―エヌビディア時価総額「1兆ドルクラブ」の衝撃、生成AI登場で第4次ブームに突入―
世界の株式市場で人工知能(AI)関連株が脚光を浴びている。AI大国である米国の株式市場はその筆頭で、特に画像処理半導体(GPU)大手のエヌビディア
●海外マネーによるリスクオン相場続く
週末2日の東京市場では前日に続くリスクオンの地合いとなり日経平均株価が続伸、一気に3万1500円台まで水準を切り上げ、大引けは376円高の3万1524円で着地した。5月30日の終値でつけた3万1328円を上回り、1990年7月以来約33年ぶりの高値を更新した。これまで相場の牽引役を担ってきた半導体 関連だったが、この日はアドバンテスト <6857> [東証P]やレーザーテック <6920> [東証P]、東京エレクトロン <8035> [東証P]、ソシオネクスト <6526> [東証P]といった主力どころが軒並み上昇一服となった。しかし、それでも上値指向の強さが浮き彫りとなったことは、最強の買い主体となっている海外投資家の日本株への攻勢がなお続いていることを物語る。
今の東京市場は米国株市場との連動性が薄れているという見方もあるが、それはNYダウと比較した場合であり、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数と日経平均を比べるとどちらも非常に強いチャートで似通った波動を示していることが分かる。FRBによる利上げが6月もしくは7月で打ち止めとなる可能性が意識されるなか、米長期金利の低下局面でハイテク系グロース株優位の構図が浮かび上がっている。それを主導するのは紛れもなく半導体セクターだ。半導体市況はスマートフォンやパソコンの販売不振を受けて在庫調整の只中にあるが、一方で急速に市場拡大途上にある生成AI向けで創出される特需に、マーケットは今色めき立っている。
●生成AI市場拡大でエヌビディア大脚光
当然ながらAIの進化は半導体の存在なしには語れない。特にエヌビディアが開発・製造するGPU(グラフィックス・プロセッシング・ユニット)は並列コンピューティングの切り札としてディープラーニングの原動力となり、AIのレベルを飛躍的に向上させた。加えて昨年来、学習したデータをもとに文章や画像といったコンテンツを独自に作成する生成AI の存在が広く認識されるようになってきた。
その背景としては、米ベンチャーのオープンAIが開発した対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」が一般公開され、漸次上位モデルを市場投入してきたことにより、世界中の人々がその「威力」を目の当たりにしたことが大きい。この生成AIは膨大な量のデータを学習・推論に活用するため、データを効率的に並列処理できるGPUの存在が欠かせない。現在、このGPUでエヌビディアの商品シェアは8割を占めるといわれているが、「生成AI関連の需要が強烈で在庫が払底しているような状況」(国内証券アナリスト)という。
●「広島AIプロセス」で日本もゲームチェンジ
生成AIは諸刃の剣で、ネット全盛時代にフェイクニュースやヘイトスピーチなどで暴走する可能性もある。また、膨大な学習データをベースに新たに作成するといっても、その中には著作権が絡むものも当然含まれる可能性があり、そうしたさまざまな問題点も指摘されている。しかし、このAIの進化自体は既に開けられたパンドラの箱であり、誰にも止められない。かつてロシアのプーチン大統領が述べた「AIを制する者が世界を制する」という言葉は、経済的あるいは軍事的な見地から正鵠を射たもので、皮肉にもウクライナ有事における西側諸国との戦いによって、自らその現実を認識させられることになるかもしれない。
国内に目を向けると、岸田政権は6月にまとめる骨太の方針の原案として、チャットGPTなどの生成AIについて開発や利用に前向きな姿勢を示していることが伝わっているが、一方で規制のあり方についても丁々発止で議論が重ねられている。日本が議長国を務めた5月の広島サミットでは、国際ルールを議論する枠組み「広島AIプロセス」の年内創設を声明に盛り込んだ。AIがもたらすリスクをよく認識したうえで適切な対応を抜かりなく進めるが、一方でAI開発の強化に取り組む方針は変わっていない。国策としての追い風が以前にも増して強まるなか、株式市場でも新たなダイナミズムが生まれようとしている。
●AI相場の号砲鳴らすソフトバンクG
2日の東京市場では、前述したように半導体関連は主力どころを中心に値を下げる銘柄が多かったが、中小型株の多いAI関連は赤札銘柄で埋め尽くされた。その中心で輝きを放ったのが、時価総額約8兆8000億円のソフトバンクグループ <9984> [東証P]で、“エヌビディア効果”を如実に映し出す存在となった。ソフトバンクG傘下のファンドを通じて投資する数多くのAIベンチャーのイグジット(株式売却の機会)が実現するとの思惑が株高の原動力である。注目されるのは、この巨大企業を押し上げるホットマネーが、東証グロース市場を巻き込んだAI関連の中小型株に波及する可能性である。もとよりグロース(成長)株の代名詞ともいえるAI関連の中小型株は、株価指標面では割高に買われることが常である。行き過ぎればそれはバブル的な要素もはらむが、東京市場で第3次AIブームと呼ばれた2010年代後半からの流れで株価チャートをみると、その後に収益が伸びているにもかかわらず、株価は過去の高値水準に全く届いていない銘柄が非常に多いことが分かる。
