3. 新たな成長戦略
同社グループでは、電力の小売全面自由化による収益機会の増大やFITの買取期間が満了するユーザーの拡大という市場環境をとらえて、小売電気事業の急成長や蓄電池販売の拡大を図っている。また、2020年12月~2021年1月には小売電気事業における電力市場価格高騰の影響から収益が大きく圧迫された教訓を生かし、2021年3月期において6~7割であった市場調達比率を3割程度にまで抑えた。こうしたヘッジ手段の活用によって、調達価格変動リスクの低減を図る方針だ。
また、2021年3月期から、新たに事業用自家消費太陽光発電システムの提供にも着手している。工場の屋根などに太陽光発電システムを設置し、工場で作った電気を利用することで電力コストを削減するものだ。同社グループでは、電子ブレーカーやLEDなどの販売先の電力消費量を把握していることから、提案しやすいと見られる。また、中小企業向けの太陽光発電システム販売は、競合先が比較的少ない事業分野であり、業務用エアコンなどの従来商品に比べて利益率が高いようだ。
さらに、2022年3月期からは、電力販売契約(PPA:Power Purchase Agreement)に基づく太陽光発電システム販売も開始している。PPAでは、電力の需要家(事業者・個人住宅)がPPA事業者に敷地や屋根などのスペースを提供し、PPA事業者が太陽光発電システムなどの発電設備の無償設置と運用・保守を行う。 また同時に、PPA事業者は発電した電力の自家消費量を検針・請求し、需要家側はその電気料金を支払う仕組みだ。需要家は初期投資が不要なうえ、設置10年後には太陽光発電システムを譲り受ける仕組みとなっている。今後の成長戦略の一環である。
同社グループでは、エネルギーコストソリューション事業とスマートハウスプロジェクト事業で安定収益を確保し、小売電気事業の業績を伸ばすことで、今後も増収増益を続ける計画である。上述のように、現状に満足せず、新たな成長機会を求めて、次々に新事業に着手する積極的な経営姿勢は評価すべきであろう。
同社では例年、中期経営計画の見直しを行い、新中期経営計画を発表してきたが、2021年3月期からはコロナ禍拡大に伴う先行き不透明感もあって、未発表である。ただ、会社としての経営方針を明確化し、同社の投資家や従業員が同社の将来像を共有するためにも、中期経営計画の正式発表は有意義であると弊社では考える。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 国重 希)
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