2. 成長戦略
(1) 事業収益力の成長
TOKAIホールディングス<3167>は成長戦略として、新規エリアへの展開並びに既存エリアでのさらなる顧客獲得を推進することで収益基盤の拡大を図る。併せて各地域のニーズに合わせてライフスタイル・価値観の多様化に応える新サービスを、現場力を生かして展開し、収益化と事業拡大を目指す方針だ。
a) エネルギー事業
エネルギー事業では、点から線、線から面へと営業密度を高めながら効率の良いエリア拡大を図るほか、DXによる事業効率化、顧客満足度の向上を図ることで他社との差別化を図る。また、地域を活性化する新サービスの展開も推進する予定だ。
エリア拡大については、2025年度までの3年間で西日本・中京エリアで8拠点を新設する予定だ(愛媛県松山市内に2023年3月に1拠点開設済み)。DXの取り組みにおいては、タブレット端末と電子承認システムの導入によるペーパーレス化を進めているほか、LPWA※技術を活用した電子メーターを導入することで、検針業務の効率化だけでなく配送時期や配送ルートの最適化を図る。電子メーターは収集した検針データから配送予測精度が向上する機能を備えている。2020年から導入を開始し、既に設置率は70%に達しており2024年内に100%設置を目指す。新サービスについては、東海ガスのショールームにてコインランドリー事業を開始したほか、藤枝市との連携によりキャンプ場や道の駅を展開する予定となっている。また、LPガス等の顧客(集合住宅オーナー、戸建住宅)に対して太陽光発電システムの導入提案も進めていく。
※LPWA(Low Power Wide Area:低消費電力広域通信)。
業績目標は、売上高で2023年3月期の1,025億円から2026年3月期は1,087億円に、営業利益で74億円から78億円、顧客件数で82万件から94万件を目指す。なお、LPガス等の販売単価は2023年3月期に前期比2~3%下落したが、2024年3月期以降は横ばいで推移する前提である。顧客件数については直近3期間で11万件増加したことから、12万件の積み上げは可能と見られる。
b) 情報通信事業
法人向け情報通信事業では国内外でのDXニーズの高まりや、行政も含めたクラウドサービスの進展が見込まれ、ネットワークインフラの投資も含めて積極的な事業展開を図る。国内においては、光通信ネットワークインフラを九州エリアまで延伸するほか、東京-大阪間及び岡山の通信ネットワークを増強する予定だ。また、クラウドシステムの導入支援事業については、事業拡大の訴求点となるAWSプレミアパートナーの取得を目指す。導入件数や認定資格取得者数などは基準をクリアしているもようで、認定されれば国内で13社目となる。
業績目標は、売上高で2023年3月期295億円から2026年3月期は390億円、営業利益は47億円から51億円を目指す。売上高の成長に対して営業利益の伸びが小さく見えるのは、光通信ネットワークの設備投資増強で、減価償却負担の増加を見込んでいるためだ。
個人向け情報通信事業は従来と同様、販売チャネルの連携強化により顧客獲得を進めるほか、サービスラインナップの拡充により顧客の多様なニーズに対応する考えだ。業績目標としては、売上高で2023年3月期の244億円から2026年3月期は259億円、営業利益は6億円から14億円、顧客件数は84万件から93万件を目指す。利益率の上昇は販売ミックスの改善や減価償却負担の軽減が要因と見られる。
c) CATV事業
国内の有料放送サービス市場については緩やかな縮小傾向にあるが、CATVサービスについては今後もインターネットや電話サービスなど複合サービスでの提供が可能なことから市場全体は堅調に推移すると見ている。こうしたなかで、同社は新規エリアを含む顧客基盤の拡充及び顧客接点の強化により、契約件数の積み上げを図る。また、各グループ会社にて地域のニーズに合わせた新事業・新サービスを展開し、新たな収益の創出を目指す。
当面は2020年以降にグループ化した仙台CATV(株)と沖縄ケーブルネットワークを成長軌道に乗せてることを重点方針として掲げている。仙台CATVでは光化投資の実施により顧客獲得件数も伸び始めており、2024年3月期以降の利益化を目指す。沖縄ケーブルネットワークは黒字経営となっているが、顧客獲得の余地は大きいと見て営業リソースを強化し、顧客件数をさらに積み上げていく。新事業・新サービスについては、ネットオプションサービス(訪問サポート、遠隔サポート、ネットセキュリティサービス等)の拡充を図るほか、家電のサブスク・空き家管理サービスや、フィットネスジム起点の健康系事業、シェアサイクル起点の地産電気活用事業など各種サービスを企画開発して取り組んでいる。
業績目標は、売上高で2023年3月期の345億円から2026年3月期に379億円、営業利益で62億円から64億円、顧客件数で129万件から135万件を目指す。売上高の伸びに対して営業利益の伸びが小さいのは、光熱費の増加や人件費の増加を見込んでいるためだ。なお、同社はM&Aも引き続き検討している。実現した場合には業績の上乗せ要因となる。
d) 建築設備不動産事業
建築設備不動産事業では、グループのリソースを結集した総合建設事業者として中京エリアでの事業拡大を推進する。建築や設備工事、電気工事、土木、修繕工事など子会社によって異なる事業を展開しており、今まではそれそれが単独で受注活動を展開してきた。2024年3月期からはグループのリソースを結集して、建築プロジェクトなどを一括受注することで売上規模の最大化を図る方針である。これにより今後はグループシナジーも顕在化してくるものと期待される。グループ会社は土木工事をメインに展開する日産工業のほか、電気設備工事を行う中央電機工事、大規模修繕工事を行う(株)マルコオ・ポーロ化工、構造物などの非破壊検査事業を行う東海非破壊検査(株)など建築に関わる様々な事業を行っている。
業績目標は、売上高で2023年3月期の268億円から2026年3月期に373億円、営業利益で20億円から30億円を目標としている。事業セグメント別では今回の中期経営計画において情報通信事業の次に売上高、営業利益の増加を見込んでいる事業となり、今後の展開が期待される。
e) アクア事業
アクア事業については、静岡・関東・中京エリアにおける販売強化を推進する。特に、静岡県内については今までリターナブルシステムでサービスを提供してきたが、物流コストの上昇を受けてワンウェイシステムでの販売も開始する。2023年4月より給水型浄水ウォーターサーバーの販売も全国で開始しており、解約防止策の1つとして活用していく。
業績目標は、売上高で2023年3月期の75億円から2026年3月期に87億円、営業利益で5億円から8億円、顧客件数で17万件から19万件を目指す。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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