生成AIの登場が、世界的な第4次AIブーム突入を示唆することは疑いがない。仮にここから理想買いをベースとした新たな“AIバブル相場”が始まるとして、今はまだその初動であり、早い段階で関連有力株に照準を合わせておきたい。今回のトップ特集では、生成AIの登場からエヌビディア株の高騰、そしてソフトバンクGの急動意といった一連の流れを考慮して、ここから狙えるAI関連の有望株6銘柄を選抜した。
●ここから要注目の選抜「AI関連6銘柄」
【ヘッドウォは生成AIとAI人材で新展開へ】
ヘッドウォータース <4011> [東証G]はAIを活用したソリューション事業や企業のDX支援事業を展開し、生成AI分野にも力を入れている。生成AIモデルの研究開発ベンチャーと協業し、GPT4を用いた言語モデルAIサービスなども手掛ける。また、海外の優秀なAI人材の獲得や育成に積極的に取り組み、7月1日付でベトナムに子会社を設立する。直近ではマクニカホールディングス <3132> [東証P]傘下のマクニカと、エッジAIのサポート強化で協業することも発表した。業績はトップラインの伸びが目立ち、23年12月期は前期比34%の高い伸び率で、一気に20億円台に乗せてくる見通し。株価は目先調整局面を経て切り返しに転じたが、2万円大台復帰はあくまで通過点であり、次は5月22日につけた年初来高値2万1970円奪回が視野に入る。
【FスターズはAIと量子技術分野に変貌の種】
フィックスターズ <3687> [東証P]は企業のソフトウェア高速化技術で時流を捉えている。AIの加速度的な進化に伴い、大量データ計算の高速処理ニーズが高まっており、同社の収益機会拡大につながっている。先端商品の量産化が進む半導体業界向けで高速化ソリューションが大きく伸びているほか、電装化が進展する自動車業界向けで画像処理高速化技術に引き合いが旺盛だ。また、今後AI技術の成長ドライバーともなり得る量子コンピューター分野でも先駆者的な存在で、業容拡大に向けた伸びしろは大きい。足もとの業績も好調で22年9月期の67%営業増益に続き、23年9月期も23%増益(20億円)と高水準の伸びを見込む。株価は19年7月につけた最高値2124円(修正後株価)が中長期目標となる。
【JTPはAIソリューションで高実績】
JTP <2488> [東証S]は海外のIT企業を主要顧客に情報機器の保守点検やIT研修ビジネスなどを手掛けている。旧社名の「日本サード・パーティ」の方が投資家には馴染み深いと思われる。AIソリューションでも実績が高い。インテグレーションサービスの「Third AI」を通じ、最新のAI技術や顧客ニーズに対応したプラットフォーム導入で企業のDX化を支援する。ディープラーニング分野での提携を材料に、過去にエヌビディア関連株として人気化した経緯もある。業績は着実にトップラインを伸ばしており、今期は連結から単独決算に移行するが、実質的に過去最高更新が続く見込み。株価は3月28日に1150円の年初来高値形成後に大幅な調整を入れたが、26週移動平均線をサポートラインに底入れ反転の動きをみせている。早晩、4ケタ大台回復が射程に。
【ユーザーロカは驚異の増収増益路線をまい進】
ユーザーローカル <3984> [東証P]はビッグデータ 解析やAI技術を活用した業務支援ツールの提供を行うが、企業や地方自治体などのDX推進ニーズを取り込むことに成功し、大幅増収増益路線をまい進している。研究開発にも余念がなく、既存サービスへのAIアルゴリズム実装や新規AIサービス開発などに積極的に取り組んでいる。直近では企業向け生成AIプラットフォーム「ユーザーローカルChatAI」を開発した。業績は株式公開前から毎期大幅増収・営業増益を継続しており、その成長の軌跡には目を見張るものがある。23年6月期は営業利益が前期比15%増の11億7800万円予想で、株式公開後の17年6月期から数えて6期連続の過去最高更新となる見通し。株価は20年10月の高値2760円(修正後株価)を目指す展開か。
【ブレインPは底値圏からの戻り余地大】
ブレインパッド <3655> [東証P]はAI技術を駆使したビッグデータ分析を強みに企業コンサルティングを主要業務とする。データサイエンティストなどのハイスキルな人材育成でも業界をリードしている。企業のデジタルシフトが進むなか、実績を生かした大型案件獲得で業績飛躍を狙う。23年6月期は買収コストが重荷となり大幅営業減益予想ながら、増収基調に変化なし。24年6月期は大きく増益で切り返す可能性が高い。株式需給面では外資系経由の貸株調達に伴う空売りが絡み、荒い値動きにつながっているが、ここにきて上値指向が鮮明だ。1000円未満の株価は長期波動で見て依然大底圏といってよく、戻り余地の大きさが意識される。テクニカル的にも13週・26週移動平均線のゴールデンクロスが目前。
【AIクロスはホワイトカラーAI時代に商機】
AI CROSS <4476> [東証G]は企業向けコミュニケーションツールのほか、ショートメッセージサービス(SMS)やAI解析サービスを展開し幅広く需要を獲得している。ホワイトカラー業務のAIによる代替が進むなか、情報を集約しAIで多面的に分析や予測を行う同社の商機が高まっている。業績も好調だ。23年12月期は売上高、営業利益ともに2ケタの伸びを見込み、高付加価値サービスへの取り組みで、24年12月期も2ケタ成長を継続する可能性が高い。SMS配信プラットフォームやチャットボットプラットフォームなどで顧客獲得が順調に進んでいる。株価は上下にボラティリティが高いが、大勢的には年初から下値切り上げ波動を継続中だ。21年8月以来となる2000円台での活躍を期待。
株探ニュース
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