江口社長は慶応大学の出身。学生時代は合気道部の主将としてリーダーシップを発揮した。卒業後は鹿島建設に入社、10年近く経理等を務めた。営業をやりたくて何度も希望を出したが異動はかなわず、起業を志し退社を決意。都心のビル用地の仲介を始めた当時はバブル経済の最盛期で、ボーナスが毎年3割ずつ上がっていた頃だったという。会社を辞めるのはもったいなかったのでは、という質問には「サラリーマンが向いていなかったんですね」と笑う。
現在の中古住宅再生事業への転機はバブル経済崩壊。事業の縮小を余儀なくされていた頃、ブーム終焉した越後湯沢のリゾートマンションが200~300万円台の安値で競売に出ているのを新聞で見かけた。これなら自己資金でも買える、と思ったのがきっかけだ。あまり使用されていないリゾート物件の室内は状態が良く、少し手を入れれば売れた。その後は、徐々に関東に商圏を移し、15年程前から中古住宅をリフォームし平均単価約2千万円で再販するようになった。年々事業は成長し現在、年1000戸を扱う目前である。
中古住宅市場は、2025年には8兆円規模まで拡大すると見られている。また、首都圏のマンションでは、2016年にすでに中古の成約件数が新築の発売戸数を上回って、その後も同様の傾向が続いている。消費者も、かつてのような新築至上主義は薄れてきている。ただ、中古住宅の再販戸数では、同社は業界7位にとどまっており、市場の拡大をそのまま享受するにはまだまだ課題があると江口社長は言う。
「中古住宅の再販会社として業界トップ3には入りたいと思っています。当社の強みである仕入れの査定能力や権利調整能力を発揮し、より良い物件を仕入れると共に、自社内の設計・監理ノウハウを活かしたリフォームを実施していきます。じっくりと現在の業態を深堀りしていくつもりです」
同社は首都圏、札幌、関西圏に加え、4月には名古屋にも支店を展開し、事業エリアの一層の拡大を図っている。経営に一番大切なのは「『気』を出すこと」だという。元気、勇気、覇気の気だが、合気道では気を〆(メ)ず、四方八方(米)に発するという意味で、『米』の方の漢字を使うそうだ。
今後も、ますます意気軒高な同社から目が離せない。
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