今週の新興市場は続落。週明け前、日本銀行の植田総裁がマイナス金利政策を解除するための条件が年内に揃う可能性はゼロではないと発言したことが伝わった。これに伴い、国内の長期金利が大幅に上昇、週初の新興市場は大幅安でスタートした。一方、その後は国内長期金利の上昇が一服したほか、米8月物価指標でコアインフレの前年同月比での鈍化基調が確認されたことで金融引き締め懸念が後退し、新興株も下げ渋った。ただ、9月の中間配当の権利取りを狙った買いが強まるなか、新興市場には資金流入が少なく、マザーズ指数は一進一退にとどまった。先週の騰落率は、日経平均が+2.84%だったのに対し、東証グロース市場指数は-1.34%、マザーズ指数は-1.38%だった。
個別では、前期下振れ着地に加えて今期2ケタ減益見通しが失望されたブレインズテクノロジー<4075>、はてな<3930>、業績予想を下方修正したウェルブレイド・ライゼスト<9565>、第1四半期が大幅な営業減益となったエッジテクノロジー<4268>、悪くない決算ながらも出尽くし感が強まったtripla<5136>などが週間で大きく売られた。週間売買代金上位ではGENDA<9166>が-17%だった一方、株主優待制度を実施したイントランス<3237>、第1四半期が大幅増益となったイメージ・マジック<7793>、株式分割を発表したアジャイル<6573>、今期見通しが好感されたINTLOOP<9556>、みずほ銀行と法人向けスキル・人材マッチングプラットフォームの運営・開発を行う合弁会社を設立すると発表したココナラ<4176>が大きく買われた。カバー<5253>はANYCOLOR<5032>の決算が刺激材料となり連れ高となった。
■既存新興株には厳しい需給環境か、IPOは4社
来週の新興市場は神経質な展開か。19-20日に開催される米連邦公開市場委員会(FOMC)では政策金利の据え置きが決定されるだろうが、その先の年内の追加利上げを巡っては投資家の間でも見解が分かれている。今回は政策金利見通しも公表されるが、恐らく今年の年末中央値は年内あと1回の追加利上げを示唆することになるだろう。一方で、データ次第で政策を決めていく従来の方針は維持され、過度に金融引き締め懸念が高まることはないと思われる。ただ、原油市況の高値更新が続くなか、今週末の米10年債利回りは4.33%と、8月22日に付けた4.36%に迫る水準にまで大きく上昇してきている。金利先高観がくすぶるなか、FOMC後の金利動向に神経質な展開が予想される。
21-22日には日本銀行の金融政策決定会合も開催される。一部報道でマイナス金利解除への思惑が急速に高まる場面もあったが、今週末には植田総裁の発言と市場解釈にギャップがあるとする報道が伝わり懸念は後退した。追加政策修正を巡る思惑はくすぶるだろうが、今回の金融政策決定会合は無難に消化されるだろう。
来週は会計分野に特化した人工知能(AI)ソリューション事業を展開するファーストアカウンティング<5588>を含め合計4社の新規株式公開(IPO)がある。その先もIPOが多く予定されており、資金確保を背景に既存の新興株には厳しい需給環境が続きそうだ。ファーストアカウンティングは価格条件のロックアップ解除の動向が気掛かりだが、高いテーマ性や公開規模の小ささ故の需給の引き締まりから注目されそうだ。ほか、個別では、好決算が確認されたばかりのビジョナル<4194>やMacbeeP<7095>、エコナビスタ<5585>、INTLOOP<9556>などに注目したい。
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