3. ヘルステックのフル活用
chocoZAPの急成長の要因としてヘルステックの活用が不可欠である。chocoZAPアプリは、入退会、日々の入退館、混雑情報の確認、ライフログ・顧客特性からAIが最適な運動を提案、おすすめ動画の配信、継続を支えるゲーム機能(くじ引き・すごろくなど)、顧客同士のコミュニティ機能などで不可欠な存在となっている。また、各店舗に平均10台設置された監視カメラ映像をAIが解析し「不審な行為」や「転倒」を検知した場合には、適切な対処を遅延なく行える体制が整っており、無人店舗のセキュリティ確保に大きく貢献している。また、体組成計、ヘルスウォッチ、様々な新規アプリによるライフログの蓄積は顧客サービスにおいて重要な役割を果たしている。
同社は2022年6月にDX専門子会社であるRIZAPテクノロジーズ(株)を新設した。Web・UIUXデザイナー、デジタルマーケター、データアナリスト、エンジニアなどのDX人財を積極的に採用し、育成している。現在では、同社のDX人財は総勢130名超となり、ヘルステック企業としてだけでも大手に位置付けられることになる。内製化率100%となったことでナレッジ資産蓄積や開発速度の向上が成果として顕在化する。筋トレやトレーニングジムの業界にはない発想と専門性で、chocoZAP事業の集客や満足度向上に貢献している。
4. 大きな出店ポテンシャル
chocoZAPは大都市を中心に店舗網を広げ、2024年5月現在で1,500店に拡大した。同社では、中期経営計画2026年3月期に2,800店、2027年3月期に3,800店、長期的には1万店を目指すというビジョンを掲げている。その背景には、小商圏で確実な会員獲得や収益化が可能であることに確信を持っている点がある。chocoZAPの店舗利用者は1km以内に居住する人が60%、2km以内に居住する人が85%である。逆に言えば、1~2km圏内に一定以上の人口があれば成立する小商圏ビジネスモデルと言える(コンビニエンスストアの商圏は500m前後と言われている)。また地方都市への拡大も可能性を広げた。2024年3月期は、出店の51%が大都市店舗(東京都、千葉県、神奈川県、愛知県、大阪府、福岡県)であるのに対し、49%はそれ以外の地方都市の店舗だった。店舗当たりの会員数では大都市店舗を下回るものの、固定費を安く抑えられることで十分収益性が成り立つ。
立地においても、新たな可能性が示されている。2024年5月には、高速道路1号店となる「chocoZAP日本平PA(上り、東名高速道路)」が開店した。高速道路のヘビーユーザーである流通網を担うトラックドライバーの健康増進や新たなリフレッシュの機会を提供できる施設として、トレーニングマシン各種、マッサージチェア、ゴルフ練習ブース、ピラティス、ワークスペースなどの各種サービスを24時間体制で提供する。SA・PA専用の「chocoZAP都度払い」を全国初導入し、1回880円(税込み)の利用料で、chocoZAP会員以外でも気軽にサービスを利用できるシステムを導入した。全国にはSA・PAが886箇所(2023年6月時点)あり、今後の横展開も期待できる。
(執筆:フィスコ客員アナリスト 角田秀夫)
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