(3) 東南アジア金融事業
2021年第3四半期の営業収益は12,074百万円(前年同期比0.5%増)、営業損失は2,981百万円(前年同期は4,322百万円の損失)となった。Jトラスト銀行インドネシア(以下、BJI)の営業損失幅が大幅に縮小したことに加え、JTRBの増益により、営業損失幅が大きく縮小した。なお、通期計画に対する第3四半期進捗率は、営業収益が63.8%、営業損失は通期予想(4,389百万円の損失)に対して2,981百万円の損失と、依然として損失を計上しているものの予想を上回るペースで推移しており、損失幅も改善傾向にある。
a) JTRB
キャンペーンや新商品投入効果により、預金残高は1,166億円(2021年9月末)と増加傾向にあり、COF(Cost of Funds)は2.6%と低位で推移している。また、貸出残高も法人向けを中心に拡大傾向が持続しており、9月は997億円となった。一方で、NPL比率は0.50%と引き続き低位安定で推移している。
トピックスとしては、世界中の銀行、保険、証券等をカバーする出版社であるGlobal Business Outlookより、パフォーマンス、イノベーション、業界の価値創造に意欲的な企業を表彰する「Most Customer Centric Bank Cambodia 2021」を受賞したことが特筆される。JTRBの顧客への商品知識・専門的な対応・優れたサービスの提供、オンラインブランドの存在感、さらに同行が果たしている社会的責任など、顧客第一主義の経営姿勢が高評価されたと言える。
b) BJI
長期間にわたって預金保険機構の管理下にあったBJIについては、同社グループでは最優先課題の1つとして再生に取り組んでいる。これまでに、同行の増資を行うとともに、不良債権の回収に特化した新会社Jトラストインベストメンツインドネシア(以下、JTII)を設立して、同行から不良債権を切り離して譲渡することにより、財務体質の改善を図るなど銀行再生を加速してきた。この結果、預金残高は2020年6月の854億円を底に増加傾向に転じており、2021年9月には1,138億円となった。大口の高金利預金から小口の低金利預金への誘導策が奏功し、COFは4.84%と過去最低水準をさらに更新した。また、コロナ禍の状況を踏まえ、一部の貸出先への選択的かつ慎重な貸出を継続しているものの、資金需要は強く、貸出残高は増加傾向にある。9月には不良債権の回収が進んだことに加え、貸出残高が677億円に増加したこともあり、NPL比率は4.64%へ低下している。
なお、2020年1月以降の新体制においてリスクマネジメントを強化した結果、新体制による貸出残高は全体の64%にまで拡大したが、新体制で積み上げたローンのNPL比率は2021年9月時点で0.10%にとどまる。一方、旧体制下で積み上げたローンのNPL比率は同12.86%と高水準にある。
トピックスとしては、2021年11月に、日本における戸建分譲住宅でシェアトップの飯田グループホールディングス<3291>と、飯田グループが分譲開発しているREIWA TOWN(プロジェクト全体で商業施設を含め1,650棟の分譲開発を予定)における住宅ローンの業務提携契約を締結した。
c) JTO
マルチファイナンス会社のJトラストオリンピンドマルチファイナンス(以下、JTO)は、オートローン業界の老舗として高い知名度があるが、コロナ禍に伴う市場の変化を考慮し、2020年4月以降は農機具ローンと小口のマイクロファイナンス以外の新規貸付を一旦停止し、慎重な与信スタンスを継続するなど、戦略的に貸付を抑制していることから貸付残高は減少傾向にある。この結果、NPL比率は上昇しているが、貸倒引当金控除後のネットNPLは2.65%にとどまる。
d) JTII
コロナ禍対策としてロックダウンが実施され、一般業種に対しては100%在宅勤務命令が発令されるといった厳しい事業環境下、2021年7月~9月の回収金額は大型案件のあった前年同期比では減少したものの、4月~6月比では89%増となったほか、7月~9月は計画を上回る回収金額を記録した。
(4) 投資事業
2021年第3四半期の営業収益は568百万円(前年同期比22.2%減)となったものの、営業利益は6,028百万円(前年同期は1,223百万円の損失)となった。これは、シンガポール控訴裁判所判決の一部履行としてGLなどより受領した3,700万米ドルを2021年12月期第1四半期に計上したほか、第2四半期には1,700万米ドル及び720万米ドル、さらに125万米ドルを計上し、第3四半期には116万米ドル弱及び997万米ドル弱を計上したことによる。
3. 財政状況と経営指標
2021年12月期第3四半期末の資産合計は、前期末比39,032百万円増の569,495百万円となった。これは主に、JT貯蓄銀行の株式譲渡を延期したこと等により、売却目的で保有する資産が155,646百万円減少した一方で、銀行業における貸出金が175,210百万円、銀行業における有価証券が14,186百万円増加したこと等による。負債合計は、同33,774百万円増の461,778百万円となった。これは主に、JT貯蓄銀行の株式譲渡を延期したこと等により、売却目的で保有する資産に直接関連する負債が141,109百万円減少した一方、銀行業における預金が215,265百万円増加したこと等による。また、資本合計については、同5,258百万円増の107,716百万円となった。これは主に、親会社の所有者に帰属する四半期利益を2,405百万円計上したことに加え、海外子会社等の換算差額の増加等によりその他の資本の構成要素が1,894百万円増加したこと等による。
以上の結果、2021年12月期第3四半期末の親会社所有者帰属持分比率は16.9%(前期末は17.3%)となった。同比率は2017年3月期末の24.2%から低下しているものの、2020年度の東証1部銀行業平均の4.80%やその他金融業平均の6.21%を大きく上回る強固な財務基盤を維持している。今後は利益の積み上げに伴い、徐々に改善に向かうと予想される。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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