1. 会社概要
アーバネットコーポレーション<3242>は、東京23区、駅から徒歩10分以内の立地にこだわった投資用ワンルームマンションの開発・1棟販売(卸売り:BtoB)を基軸事業としている。用地取得からプラン・意匠設計、開発を行い、マンション販売会社・ファンド・富裕層等への1棟販売を手掛けており、「ものづくり」に特化しているところに特徴がある。設計事務所からスタートしたデベロッパーとして、モノトーンを基調とした外観、機能性やデザイン性、開発立地へのこだわりが入居者からの高い支持を受け、空室率の低さを誇っている。都心における不動産開発環境は、用地取得の困難な状況や開発コストの高止まり、建設工期の長期化などが課題となっているが、キャッシュ・フローの安定した投資用ワンルームマンションに対する人気は根強く、国内外の不動産投資家、将来の資産形成目的の若年層や相続税対策目的の富裕層、潤沢な資金を確保したファンドやリートからの需要に支えられ、業績は堅調に推移している。また、ストックビジネスの強化にも取り組んでおり、賃貸収益物件の取得に加えて、「ホテル事業」へも参入した。2023年8月に、成長資金の確保を目的とする新株予約権の発行を決議すると、戦略的な業務提携やM&Aを相次いで実現し、持続的な成長に向けて具体的な動きが活発化してきた。
2. 2024年6月期上期の業績概要
2024年6月期上期の連結業績は、売上高が前年同期比96.0%増の11,421百万円、営業利益が同308.8%増の828百万円と大幅な増収増益となった。主力の「不動産事業」における投資用ワンルームマンションの販売戸数が大型プロジェクトの影響もあり5棟342戸(前年同期は4棟149戸)と大きく拡大した。特に、国内ファンドからの引き合いが強く、ファンドへの1棟一括直接販売も好調であったようだ。また、「ホテル事業」についても、国内旅行需要の回復やインバウンドの増加等により、客室単価・稼働率ともに好調に推移し、損益分岐点売上高を上回った。利益面では、用地価格や建設資材価格の高止まり、工事関連人件費の増加などにより原価が上昇したものの、増収による収益の押し上げや「ホテル事業」の黒字化により大幅な増益となった。また、活動面では、トランクルーム事業を展開するストレージ王<2997>との業務提携や、東京都南西部並びに神奈川県北部において戸建・テラスハウスの分譲事業等を手掛ける(株)ケーナインの完全子会社化を実現し、持続的成長に向けて具体的な道筋(開発エリア及び事業領域の拡大、用地情報力の強化など)をつけることができた。
3. 2024年6月期の業績予想
2024年6月期の連結業績については、ケーナインの連結化による上乗せ分を加味し、期初予想を増額修正した。売上高で前期比33.2%増の27,000百万円、営業利益で同4.9%増の2,550百万円と増収増益基調の継続により、売上高、各段階利益ともに過去最高業績を更新する見通しである。引き続き「不動産事業」における販売戸数の拡大が増収に寄与する。前提となる販売戸数は651戸(前期比67戸増)を予定しており、既にすべてが契約済となっている。また、「ホテル事業」についても、国内旅行需要の回復やインバウンドの増加等を背景として、年間を通じて客室単価・稼働率ともに安定推移し、売上高の拡大とともに利益も積み上がる想定である。
4. 今後の方向性
同社の成長戦略は、既存事業の拡大を軸としつつ、ストックビジネス(自社保有の賃貸収益物件等)や子会社によるBtoC事業(マンション管理及び賃貸業等)の拡大により、事業ポートフォリオの拡充と財務基盤の安定化を図るものである。特に既存事業については、都心での用地価格が高騰しているなかで、将来リスクも念頭に入れつつ、これまで以上に選別的な用地取得に取り組み、事業環境や景気変動に柔軟に対応しながらも、持続的成長を目指す方針である。足元では、今般の東京証券取引所(以下、東証)による「資本コストや株価を意識した経営の実現に向けた対応について」などを背景として、戦略的な業務提携やM&Aの実現など、より成長を意識した動きが活発化しており、新たなステージに向けた方向性が具体的に見えてきた。また、「サステナビリティ基本方針」に従い、持続可能な社会実現への貢献を企業価値の向上に結び付けていく姿勢を明確に示しており、パートナーとの様々な価値共創にも意欲的である。
■ Key Points
・2024年6月期上期は販売戸数の拡大やホテル事業の黒字化により大幅な増収増益を実現
・活動面でも、戦略的な業務提携やM&Aなど、持続的な成長に向けた動きが活発化
・M&Aによる上乗せ分を加味し、2024年6月期の業績予想を増額修正。過去最高業績を更新する見通し
・今後も既存事業の拡大を軸としつつ、M&Aも視野に入れた事業ポートフォリオの拡充により持続的な成長を目指す方針
(執筆:フィスコ客員アナリスト 柴田郁夫)
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