1. 取扱商品
橋本総業ホールディングス<7570>の取扱商品は、管類、継手類、バルブ類、化成品類、工具関連機材などの管材類をはじめ、便器・手洗器、洗面化粧台などの衛生陶器・金具類、給湯関連や厨房関連などの住宅設備機器類、各種エアコンや各種ポンプなどの空調・ポンプであり、水回りのパイプやガス関連の商品が多い。主要な仕入先メーカーは住宅設備の積水化学工業<4204>や衛生陶器のTOTO、建材・電材のパナソニック ホールディングス<6752>、バルブのキッツ<6498>、エアコンのダイキン工業<6367>など、業界や日本を代表する大手有力メーカーが多い。なかでもTOTOからの仕入高は全仕入の約30%を占めており、メーカーにとっても同社は流通の要となっている。登録アイテム数は専門商材を中心に約250万点あり、主要倉庫では売れ筋を中心に常時約1万点以上を在庫しているが、各拠点でも地域に密着した在庫を約1,000点取りそろえ、一部は即日配送もしている。なお、2023年3月期第3四半期のセグメント別売上高構成比は、管材類28.8%、衛生陶器・金具類30.0%、住宅設備機器類18.3%、空調・ポンプ21.6%となっている。
管材関連約5兆円市場を深掘りするとともに、建材・電材も取り込む
2. 業界環境
同社の取扱商材は管材類や衛生陶器・金具類、住宅設備機器類、空調・ポンプで、業界としては建築資材業界、なかでも管材業界になる。同社が属する建設業界の市場規模は、新築・リフォームを合わせ70.5兆円、GDPの約10%を占め、管材業界の市場規模についても管工機材・住設機器・空調機器合わせて約5兆円と大きい。そうした管材業界のなかで、同社は1次卸として、多様なメーカーと全国の2次卸や工事店を結ぶ流通の要となっている。国内ではコロナ禍や少子高齢化といった課題を抱えているものの、足元の住宅メーカー受注は堅調であるほか、共働き世帯の増加に伴う保育施設や高齢化に伴う高齢者施設の増加、老朽化が課題となっている公共施設のリニューアルなど、需要は拡大している。中長期的な市場環境は堅調で、収益性においても成長性においても堅実な市場と言える。以上のような業界環境のなかで同社は、管材から環境・設備機材へ、さらには建材や電材、土木などへと事業領域を拡大していく考えである。
川上から川下までが一体となった強固なバリューチェーンを構築
3. 同社の強み
近年、MRO(間接資材)※の販売において、MonotaRO<3064>やアスクル<2678>、Amazon.com
※Maintenance, Repair and Operationsの略。生産に直結する原材料・資材・部品など専門性の高い直接材以外を指し、建築資材業界以外でも広く使用される工具や消耗品などの経費購買品のこと。
同社は、取引先向けに商品情報や地域~マクロの情報、人材の研修・教育などのサービスを提供することで業界自体を育成しているほか、設計段階から見積もりに参加するなどし、業界に深く関わっている。この結果、流通を高付加価値化し、仕入先との取り組みもより深いものとなる。このようにして同社は、メーカー、2次卸、ゼネコン、工事店と、川上から川下までが一体となった強固なバリューチェーンを構築している。これを同社は、仕入先、販売店、工事店及び同社による「4位1体」と呼んでいるが、インターネット通販やホームセンターが持ちえない強みとなっている。このほかにも、主要倉庫や各拠点で売れ筋を在庫していることや、経営相談や後継者育成などのサポート、IT技術の活用など、同社独自の強みがある。特に、IT技術については積極的に活用しており、24時間365日注文や在庫検索ができる会員専用Webサイト「OPS(Online Partner System)」を運営している。またネットカタログ「e設備NET/PRO」では、建築現場で必要となるカタログや図面などをWeb上から取り出すことができる。販売店からのWeb受注は売上の2割を超え、口座数も毎月伸びているが、販売店の効率化のため、さらに比率を引き上げる方針だ。これらの強みが評価され、同社は工務店の多くから支持されていると弊社では見ている。
在庫の積み増しと仕入・販売価格のコントロールにより収益性が向上
4. 収益向上に向けた取り組み
水道用材料からスタートした同社は、管材類全般から住宅設備機器類などへ取扱商材を拡大することで取引メーカーを増やしてきた。1980年代以降は全国展開を目指すエリア戦略を背景にシェアを拡大し、全国をカバーする管工機材・住宅設備機器卸へと成長した。近年はM&Aを積極化しており、2016年4月に持株会社体制に移行した。狙いは、共同営業・共同仕入・共同配送などによってグループ会社間のシナジーを発揮するとともに、西日本の深耕や、管材から電材や建材への領域拡大、インターネット取引など新たな事業への取り組みを強化することにある。ここ数年の収益性が向上しているのは、競争が起こりにくい低単価品やトレンド商品などの在庫を積み増すことにより、在庫リスクを取るようになったことが背景にあると考えられる。一方、コロナ禍や原材料価格高騰のように在庫リスクが取りづらい状況になった場合には、仕入価格や販売価格をコントロールすることで収益性の改善を図っている。このように、在庫の積み増しと仕入・販売価格のコントロールが、同社の収益性向上に寄与していると弊社では見ている。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 宮田仁光)
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