神戸物産<3038>は農畜産物の生産から製造加工、小売販売まで自社グループで行う食の製販一体企業として国内トップ企業である。食品スーパーの「業務スーパー」をフランチャイズ(以下、FC)展開しているほか、外食・中食事業やエコ再生エネルギー事業も手掛けている。店舗の徹底的な「ローコストオペレーション」と自社グループ商品の開発・生産技術力、輸入商品調達力を強みとし、顧客ニーズに合う商品をベストプライスで提供し続けることで成長を続けている。
1. 2023年10月期第2四半期累計の業績概要
2023年10月期第2四半期累計(2022年11月-2023年4月)の連結業績は、売上高で前年同期比12.0%増の221,968百万円、営業利益で同4.1%減の14,133百万円となった。「業務スーパー」の店舗数が順調に拡大(前年同期末比54店舗増の1,023店舗)したほか、直轄エリア※の既存店(以下、既存店)向け商品出荷額も前年同期比5.6%増と想定を上回る伸長となったことで売上高は2ケタ増収となったが、円安に伴う仕入コストの上昇並びに原材料価格やエネルギー価格高騰の影響による国内グループ会社の利益率低下が響いて営業利益は若干の減益となった。ただ、既存店売上高は食品スーパー業界全体の伸び率(約2%増)を上回るなど、消費者の節約志向の高まりを背景に「業務スーパー」の強さは維持した格好となっている。なお、営業外で為替変動に伴うデリバティブ評価損が1,659百万円発生したが、期末までにヘッジ商品の調整を行うことで評価損を解消していく意向だ。
※直轄エリアは、関西2府4県(淡路島除く)、関東1都3県、九州(鹿児島県、沖縄県除く)及び北海道で、それ以外は地方エリアとしている。
2. 2023年10月期の業績見通し
2023年10月期の連結業績は、売上高で前期比8.2%増の440,000百万円、営業利益で同6.8%増の29,700百万円と期初計画を据え置いた。第2四半期までの進捗率は売上高で50.4%、営業利益で47.6%と順調に推移しており、今後為替レートが社内計画を超えて大きく円安方向に進まなければ、売上高、営業利益ともに計画の達成は可能と見られる。「業務スーパー」の既存店出荷額が計画をやや上回るペースで今後も推移する可能性が高く、店舗数も前期末比40店舗増の計画が射程圏に入っているためだ。外食・中食事業については惣菜店「馳走菜」や焼肉オーダーバイキング「プレミアムカルビ」の好調が続いているほか、「神戸クック・ワールドビュッフェ」も客数が戻り始めており、営業利益で4期ぶりの黒字転換が見込まれる。
3. 中期経営計画
同社は3ヶ年の中期経営計画の業績目標として、最終年度となる2024年10月期に売上高4,100億円、営業利益320億円を掲げている。売上高には1年前倒しで達成する見通しだが、今後の経済情勢が不透明なことから見直しは行っていない。市場環境が悪化するようなことがなければ、営業利益も含めて達成可能な水準と弊社では見ている。同社は成長戦略として、引き続き業務スーパー事業における店舗数拡大とPB商品の拡充による持続的な成長を見込んでいる。「業務スーパー」の出店余地としては1,500店舗程度までは可能と見られ、成長余力は依然大きい。また、顧客サービスの向上と囲い込みを図るため、電子決済システム「Gyomuca」の導入を2023年10月期より本格的に開始しており、現在約140店舗まで導入が進んでいる。EC販売についても神奈川県や東京都で試験的に開始し、収益モデルの確立に向け様々な取り組みを実施しており、将来店舗が近隣にない空白エリアでの需要掘り起こしも進めていく。外食・中食事業では、店舗数増加による事業規模拡大を目指す。好調に推移している「プレミアムカルビ」は、オペレーション体制を確立した後にFC展開により出店ペースを加速していく。「馳走菜」は「業務スーパー」だけでなくドラッグストア等他の業態店舗への出店も今後積極的に進めていく。これらの施策を推進することで同社の業績は今後も着実に成長していくものと予想される。
■Key Points
・2023年10月期第2四半期累計の営業利益は減益となるも業務スーパー事業の成長持続で売上高は過去最高を更新
・為替変動がリスク要因だが、業務スーパー事業の成長路線は変わらず、2023年10月期も増収増益を目指す
・業務スーパーの出店余地は大きく当面は1,200店舗、長期的には1,500店舗を視野に入れ成長を目指す
(執筆:フィスコ客員アナリスト 佐藤 譲)
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