRITEKは2022年11月に上海証券取引所科創板市場に株式を上場した。GRITEKの出資比率は間接所有分を含めて40%強だが、実質的な経営権を有しているとみなし連結対象子会社に含めており、今後も子会社として維持する方針だ。
国内でのM&Aとしては、2018年に半導体商社の(株)ユニオンエレクトロニクスソリューション、2019年に半導体製造装置向け消耗部材(石英リング、シリコン電極)の製造販売を手掛ける(株)DG Technologiesを相次いで子会社化したほか、2023年10月にはVRFB用電解液の開発・製造のパイオニアとして1970年代以降長らく業界をリードしてきたLEシステム(旧 LEシステム)の事業を引き継ぐ子会社としてLEシステムを新設し、半導体市場に加えて再生可能エネルギー市場にも事業領域を拡大した。再生可能エネルギー市場への参入を決めた理由としては、同社が創業期から取り組む「再生」ビジネスで社会貢献するというキーワードに合致し、同事業を通じてSDGsに貢献できること、またVRFBの最大需要国である中国市場の開拓に向けに、同社が今まで築いてきたローカル企業や地方政府とのネットワークを生かすことが可能で、事業を拡大できると判断したためだ。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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