「キッチンクラウド」では、料理デリバリーを軸に中食のサービスを提供する。主に家族層をターゲットとし、“第二の家庭のキッチン“を目指す。
一般的なデリバリーは商品が顧客に届くまで、生産者、卸売、店頭、配送などと事業者が分断化されているのに対し、同社は生産者から店舗、配送にいたるまですべての業務を一貫して自社で手掛ける。店舗・配達者の顔が見えることにより、作り手の想いやおいしい理由などを顧客に伝えることができるほか、従業員が配送を行うことで、他社に支払う手数料がかからないなどコストを削減できるため、食材にコストをかけられるという。
同社の強みであるビジネスモデル「生販直結」を活かし、鮮度、産地、生産者にこだわった幅広いメニューを展開する。宮崎県産の黒毛和牛「有田牛」を使い、6種類のソースでコクと奥深い味わいに仕上げた「幸福のハンバーグ」(1,300円)、国産若鶏を丸ごと一羽煮込み、数種類のスパイスをブレンドした「サムゲタン」(3.000円)、手作りのラー油や2種類の山椒で、本格的な四川料理の香り・痺れ・奥深いコクを追求した「麻婆豆腐」(1,200円)など、常時100種類程度を取りそろえる。
記者がお土産にいただいた「鯖棒寿司」(2,000円)は、同社の魚の流通を担う目利きが厳選した静岡県焼津のしめ鯖を使用しているという。肉厚なしめ鯖が二枚重ねられ、ゴマが香る酢飯とともに味わう贅沢な一品。通常ではなかなか手に入らない、独自ルートで仕入れたというしめ鯖は、臭みがまったくなく新鮮で、鯖の旨味が凝縮されていた。
プラスチック容器ではなく、皿、鍋など、店舗と同様の食器で提供することも特長のひとつ。使用後の食器の回収も自社で行う。エー・ピーホールディングス代表取締役社長 執行役員CEOの米山久氏は、「容器に入った弁当を運んでいるだけではおいしさが半減する。外食に行くような醍醐味を家庭で味わえるようにしたい」と話す。鍋料理は鍋のまま、せいろ料理料理はせいろのまま提供する、そうした演出も大事にしたいとの考えだ。
中食であるデリバリーだけでなく、内食であるミールキットや食材宅配などのサービス展開も取り入れ、これまでなかった“外食とECの中間のサービス”をねらう。今後はサブスクリプションモデルも視野に入れ、将来的には各地域に旗艦店を増やし、自社の拠点がない他エリアには、他飲食店へのフランチャイズチェーン(FC)展開も計画しているという。
米山氏は、「個食で委託代行しているデリバリーは今後発展しない。デリバリーや宅配の概念を変えていくことで、世の中を変えていかなければいけない」として、「現状のデリバリーサービスの固定概念を覆し、新たな宅配ビジネスとして世の中に提案していきたい」と語った。
※「キッチンクラウド」事業戦略発表・内覧試食会にて
(取材・文:細川 姫花)
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